この記事の概要を簡単まとめ!
- 偶然で手に入れて活躍中のVKT12SG-5
- 「タブレット」PCならタブレット対応OSを入れて使えるはず
- 有志によってAndroid OSがx86で使えるように移植したバージョンが作られる
- 使えそうなのでVKT12SG-5に最新安定版8.1を入れてみた!
- インストールにはisoをダウンロードし、それをもとにLiveメディアを作成する
- デュアルブート対応にするにはインストール時の設定に注意
- インストール後の最低限の設定についても解説
- 端末エミュレータはTermuxよりもできることが多く、suも使用できる
- 容量の調整はインストールし直しが必要、最初に容量をきっちり決めることが重要
- 少しの努力でちょっとした「ハイスペックAndroidタブレット」は容易に実現できる
変わったことがしたい、というのは私の場合料理とPCの話で特に強い。料理の場合はパスタにおいて独自の味付けを作ることで、飽きることなくパスタを食べ続けることができると共に、新しいパスタの提案にも繋がる。PCの場合は私が特殊な使い方をすることが多いために、少し変わった方法であると自分の要望に応えられるためである。したがって今まで入手したPCが法人向けPCであるのは、必然と言えるであろう。
VKT12SG-5を入手してからというもの、様々な使い方で活躍しているが、それは殆どWindowsとしての利用である。元々Windows OSで使用することを想定して設計されたものである以上は他のOSを入れて運用するということも少ない。そもそも法人向けのタブレットPCでWindows以外を業務で使用することはあまりないはずだ。よってこの手のもので情報がなかったとしても何ら不思議ではないのである。
そんな中、OSの1つであるAndroidはスマートフォンでもタブレットでも使用できるOSであるが、それを一般的なPC、つまりx86に代表されるCPUでも使用可能にすることが有志の手によって行われるようになった。そのOSこそ、Android-x86である。本来はSoC向けに開発されたOSを一般的なPCで使用できるように「移植」したものであるこれ、移植は有志によるものであるので最新OSに追いつくことは難しいが、更新が積極的のため定期的に新しいイメージファイルがアップロードされている。今回はその中から最新安定版を使い、その内実を書いていく。
ブンブンハローPC版Android OS, どうもKIBEKINです。
タブレットPCとOS
偶然で手に入れて活躍中のVKT12SG-5
このブログの常連であれば既に知っていることであろう、私は少し前に法人向けタブレットPCであるNEC VersaPro J タイプVS<VS-5>のVKT12SG-5(型番:VKT12SGG5)を入手し、早速色々と利用している。本体更新によって寿命が大幅に伸びたHP EliteBook 8570wが未だに主力であるため、VKT12SG-5はサブPCとしての利用がメインとなる。もっとも、8570wは全体的な性能はデスクトップには及ばないものの、VKT12SG-5よりも性能は圧倒的に上であり、作図をするにも最適のため使い続けているのである。
タブレットPCと言えば、CPUが貧弱でまともに使えたものではないものが多い。その原因はCPUではなくSoC1)System on a Chip: 1つのチップ(基板上)に複数の部品をまとめたもの。SoCの中にCPU・GPUをはじめとした様々な部品を1つのパッケージとしている。主に小型で本体のパーツ配置スペースやバッテリー容量が制限されやすいスマートフォンやタブレットPCといったものに採用される。一部のラップトップもこれを採用していることがある。 参照:スマホ向けCPUとSoCの違いについて簡単にまとめてみた!|Gadget Hackを採用しているものが多いためである。その代表格と言える存在が、かつて生産されていたIntel Atomである。知っている人は知っているが、このSoCは評判はあまり良くなかった。そのため良く思わない人からの評価はまさに「ゴミ」で、その頃に採用されて犠牲になったタブレットPCは数多く存在する。なおAtomは知らずのうちに消えたものの、代わりに名前をCeleronやPentiumに変えて一部が使われ続けているようだ。
そんなことがあるのでタブレットPCを選ぶ際は慎重になる必要があるが、だが通常のCPUを採用しているモデルというのは総じて高額なものが多い。光学ドライブがないのに高額とはいかがなものかとも思うが、それはいずれも仕方ない話だ。ただそれは完全な新品に限った話であり、中古で型落ち、法人向けとなればかなり安くなる。CPU自体はi5第7世代2in1向け(系列はCore m5系CPU)でありRAMは交換不可能であるが8GBであるので、性能としては十分なはずだ。もっともタブレットPCにそれ以上の性能を求めるのは酷であり、製造コスト的にも排熱性能的にもちょうどいいのがそれだ。このことは次の記事で解説している。
「タブレット」PCならタブレット対応OSを入れて使えるはず
