この記事の概要を簡単まとめ!
- 音を電気信号に変換して機械へ伝達する装置、マイク
- 基本はダイナミック型とコンデンサ型の2種類がよく使われる
- 簡単な構造で安価に作れるダイナミック型と、高精度で高音域もカバーできるが電源必須で高価になりがちなコンデンサ型
- 所謂”YouTuber”や実況者は殆どがコンデンサ型を使う
- 中国製にやはり、安価なのにコンデンサ型マイクがあるので使ってみた!
- マイク自体に音量調整やエコーがあり、イヤホンジャックもミュートボタンもある
- 指向性も音声も問題なし、耐久性はこれから検証だが普通に使える
- 1500円以内、安すぎる怪しさとは裏腹にちゃんとしているマイク
- アマチュアレベルならこれで十分と言ってしまえるものだった
同じジャンルのものであっても、形状・動作方式・サイズ・仕様等で全く異なるものになることは多々ある。例としてスマートフォンはOSを基準とすれば3つに分類され、次に仕様で分かれるといった感じだ。PCにおいては同じモデルであっても製造時期と採用するパーツによって、それぞれが別物として扱われることも多い。
その違いを最近実感したのはマイクである。マイクは2020年から始まった死のコロナウイルスの影響によりテレワークが急速に進んだことによって安価で粗悪なマイクですら一気に売れていったもので、現段階ではマイク需要は一定のラインを超えたため落ち着いている状態だ。その過程で、仕事用のマイクも多数が新規製造されていった。その多くはダイナミック型だ。安くて入手しやすいこれは私も知らずのうちに使っていた。
だが周囲の音を拾いやすいこれは、自分の声を正確に届けることやYouTube他の動画制作及び配信等で使用するには不十分なものである。その時に選択されるのがコンデンサ型である。コンデンサの片面に薄い振動膜を設置し、静電容量変化を電気信号に変換し、それを出力することでダイナミック型よりもクリアで指向性のある音声を届けられる。だがコンデンサ型は複雑な電子回路を有しているため、どうしても高額になりがちで手を出しにくいものになりがちだ。そんな中、またも中国が安くてちゃんと使えるコンデンサ型を製造していたのが判明したため、これを試すことにした。具体的な製品会社は不明だが型番はわかった。その型番は”M858″、購入時の価格はクーポンも使用して¥1,332だった。果たして本当に使えるのか、レビューしていくことにする。
ブンブンハロー超安価コンデンサマイク、どうもKIBEKINです。
音声とマイクロフォン
音を電気信号に変換して機械へ伝達する装置
人間の耳から聴くものは、総称で「音」と呼ぶ。この音は人間の発する声は当然のこと、機械から鳴る駆動音や自然現象によって発せられるものも音である。この音は通常は不可視で保存不可能なものである。人間の頭の中には一時的に「記憶」可能であるが、それもさして重要なものでなければあっという間に忘れてしまうものである。人間の記憶容量とは測ることはできないが、同時に拡張も難しいものである。
そんな中、その音を電気信号に変換して機械へ伝達する装置が登場する。それがマイクロフォン、通称「マイク」だ。歴史的な話を探しても、ちゃんとした歴史が書かれているものが少ないためここではしない。マイクは簡単な話をするとアナログな音をディジタルな電気信号(電圧)に変換するというものであり、これによって人間の声はもちろんのこと、発する音は何であっても変換し、それを何らかの機械で処理して出力することができるようになる。
マイクと言われると、テレビ番組や音楽のスタジオ収録で使用するようなスタンドマイクや、ライブやカラオケなどで歌う場合に使用する手持ち型のマイクを想像することが多い。それらも確かにマイクであるが、それよりももっと身近にマイクが存在する。それがスマートフォンだ。スマートフォンには内蔵のマイクが必ず装備されており、これによって通話はもちろん、音声検索・音声アシスタント機能を使うことができるというものだ。もっとも通話するという意味ではスマートフォン以前の固定電話、ガラケーでも同じように採用されていたわけで、これがなければ電話というシステムとアイテムは存在しなかった。そしてSFの世界における声を使った認証・制御システムといったものもあり得なかった。そのSFの世界でさえ、現実に少しずつ近付いている。
マイクの種類:ダイナミック型とコンデンサ型の2つがよく使われる
ところでマイクの種類について意識したことはあるだろうか。マイクの種類によって向いている用途・シチュエーションが異なり、仕事で使うとか配信用にノイズを減らしたいとかで使うマイクは全く異なってくる。したがって、全ての用途・シチュエーションに適応するマイクは存在せず、その都度使用するマイクを変えていかなくてはならないのである。
そこでマイクの種類がポイントとなる。このマイクの種類は音=空気振動を捉える方法とそれを電気信号に変換する方法で分類される。大分類すると、ダイナミック型・コンデンサ型・リボン型・クリスタル型・カーボン型の5つになる。このうちよく使われるのがダイナミック型とコンデンサ型である。それぞれは特徴も用途も動作要件も異なっているため、まずはそれらの概要を掴まなくてはならない1)参照:マイクロホンを識る|マイクロホンナビ|マイクロホン|オーディオテクニカ。
ダイナミック型:電源不要、頑丈で安価だが高音域に弱く物理ノイズに弱い
ダイナミック型はマイクの動作方式としては簡単な、ダイヤフラム(振動版)が音波によって振動することでそれに固定されているコイルが連動して振動し、磁石の中をコイルが移動することによる電磁誘導で発生する電気で音声信号を得る方式である。内部構造の例は以下のようになっている。

構造は非常に単純で、電磁誘導を利用するため電源が不要。また構造の単純さから丈夫であり、湿度影響も少ない。大音量であっても歪みにくいという特性を持っている。このことから多少雑に扱ったとしても壊れにくいので、激しいボーカル、ドラム、ギターアンプといった音声/楽器の収録やテレビ収録の時のマイクとして使用することが多い。安価に作れるため、あまり金をかけずに作れるのも強みである。ちゃんとしたものはそれでも高価になることは変わらない。
当然のことながら弱みもあり、コイルを振動させる関係から質量が大きいため、高音(高周波帯域)に反応しにくく、マイクを握るときの摩擦音や筋肉が発する機械的振動を拾いやすい。このことについては防振材を利用して対応するなどの処置がなされている。ちなみに、ダイナミックスピーカーとは構造が同じであるが通常は周波数特性と能率の問題、マイク破損の危険性からマイク・スピーカー両用として使用されない。しかしこれを利用したものが一部のインターホン、トランシーバーにあり、部品数を減らすための工夫として用いられている2)参照:マイクロフォン#ムービング・コイル型 – Wikipedia。
コンデンサ型:高精度で高音域もカバーできる、しかし電源必須で高価になりがち
コンデンサ型はその名の通り、電子回路の受動素子であるコンデンサ(キャパシタ)の構造を利用したものである。ダイヤフラム(電極)とバックプレート(固定極)間は空気であり、ダイヤフラムが音波を受けると振動し、電極間の距離が変化することで静電容量に変化が生じる。静電容量の変化=電圧変化であり、これを音声信号とするものである。内部構造の例は以下のようになっている。

コンデンサの構造を応用したものであるこれ、ダイナミック型と違いダイヤフラムには何もくっついていない。つまり非常に軽いので、ダイナミック型ではカバーしにくい高音域もしっかり反応し、応答性も高く透き通った音声を届けることができる。ダイナミック型と比べれば、高精度で音を集音・電気信号へ変換できるマイクと言える。