VKT12SG-5はタブレットPCだ。そのためキーボードの脱着が自由に行えて、タブレット端末としても使用できる。もちろんキーボードを装着した状態でもタッチパネルは有効で、キーボード+マウス操作よりも直感的にウィンドウ移動をしやすい。またデジタイザーペンも標準装備のため、ペンを使った操作や創作についても可能になっている。だがデスクトップやMac系と比較すればそこまでしっかりできるものではなく、あくまでも業務で解説のために絵を作るか、或いは落書きレベルのものくらいが限界だ。
ところで「タブレット」と言われると、多くの人が想像するものにAndroidタブレットやiPadといったものが頭に浮かぶはずだ。一般に言う「タブレット」とは大概それらのことを差し、今話題としているものは「タブレットPC」としてそれらとは区別されて扱われる。もっともタブレットとタブレットPCでは構造も搭載OSも全く異なるわけで、同類として扱うことはまずない。基本が異なるのなら、そもそも扱い方が変わってくるので当然といえば当然だ。アクセサリについても、iPadの場合は専用のものが多く、Androidは機種を選ばずに使用できるものと特定機種専用のアクセサリが半々で存在するイメージだ。大手ブランド系のタブレットであれば存在するであろう。ただ現在は殆どがスマートフォンに注力しタブレット事業はほぼ撤退しているところが多く、存在するとすればiPadかAmazon Fireシリーズか中国の無名メーカー製くらいである。そして総じて、性能はお察しである。
だったら、ということである。性能が十分なタブレットPCにそのOSを入れて使うことはできないか、ということだ。ただし、殆どの場合でOSを丸ごと移植したとしても動くわけがない。それらのOSはSoCないしCPUに合わせて設計されている以上、その規格に合わないとまず起動できず、起動出来たとしても多少なりとも不具合が発生することは想像に難くない。それでも使える人は使ってしまえるのであろうが、残念ながら私にはそこまでの能力はないため使ったことはない。よって私は実際のところ、PC「以外」の分野となる、純粋なタブレットやそのOSについてはあまり詳しくはないのである。
有志によってAndroid OSがx86で使えるように移植したバージョンが作られる
だがいつの時代も技術力のバケモノたちが、不可能を可能にしてきた。それはAndroidにおいても例外なく発揮される。おそらく中国出身であろう、黄志偉と呼ばれる人物が中心となって、Android OSを一般的なPCで使用するCPUでも使用可能なように移植する試みが進んでいる。そのプロジェクトがAndroid-x86というものである。元々の計画はAndroidをネットブックやUltra-Mobile PC、特にASUS Eee PCで動作させるための、Androidソースコードに対するパッチの一環として始まったものである。現在は公式プロジェクトととして成立しており、進行状況や配布先として公式サイトが立ち上がっている。また公式における動作検証には前述のEee PCで検証がされている。Eee PCのスペックについては調査してもらうと分かるが、決して「強い」とは言えないものである。
x86とは一般に32bitCPUないしOSのことを示す。だが殆どの人はx86_64のCPUないしOSを、特に意識することもなく使用しているはずだ。したがって、Android-x86という名前でありながらもx64に対応したバージョンも同時並行で作られている。それでもx86の名前がつく通り、x86ベースの移植が基本となっている。これらのことについては、実際にAndroid-x86を導入するタイミングで解説する。
タッチパネルがあるのでVKT12SG-5でも使えるはず
Android OSを使用しているデバイスはスマートフォンまたはタブレットだ。つまり、画面を手で触って操作するものである。Android-x86は一応、タッチパネル非搭載のPCにインストールされることも想定して、キーボードとマウスだけでも操作できるように、インストール後に設定ができるよう設計されている。とはいえ元々Androidはタッチによる直感的操作によって様々な動作を行うように設計されているわけで、ともすればタッチパネルがないならあえて入れる意味も無いようにも思える。とはいえAndroid-x86は貧弱な構成であっても起動できるくらいに軽いので、古いPCを文鎮化させないための救済処置としては有効である。
ところでVKT12SG-5はタブレットPCである。タッチパネル標準搭載でありデジタイザーペンも標準装備のため、タッチ操作に関しては困ることはない。また、タブレットPC用のi5(第7世代)であるが、一般的なスマートフォンやタブレットに採用されるSoCよりも性能は基本的に高く、RAMも8GBと十分であるので、性能的な不便は起こらないはずである。ということで、非常用ということでVKT12SG-5には特にソフトウェアやデータをインストールしていないため容量は十分余っている。そこにデュアルブート可能な構成にしたうえで、現在最も安定しているAndroid-x86をインストールして、Android-x86の使い勝手を調べることとする。初めて使用するため、インストールガイドとしても同時に解説する。
Android-x86使ってみた!