しかしダイナミック型と比較すると明確な弱点が存在する。ダイヤフラムは数μmの厚みしかない非常に薄い金属板で出来ているので、強い風圧には耐えられない。また、静電容量変化は非常に微細な差であるため、その信号を取り出すには増幅する必要がある。その増幅のためには電荷をコンデンサに充填する、つまり電源が必要であるので、直流電源によるバイアスが必要になる。これはDCバイアス方式と呼ばれ、回路は非常に複雑である。ただし現在はエレクトレット素子3)半永久的に電荷を蓄える高分子化合物のこと。テフロンなどが該当する。を用いたエレクトレット方式が一般化され、乾電池程度の電源でも使用できるようになった。USB接続で駆動するコンデンサマイクがあるのもこのためだ。
コンデンサ型はダイナミック型に比べ、やはり価格が高くなりがちである。これに関しては回路構成やダイヤフラムの繊細さにあると思われる。特殊用途や指向性を持たせる場合も高くなりがちであるが、こればかりはどうしても仕方ないところがある。ただ、技術の進歩に伴って一般家庭でも十分手が出せるものにはなっている4)参照:マイクロフォン#コンデンサ型 – Wikipedia。
所謂”YouTuber”や実況者は殆どがコンデンサ型を使う
さて、死のコロナウイルス情勢下によって様々な人がYouTuberあるいは実況者となるなかで、動きが少なくその場で喋ることが多いような内容の動画であったりゲーム実況などの場合は、なるべく雑音を除去した上で自身の声を途切れなく届けたいと考えるであろう。特にゲームの場合は声に「感情」が乗りやすいので、その細かな部分まで伝えてこそ、というものがある。そのためには一喜一憂する声をしっかり収録できるマイクがいいというものである。
そうなるとコンデンサマイク一択ということになる。しかしコンデンサマイクはその仕様上、どうしても高価なものになりがちである。ちゃんとしたメーカー製であると、¥2,000台で買うことはまず難しい。また撮影および配信環境を整えるということになると、PCをはじめとした撮影機材・ミキサー・固定台・良質な回線契約といったものが必要になってくるわけで、それを考えると初期費用だけでも膨大な資金が必要となる。機材と環境で差が出やすいのがYouTuberや実況者の宿命なところがあり、趣味としても収益源としても「恵まれた者」だけができることだと考えてもいいだろう。
中国製の安いコンデンサマイクを発見する
それを覆すのは、やはり中国だった。中国は(技術の習得方法に倫理観を疑う必要はあるが)最近の技術力向上で何でも作るようになっている。複雑な構造を持つ機械でさえ、いとも簡単にその構造と製造方法をコピーし、安く大量生産することで既存の大手メーカー製品を圧倒する。説明書の内容・製品に対するサポート・製造時の不良チェックに対する信頼性については正直なところ怪しいのだが、初期不良も大手メーカーと同じ割合(つまり低い確率)でしか起きない傾向となっているので、殆どの場合初期不良を心配する必要はないというものだ。昔の価値観を引きずっている人ほど、この事実から目を背けることが多いように思える。
そして今回、中国製のコンデンサマイクを調べていると、¥2,000以下でちゃんとしたコンデンサマイクが販売されていることを発見したのである。それは詐欺と偽物とぼったくりの温床であるYahoo!ショッピングやAmazonで同じものが販売されていて、いずれも¥2,000以下での販売であった。クーポンとボーナス付与率、送料無料を考慮した場合相変わらずYahoo!ショッピングの方が安く入手することができるという状態である。
その中で今回私が購入したのは、メーカーはEnping Xuanyin Electronics Factory(恩平玄陰電子技術有限公司)が製造した”M858″という、三脚スタンド付きの卓上マイクである。商品詳細ページには画像もついていることにはついているが、相変わらず中国製お得意のガバガバ日本語説明だったので、その点については目をつむるとして、購入時の価格はクーポン使用で¥1,332、PayPayとTポイント還元を含めれば¥330を引いて実質価格¥1,002である。こんなに安くていいのかと思うほどだが、買ったからには試すのが道義というもの。果たしてコンデンサマイクとして、はたまた中国製マイクとしてしっかり使えるのか。次項より詳しく見ていく。
中国製コンデンサマイク”M858″使ってみた!