それでは実際にVKT12SG-5にAndroid-x86をインストールし、基本設定を完了するまでを行う。今回ここで検証するのは最も最近に更新されたバージョンである8.1.0のx86_64(64bit)版である。
インストール準備:プロジェクト公式サイトからisoをダウンロード
まず最初にやるべきことはAndroid-x86プロジェクト公式サイトからisoをダウンロードすることである。公式サイトであるAndroid-x86はトップページへアクセスすると、以下のようになっている。
実にシンプルなトップページである。特に気になるところもないので、早速必要なisoのダウンロードを行う。ダウンロードページには真ん中の”Download”をクリックするか、左のメニューからDownloadをクリックする。この記事からは直接行けるリンクはここからである。そのページはダウンロードサイトではなく、isoが置かれているミラーサイトリンクのバナーが存在する。対象先はFOSSHUBとOSDNの2つで、どちらでもダウンロードは可能である。ただしOSDNは更新順に並べられるため、見やすいのはOSDNになる。よってダウンロードはOSDN経由で行う。
OSDNではイメージファイルは更新順に並べられており、バージョン順ではない。よって使用したいバージョンを探す場合、書かれている数字に注意して確認しなければならない。今回は検証にあたり、最新の更新となっているバージョン8.1.0のx64版をダウンロードする。ダウンロードにはダウンロードしたいバージョンのリンクをクリックすることで、ページが遷移して数秒後に指定したバージョンのイメージファイルのダウンロードが開始される。多くは1GB以内に収まっているが、時間がかかることは間違いないので余裕を見てダウンロードすること。
ダウンロードページを確認すると、非常に多くのバージョンと対応CPU、OSがある。isoがWindows用、rpmがLinux用のイメージファイルになり、それぞれは32bit, 64bitの両方に対応している。Windowsの場合の判別方法は分かりやすいが、Linuxにおいては”i686″が32bitを意味する。しかしそれが分からなくても64bitの場合もちゃんとx86_64と明記されるので、迷うことはおそらくないだろう。もちろんダウンロードするイメージファイルはOSと対応する命令セット(32bit/64bit)を一致させる必要があるので、その表示はしっかり見ること。それぞれのイメージファイルのリンクをクリックすると新しいページを開き、数秒後にダウンロードが自動で開始される。よって後は待てば自然と全てが完了するのである。注意するべきことは、回線速度だけだ。クソフトバンクダメダーくたばれ。
ちなみにWindwosの64bit版のみ、Android-x86の通常のイメージファイルでは対応しないデバイスもあるので、それに対応させるためにそのイメージファイルのバージョンの最新カーネルを実装したβ版が存在し、これには判別のためk[number]という名前が付けられる。このバージョンは通常の64bit版で対応できなかった場合に使うのがお勧めで、殆どのデバイスは通常の64bit版で対応できるため、まずは通常のバージョンから試すのがいいだろう2)参照:Android x86 のインストール | E.i.Z インストールガイドのサイト。ここには各バージョンの違いも書かれている。。
イメージファイルからLive USBへ:2GB以上のUSBに「焼く」
無事ダウンロードが完了したら、そのイメージファイルを任意の外部メディアに「焼く」必要がある。単純なソフトウェアインストールのためのイメージファイルであれば仮想的にそれをマウントすることで実行可能であるが、Android-x86はOSのイメージファイルである。isoをポンッとそこに置いても何も起きないのである。したがって、光学ディスクやUSBメモリにイメージファイルの中身を、PCはもちろんDVDプレイヤーで認識するような形に構成しなければならない。それには一般流通している、メディアライティングソフトを使用する必要がある。
そこで使用するソフトが、ブータブルUSBドライブを簡単に作成できるもので最も人気のあるRufusだ。これを使用して、任意のUSBメモリにisoの中身を書き込み、ブータブルUSBドライブとして機能するよう設定するのである。ここでその手順について、リスト形式で解説する。
- 事前準備として、ディスクの管理や
diskpart
などで書き込み対象のUSBメモリをフォーマットしておく。その際、任意の名前でフォーマットを行い、エクスプローラーで認識できる状態にする。 - Rufus(各自であらかじめダウンロード)を起動し、書き込み対象を先ほどフォーマットしたUSBメモリに指定する。ブートの種類にはダウンロードしたisoを選択し、フォーマットオプションがFAT32であることを確認する。それ以外は特に変更する必要はない。設定を確認したら、「スタート」をクリックする。
- ここで、いくつかのダイアログが発生する。「ISOHybridイメージの検出」の場合は”ISOイメージモードで書き込む”(推奨・デフォルト)、「ダウンロードが必要です」の場合はそのまま”はい”、データが消去される旨は問題なければOKをクリックする。この手順を踏んでようやく書き込みが開始される。書き込みにはある程度時間がかかるため、完了まで待機する。
- 緑のバーが最大になり、「準備完了」と表示されれば書き込み終了である。Rufusを閉じ、そのUSBメモリを取り外す。
書き込みに使用するUSBメモリは最低2GBが必要である。その条件さえクリアすれば、規格は問題にならない。そしてRufusでの書き込み時に、フォーマットをFAT32に設定することを忘れないようにする。これを守ることで、簡単にAndroid-x86のLive USBが作成できるのである。なお作成中に通知で書き込み中のUSBに「問題が見つかりました」等のアホな通知をすることがあるが、これは無視して構わない。作成が完了したらRufusを閉じ、安全な取り外しでそのUSBをPCから外すことで第一段階は完了だ。
インストール実施前準備:BIOS/UEFI設定の変更
それでは早速と行きたいところだろう、しかし作成したLive USBをただ挿したところで反応しない。起動順序を変更し、USBを先に読み込むようにしなければ、そもそも選択画面すら出ないのである。ではどう変更するか、それは簡単で、UEFI(旧型機種ならBIOS)から起動順序をUSBが一番になるよう設定するだけだ。
UEFIを起動する方法はPCにより異なることが多く、電源投入直後にどのキーを連打するかが全く違ってくる。またタブレットPCの場合はキーボード以外に本体のあるボタンを連打することでも起動できるようになっているため、本当に多種多様である。今回検証するタブレットPCであるVKT12SG-5の場合は、キーボードからはF2連打、本体ボタンからはボリューム-(マイナス)を連打することで起動する。そこから大抵は”Boot”というタブにブート順序が設定できる場所があるので、そこからブート優先順位に”USB Hard Disk”等のUSBメモリからの起動を示すものをトップにすることで、先にUSBから読み込むようになる。後はこの設定を「保存」して再起動を指示することで、次の瞬間には読み込むはずである。
先に設定:デュアルブート構成に必要なこと
ところで、1つのPCで全く異なるOSを使いたい場合、デュアルブートで構成することが多い。1つのディスクにパーティションを設け、それぞれのパーティションに異なるOSのデータをインストールしておき、PCに電源を入れてOSを読み込むタイミングで「どのOSを読み込むか」をユーザーに選択させるようなシステムにすることで実現する。パーティション管理についてはEasuUSのソフトウェアに任せるとして、殆どの人はわざわざ使いやすいWindowsを完全に消してまで他のOSを使うということはあまりない。ディスク容量に余裕がある人は一部の領域を専用に使用してデュアルブートの手段を取ることが多いのである。十分なPCスペックを持つ人は仮想マシンを利用する方法もある。
デュアルブートにするには、あらかじめそれ用のパーティションを先にWindowsでサイズも決めて切っておき、そこにターゲットのOSを仕込むようにすると、間違ってWindowsを削除してしまうということがなくなる。その際は英字でわかりやすく名前(ラベル)をつけておくことが必要になる。これは後のインストール作業において発生する、ある問題を回避するための事前処置のためである。
インストール作業開始:最初の画面からホーム画面まで
ここまでの事前準備をしてからようやくインストールが行える。この段階から作成したLive USBを挿し、電源を入れてしばらくすれば最初の画面が出る。ここからは、最初の画面からホーム画面が表示されるまでについてを追っていく。
最初に表示される画面について
UEFIで起動順序をUSB優先に設定し、Live USBを接続してから電源を入れてしばらくすると、次のような画面になるはずだ。