今回のマイクは商品名や商品説明からはメーカーを読み取れなかったのだが、注文し到着したときは箱に丁寧に梱包されていた。その箱の外に出処を示すシールが貼られており、それで製造元が判明したのである。英語だったが、中国語表記もちゃんと存在した。ただし公式サイトについては検索しても全く確認できなかったので、それを踏まえてレビューしていく。
前段階:Yahoo!ショッピングの販売ページ確認
まずは購入時のストアページを確認する。購入時の販売元はデジタル幸便であり、Yahoo!ショッピングからアクセスできるPayPayモールのストアである。販売している商品の概要をざっと確認したところ、商品画像や文字の装飾や配置の仕方、別途の注意書き(画像)で中文体を使用していることから、中国出身で日本に来て、中国から大量に商品を仕入れて安く販売しているということが考えられる。それはそれで助かるのでいいことであるが。
そのストアで該当のマイクについて、具体的商品名が不明である+商品名(型番)を出したところで分からないことを考えてか、検索ワードに引っ掛けるための「単語の羅列」が商品名である。YHOC!じゃないのにまるでYHOC!である。それはともかく、レビュー数「だけ」を見れば既に万単位の購入者が存在することが判明している。Yahoo!ショッピングの仕様上、必ず注文しなければレビュー不可能であるので、購入者数を把握するなら十分指標になる。内容は恒例の「サクラ」なので無視している。自分の感だけを信じろ。

購入方法に関しては特別なことはないので、いつも通りの決済手段を用いて決済した。ところで、還元率だけが売りのPayPayだが、10月からまた還元率が下がるらしく、Yahoo!はますますユーザーが損正義になろうとしているので気に入らないものだ。
購入:外箱と内容物チェック
Yahoo!そのものは最近信用ならないが、ストアとしては割とまともなデジタル幸便。注文後は2日後にちゃんと届くように配送を行ってくれた。Amazonの野放し詐欺ストア/出品者と詐欺配送よりは良心的と言えよう。エコ包装すると言ってもコンデンサマイクは精密機器として扱ってもいいものであるので、ちゃんと箱入りで届いた。その外箱と内容物が次である。

いくら中国といえど、マイクは精密機器であることをちゃんと理解している。そのため個別のビニール袋に包装され、パーツ毎にきっちり型取られた発泡スチロールの中に入れられて送られてきた。この点でそこら辺のフリマサイトの個人出品者よりも信頼できる。
肝心の内容物であるが、多言語説明書・マイク本体・三脚・USB Type-A(オス) to Type-B(オス)ケーブル・マイク固定用のリング・スポンジがある。ここではサクラ推奨な怪しい紙は除外する。付属のUSBケーブルはType-Bコネクタ側に電気的ノイズ除去用の磁気リングが装備されているものを採用しており、ノイズ対策は細かいところまで考慮されている。付属の説明書は一応日本語版があるが、相変わらず中文体が混じってしまっていて逆に読みづらい。英語版をそのまま呼んだ方がまだわかりやすいはずだ。
接続:ドライバ不要型のマイクなのでそのまま挿す
中国製のいいところと言えば、別途ドライバインストールが不要なことである。果たして彼らがどのような手段を用いて各種OSのリバースエンジニアリングをしているか不明であり触れてはいけない領域だが、最近のPCに接続可能なデバイスは殆どが接続するだけで使えるものが多いので、そうそう驚くことではない。しかし未だに別途ドライバ導入が必要な物は多いので、その作業をスキップできる点では大いに進んでいる。
さて、付属の説明書によればUSBプラグアンドプレイ5)Plug and Play: 「差し込んで使う」の意味。パソコンに周辺機器や拡張カードを接続すると、OSが自動的に必要な設定を行う仕組みのこと。これはWindows 95で初めて採用され、現在は殆どが対応している。省略形でPnPとも呼ばれる。参照:プラグ・アンド・プレイ | IT用語辞典 | 大塚商会に対応し、Windows/Mac OSの両方で使用できること、接続すればすぐ使用できると書かれている。その指示に従い接続すると、確かに自動でドライバがインストールされ、使用可能になった。PC(Windows)上では”USB Audio Device”として認識され、マイクのレベル調整のみ可能となっている。

M858はそのまま挿して使えるという点で、その意味では特別な設定方法に慣れていないPC初心者でも使いやすいものとなる。もっとも、最初は安いものを使って慣れていくことが何をやる上でも大事であると私は思っており、それから自分の必要とするものをしっかり見極めてから購入するのがいいだろう。
実際に試す:音量や指向性をチェックする
M858はコンデンサ型であり、指向性はカーディオイド6)指向性を表すタイプの1つである。カーディオイドは単一指向性とも言われ、正面からの音を拾い、正面以外の周囲や後ろからの音を拾わない指向性を持つ。指向性を図解すると逆ハート形になるため、心臓形を意味するカーディオイドとなった。数学的にはカーシオイドと呼ばれる。参照:マイクロホンを識る|マイクロホンナビ|マイクロホン|オーディオテクニカ こちらは指向特性のページである。になっている。ただし一般的な手にもって使用するマイクとは違い、マイクの真上ではなくボタンと文字がある正面に振動膜がある。そのため、顔と同じ高さに置いて使う必要があり、それより下に置いても指向性の関係から声は届きにくい。無論、真後ろは無意味だ。
音量はマイクについているVOLのつまみを調整することで変更可能になっている。基本は本体のつまみを使って最適な音量に調整し、それで不十分な場合はOS側の設定やソフトウェアを利用してdB調整や周波数帯域の変更を行うといいだろう。

音量:基本は本体のつまみだけで十分制御できる
音量(VOL)のつまみが、M858を使う上で最も基本となるものだ。このつまみを+方向に回すと増幅、-方向に回すと減衰となり、未使用時やマイクを接続または外す時は-方向に最大に回しておく。-方向に最大のとき、マイクはどの音声を拾っても電気信号を接続した機器に伝送しなくなる。+方向に最大のときは微細な音声でも拾うが、感度が高すぎればノイズも拾いやすくなってしまうことを予想できるであろう。逆に、音量に関しては本体だけで十分コントロールできるということになる。
そこで実際にマイクに向かって自分の声を吹き込んだ。条件として、マイクに対し真正面に大体10cm程度の同じ距離から、つまみが半分の時と最大の時の音声を録音。これをAviUtlで音声波形を表示させるエフェクトを入れて、視覚的にも比較しようというものである。その結果が以下の音声ファイルっぽい動画である。
正直なところ、自分としてはそれほど変わっている気がしない。そもそも肉声は常に一定の音を出すというのは意識していても難しいところがあり、若干音程や音量が異なっている可能性も否定できない。ただ、エフェクトとして乗せた波形は若干の差異が見られるので、「人間の感覚的にはあまりわからない」変化があると考えられる。また、ノイズについてはVOLを最大にしても殆ど観測されなかったので、増幅をしないで通常使用する場合にはノイズを気にする必要はないだろう。つまり、OSやソフトウェアで音声を増幅する場合には注意が必要だ。
指向性:マイクと同じ高さならカーディオイドの通り
マイクを買うときに多くの人が気にするのが指向性である。指向性はマイクの動作方式で一部は決定するほか、構造を工夫することで全ての音を等しく集音したり(無指向性/全指向性)、ある方向だけを集音したりできるようにしている。一般の配信者などは単一指向性(カーディオイド)を求めるが、業務用では双指向性や超指向性などを使い分けている。これらは主に映像関係で使用されるものとなる。
M858の指向性は前述の通りカーディオイドであり、マイクの正面以外の音をなるべく集音しないようにできている。それが本当であれば、マイクに対し同じ距離で音声を入力したとき、正面>側面>背後の順で音声が小さくなることが言える。それを実証したのが以下の音声ファイルっぽい動画である。
今回は波形の表示を5倍にしている。そのため、音声そのものと合わせて見ると、カーディオイドの指向性通りの声の大きさであることが分かるであろう。ただいくら指向性があるといっても、距離が近ければ音声が減衰する前にダイヤフラムに到達して、電気信号となって接続している機器に伝達されるので、こればかりは仕方ない。逆にある程度の距離があれば、指向性はちゃんと機能することを意味する。ここまでしっかりしているのであれば、普段使いとしても問題ないであろう。
要検証:耐久性についてはこれから
ところでマイクも精密機器の1つであり、コンデンサ型となればダイヤフラムの脆さは解説しているので理解してもらえるはずだ。それ以外に、構成される電子部品のパーツはしっかりしたものを使用していて、リマーク品や不良品を使用していないこと、適切な保管方法で故障や動作不良が起きにくいかどうかということについて気になることだろう。安くても壊れてしまっては結局元も子もないためだ。
しかし耐久性については買ったばかりであるこれを評価するのは正直難しいし、金がないのでよくできているこれを分解しようとも思っていない。そもそも内部構造を見たからといって、オーディオに素人な私には構造・設計的な正しさを評価することはできない。分解してもし復元できなければ折角これから大事に使おうというものを台無しにしてしまうことを容易に想像でき、同時に分解したことで埃や汚れが付着して傷んでしまうのも避けたい。そのため、耐久性についてはこれから使っていく上で検証する項目となる。