これはメニューのみを抜き出したものである。この画面になってから何も操作せず20秒放置すると、選択中の項目が自動で実行される仕組みとなっていて、何か操作をするとそのカウントダウンは解除される。ちなみにAndroidであるにもかかわらずインストール時はタッチパネルによる操作が無効なため、作業を進めるには必ずキーボードが必要になる。手元になければデスクトップ用のUSB接続できるキーボードを使用するといいだろう。
なお、スクリーンショットは使用不可能なため、ホーム画面に到達するまでは直接撮影した画像を使用する。
インストール:領域指定から書き込み完了まで
LiveはインストールせずにAndroid-x86を試す機能で、これはRAMに直接構成するものとなっている。しかしここではインストールを前提とするため、先の画像で3番目の”Android-x86 8.1-r6 Installation”を選択する。次に以下の手順で選択肢を選択して進めていく。
- インストール先の領域を選択する。基本的に内蔵のディスクのみが対象。SDカードはここでは認識不可能。ここで先に設定したパーティション(ここではsda4)にインストールを行う。
- フォーマットをするかどうかを聞かれるが、ここでは”Do not re-format”を選択する。フォーマットしてしまうと既にインストールされているWindwosを削除してしまう可能性が高いためである。
- GRUB2をインストールするか聞かれる。デュアルブートを可能にするものであるので、必ずYESにする。
- システムディレクトリをR/Wでインストールするかどうかを聞かれる。通常は不要なため、NOを選択する。
- 書き込みが開始される。100%になると完了。
基本的にこの通りに行うことで、安全にインストール作業を進めることができる。ただしパーティション構成はそれぞれの環境に依存するため、実際にインストールを行う際は十分に確認してもらいたい。
Androidのディスク容量設定:ここできっちり決めないと後が面倒
書き込みが完了すると、ディスクイメージの保存領域を作成するかを尋ねられる。これはデータを保存するためには必ず必要なためYESを選択する。標準値(推奨)は2048MBで、1MB単位で管理する。基本的には先のパーティション作成で確保した分を設定する。値は1024倍して計算して入力すること。そしてこの設定した値がAndroid-x86で使用できる保存領域そのものとなる。この設定の完了後、そのままAndroid-x86を実行するか一旦再起動するかを選択できる。ここでは一旦再起動を行い、UEFIを起動するといい。
UEFIを起動したら、Bootの項目から起動順序をUSBディスクから内蔵ハードディスクに変更する。この時”Android-x86 [ver]-[update times]”という名前になっていることがあるが、起動には問題ない。これを一番上にセットし、その後設定を「保存」して再起動する。またこのタイミングでインストール作業自体は終了しているため、Live USBは外してOKである。
最終調整:初めて使用する時の設定を済ませてホーム画面へ
先の設定で電源を入れて少し経過すると、起動したいOSを選択する画面が出現する。これは何も操作しない場合、5秒後に選択している項目が自動で実行されるものになっていて、これも何らかのキー入力で解除される。もちろんここではAndroid-x86を選択して実行する。デバッグモードではないので選択時は注意。
Android-x86を選択して実行してからの手順については、以下の通りに行う。
- まずはGRUB2にて、Android-x86を対象に起動する選択を行う。GRUB2は無操作で5秒経過すると選択中の項目が自動で選択扱いになるため、起動したらとりあえず方向キーを入力する。
- Androidを初めて起動すると、初回起動時のセットアップが開始される。最初に言語を日本語に設定し直して、セットアップを開始する。
- Wi-Fiアクセスポイント一覧が出る。このタイミングでWi-Fiが利用可能である。繋げなくても問題はないが、ここではあらかじめセットアップしておく。
- アプリのデータをコピーするか、新規のデバイスとしてセットアップするかを選択する。大抵は移行目的でインストールしたわけではないはずなので、「新規としてセットアップ」を選択する。
- Googleへのログイン画面が出現する。スキップできるが、Google Playを利用する場合には既存アカウントを利用するか新規アカウントが必要となる。この場で新規作成もできるため、既存のとは分離したい場合は新規作成してもいいが、有料版アプリは別で再度購入しなければならないため、おすすめはできない。
- インストールしたデバイスに名前を設定する画面になる。決めても決めなくても問題はない。決める場合はわかりやすい名前にするといい。
- Googleサービスへの同意画面となる。ここではどのような情報を使用するかについて、自分で許可/拒否を選択できる。どの場合でも同意しないと先に進まないため、設定したら「同意する」を選択して先に進む。
- ホームアプリを選択する。2つのうちから1つを選択する。
- Launcher3: タッチパネル搭載機向けのホーム画面。タブレットのように利用することができる。
- Taskbar: タッチパネル非搭載・マウス操作向けのホーム画面。開発中止されたRemix OS風になるが、操作に少々難がある3)参照:[PCでアンドロイド] Android-x86 で使える小技とおすすめアプリ – Cottpic 他にも様々な違いについてしっかり書かれている。。
- いずれの場合も、ホームアプリの設定を行えば、Android-x86が使用可能になる。
これらの設定を完了した直後が、次の状態になる。なお、VKT12SG-5はタッチパネル搭載機であるのでLaucher3を選択している。
ここまでくればインストール作業は完了となる。
Android-x86の使用レポート
以降はAndroid-x86について実際に使用し、そのレポートを書いていく。
基本スペック情報の確認
まずやることは、VKT12SG-5でAndroid-x86は果たしてどう認識されているのかを確認することだ。まずはデバイス情報からどのように認識されているかを確認する。
タブレット情報から見れる内容からわかるのは、OSがデバイスをしっかり認識していることである。一部デバイスについては対応していないことがあるのだが、その分は最新カーネル搭載版のisoを利用することで対応可能となっている。だがVKT12SG-5(認識している名称はPC-VKT12SGG5)は2019年に発表されたモデルで、私の持っているものは2020年7月出荷分であり、OSのiso更新はそれより後であるので対応できているのであろう。よってk付きisoでなくていいのである。
保存領域についてはストレージ、メモリについては開発者向けオプションのメモリから詳細を見ることができる。開発者オプションについてはAndroid-x86でも解除条件が全く同じなので、簡単に開発者オプションを開くことができる。そこから確認できる内容は次のようになっている。
RAMを調査すると、そこまで占有していないことが判明した。もっとも現行のAndroidよりはバージョンが古いためか、そこまでRAMを使用するものではないためにこの結果になっているものと思われる。ただし現行のAndroid(スマートフォン)とはバージョンが異なるため、比較は難しい。古いAndroidタブレットがあれば検証ができるが、あいにく保有していないので検証不可能である。
ストレージについては通常はインストール時に設定した容量分が確保される。ただ、Android-x86については仕様なのか、表示される全体容量と実際の設定した容量が一致しないようである。これについては理由は不明であるが、少なくとも指定した容量分使用することは可能であるはずだ。容量が足りなくなりそうな場合はインストールされているデバイスがPCであることを生かして、USBメモリにデータを移転、SDHC/SDXCなどを接続してメディアをメインに保存するように設定するといったことで対応できる。ただしアプリのインストール先は本体のため、あまりにも容量が少なすぎると使い物にならないので注意。もっとも、別の純正のAndroidデバイスを持っているのであれば、容量はそこまで必要ではないが。
インストール後の最低限の設定
インストール後はそのままでも使い始めることは確かに可能だが、しかし不便なところも多い。よって最低限の設定を先に行っておく。と言ってもやることは少なく、Google Playから特定のアプリをインストールするだけである。
キーボードが脱着可能なモデルではキーボードで入力を行えるが、本来の使い方である仮想キーボードを表示してタッチ入力する場合、標準で日本語が入力できないのである。したがって日本語入力の出来るキーボードをインストールする。対象はGoogle日本語入力が従来の方法だったが、サポート終了が宣言されたため現行では新規インストールが不可能となり、Gboardがその代わりとなる。よってGboardをインストールすることで日本語入力に対応させる。また、PCのようにショートカットコマンドを入力できるキーボードアプリのHacker’s Kerboardもインストールする。インストール方法はあえて説明することもないであろう。
Android-x86標準付属の端末エミュレータ
AndroidではGoogle Playで端末(Terminal)を再現したアプリ、端末エミュレータが多数存在する。有名なものはTermux、Android Terminal Emulatorである。通常はこれらをインストールして疑似的に端末を使用するが、Android-x86は標準で端末が利用可能である。これはAndroid-x86として移植する際に独自機能として追加されたものであると推測される。
見た目はGoogle Playでインストールして使用できる端末と全く変わらない。大きく違う点は、標準でスーパーユーザー機能をサポートしていることである。これはsu
と入力し、その後で表示されるダイアログで「許可する」を選択することで有効になる。これにより純正Androidでは難しく面倒なroot化の導入操作をしなくても、Linux OSにおけるsudo su
と全く同じことができるようになる。ちなみに再起動や電源を切る場合、端末からコマンドによる操作で実行することができ、ハードウェアボタンを押しても反応がない場合に有効である。VKT12SG-5ではこの方法でないと電源を操作できなかった。
ただし標準でrootが使えることによる弊害が存在し、一部アプリからはroot化されたAndroidデバイスであると認識されるため、アプリで独自に実装されるセーフティによって正常に起動できない場合がある。これについては非root化処理を行った後にシステムレスのroot化キットを導入するなどを行うことで対応できることがあるが、これについてはここでは解説しない。このことについては、このページを参照してもらいたい。
ゲーム検証:正直まともにプレイできたものではない
Android-x86を使うもう1つの理由があるとすれば、Androidのみでプレイできるゲームを快適に行いたい、という快適さを求めるが故に発生する欲求である。そういうわけで、いくつかのゲームで検証を行うことにした。被験対象はMinecraft, PUBG mobileである。
まずMinecraftで検証したが、これは私の環境によるものと思われるが、初回ローディングでフリーズが発生してしまい、タッチ操作もキーボード操作も全く反応せず強制終了せざるを得ない状況になった。その後2回目の起動で、ストレージの認識、世界の生成を行ったが、世界の生成が初回とはいえどうにも遅かった。そしていざ、世界の生成が完了して動かしてみたが、標準の設定でもどういうわけか重く、処理が追い付かずに動作が遅れるようなことが多々あった。また、メニュー表示や設定画面を開くにもロード時間が長く、操作にも支障が出るレベルで問題がある。SoCはAtomではないのだが、純正OSでないことを考えると例えCPUがCore iシリーズでも十分にその性能を生かすことができないために起きている問題と推測される。なお、Native Bridgeは有効にしたうえでの動作のため、設定忘れという可能性は低い。
次にPUBGを試した。Androidのバージョンからインストールできないかと思われたが、対応しているためダウンロードして検証した。ダウンロード時間については当然長いのでそれは仕方ないとして、実際にゲームを開始しチュートリアルを行ったが、本来なら画面に表示されるはずの各種操作ボタンが非表示で、そのボタンがあるであろう場所をタップすると動作はするという状態であった。これはキーボードやコントローラーの接続によらず、またコントローラーも操作の一部が反応しなかった。これはコンフィグによって改善可能ではあろう。そして、CPUの問題か、動作が遅い。このことから、ゲームプレイはほぼ不可能であると断定した。これではドン勝は1度もできないであろう。
検証したゲームはその2つのみであるが、おそらくこれは他のゲームでも同様であろう。root拒否の前に、Android-x86というOS事情、AndroidがCPUの性能を十分に引き出せないことによる結果でゲームに関しては全体的に難ありという結果になる。この部分については、なかなか頑張ってもうまくいかないものになると考えられる。
容量の調整はインストールし直しが必要、最初に容量をきっちり決めることが重要
実は検証中に1つ、失敗したことがある。それは最初のイメージ領域をどれくらい確保するか指定するとき、推奨値である2048MB(2GB)でそのまま進めてしまったことで、後からその容量を変更したいと思ったとき、変更方法が一度その領域を外部のOS経由でフォーマットして削除した上でもう一度新規にインストールし直すか、Ubuntu等のLinux系OSの特定コマンドを使用して、外部から操作する方法で容量を増減させるしかないのである。
しかし前者は地道に構築したものを全て捨てる結果となり、後者はコマンド知識がなければ行えず、実際に行ったとしてもうまくいかないことがある。私はこのサイトに記載されていた情報をもとに後者のパターンで行ってみたものの、最後のコマンドが何故かうまくいかなかったため、結果的に容量を増やすことができなかった。よって一度クイックフォーマットを施してから設定し直すという、前者の方法を取らざるを得なくなった。これはSSDの場合その寿命を縮める結果にも繋がるため、最初にどれくらいの容量を確保するかを明確にしておくべきである。なお、基本的にはWindows等でフォーマット時に設定した容量分のMBに変換した値で設定するといいだろう。これをきっちり守っていれば、容量に困ることはないはずだ。
以上で、Android-x86の基本的解説は完了である。
少しの努力でちょっとした「ハイスペックAndroidタブレット」は容易に実現できる
Android-x86、元々スマートフォンやタブレット向けのOSをx86系のCPUでも使用できるよう「移植」したOSとなるこれは、Live USBとして任意のUSBに「焼いて」使用するものとなっているが、その導入難易度は実際には低かった。先駆者が多く存在するため、Live USB作成方法・インストール方法・初期設定、これらの情報は十分な量がインターネット上に存在する。したがって、その手の「改造」を行ったことがない人でも簡単にAndroid-x86の基本的な部分の使用が可能となるわけだ。ただしそれより進んだ使い方については、Linux系コマンドの知識と根気と時間が必要なため、それにかけられる労力がなければおすすめはできない。たとえそれに慣れている人でも、難しい話になることが多いが。
しかし今回の検証から判明したのは、少しの努力でちょっとした「ハイスペックAndroidタブレット」は容易に実現できるということだ。残念ながら私のVKT12SG-5ではゲームをするには性能不足か、或いはOSの根本的問題か。どちらが原因か不明であるが、一般向けの性能がいいタブレットPCであれば、余裕でゲームプレイはできると推測される。ただし一部ゲームが起動がそもそも不可能であるか、起動できてもゲーム進行に支障のあるバグ等が発生して性能以前の問題が発生するなど、個人の力だけではどうしようもない問題が多数存在する。ここは移植プロジェクトを行っているチームの努力に依存するため、いずれ改善されることを待つだけである。とはいえ、Windowsに飽きている人は、ちょこっと「ハイスペックAndroidタブレット」を作ってみるのも面白いであろう。迷ったら、やってみるといい。
以上、Android-x86使ってみた!~VKT12SG-5をAndroidで~であった。それでは、次回の記事で会おう。ン、バァーイ!
KIBEKIN at 00:28 Feb. 23th, 2022
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脚注
本文へ1 | System on a Chip: 1つのチップ(基板上)に複数の部品をまとめたもの。SoCの中にCPU・GPUをはじめとした様々な部品を1つのパッケージとしている。主に小型で本体のパーツ配置スペースやバッテリー容量が制限されやすいスマートフォンやタブレットPCといったものに採用される。一部のラップトップもこれを採用していることがある。 参照:スマホ向けCPUとSoCの違いについて簡単にまとめてみた!|Gadget Hack |
---|---|
本文へ2 | 参照:Android x86 のインストール | E.i.Z インストールガイドのサイト。ここには各バージョンの違いも書かれている。 |
本文へ3 | 参照:[PCでアンドロイド] Android-x86 で使える小技とおすすめアプリ – Cottpic 他にも様々な違いについてしっかり書かれている。 |