マイク自体に存在する機能
中国製にありがちな事を他に挙げるとすれば、何かと追加で機能を付けたがるところにある。M858でもそれは例外ではなかった。このマイクには音量を調整できるほかは、マイクそのものにエコーをかける機能が存在するのである。通常、エコーはミキサーを利用するかソフトウェア的にかけるものであり、マイクそのものでエコーをすることは殆どない。もっともエコーを使用する場面は、意識しなければ少ないものになる。
エコーのかけ方は簡単で、VOLのつまみの上にあるECHOのつまみを操作すればいいだけだ。エコーは-方向に最大が標準であり、+方向に回すことでエコーをかけられる。例えるなら、+方向に半分の地点でカラオケボックスで聞くエコーとなり、最大の時はライブで聞くエコーとなる。配信中に少しかっこよく見せたいときにはエコーをかけるのはありかもしれない。
また、マイク接続時に光る部分はスイッチ式になっており、これを押すことでマイクのミュートを切り替えられる。ミュート時は赤になり、もう一度押すと緑に戻ってミュートが解除されるようになっている。一時的にマイクを切りたい場合はここを押すことでワンタッチでできるので便利だ。
加えて、マイク自体にΦ3.5mmのイヤホンジャックがあり、ここにイヤホンを差し込むと、マイクの音声を機器を介さずとも聞くことができるようになる。つまり、USB接続を単に電源のために使用して、イヤホンジャックを経由して直接スピーカーに流すということもできるというわけだ。イヤホンからもエコーを聞くことができ、使用前の音量調整が簡単に行えるので、この点においてはかなり便利な機能をつけてくれたと言っていい。中国製といっても馬鹿にできないくらいの完成度である。

アマチュアレベルならこれで十分と言ってしまえるものだった
今回お届けした中国製コンデンサ型マイク、M858は最初こそ中国製というところから果たしてどうなのかと疑っていた。実際に使ってみてわかったのは、¥1,500以内のマイクとは思えないほどよくできており、一般的な大手オーディオメーカー製の個人向けスタンドマイクに匹敵するほどの性能を持っているということである。中国製は大手メーカー製と比較して、どうやってもそのメーカー名は表に出ることが殆どなく、入手手段もAliExpressかAmazon, Yahoo!, 快楽天市場などに存在する怪しい出品者が販売するものから購入するしかない。それも中には不純物を詐欺の如く売っているものもあるので、購入は一種のギャンブルである。
しかし、私の調べた限りではこれは問題ないという判定をしている。また出品者についても一応、信頼のおける出品者の情報をおさえているので、そこから購入すれば「はずれ」を掴まされることはあまりないこともわかっている。これは経験と分析と推測、そして最後に自分の判断を信じることである。
さて、中国製を果たしてプロが使用するというのは、備品管理やアフターサービスの観点から懸念材料となるが、アマチュアレベルで使用するならそこまでハイクオリティである必要はないと考える人が殆どで、だったら中国製でもいいというものだ。その中でもM858はコンデンサ型マイクとしての必要十分条件を満たしているので、安く環境を整えたいという人にはお勧めできるものである。このコンデンサマイクを使用して、今までよりもクリアな音声を届けてみてはどうだろうか。
以上、中国製コンデンサマイク”M858″使ってみた!であった。それでは、次回の記事で会おう。ン、バァーイ!
KIBEKIN at 00:00 Sept. 18th, 2021
スポンサーリンク
脚注
本文へ1 | 参照:マイクロホンを識る|マイクロホンナビ|マイクロホン|オーディオテクニカ |
---|---|
本文へ2 | 参照:マイクロフォン#ムービング・コイル型 – Wikipedia |
本文へ3 | 半永久的に電荷を蓄える高分子化合物のこと。テフロンなどが該当する。 |
本文へ4 | 参照:マイクロフォン#コンデンサ型 – Wikipedia |
本文へ5 | Plug and Play: 「差し込んで使う」の意味。パソコンに周辺機器や拡張カードを接続すると、OSが自動的に必要な設定を行う仕組みのこと。これはWindows 95で初めて採用され、現在は殆どが対応している。省略形でPnPとも呼ばれる。参照:プラグ・アンド・プレイ | IT用語辞典 | 大塚商会 |
本文へ6 | 指向性を表すタイプの1つである。カーディオイドは単一指向性とも言われ、正面からの音を拾い、正面以外の周囲や後ろからの音を拾わない指向性を持つ。指向性を図解すると逆ハート形になるため、心臓形を意味するカーディオイドとなった。数学的にはカーシオイドと呼ばれる。参照:マイクロホンを識る|マイクロホンナビ|マイクロホン|オーディオテクニカ こちらは指向特性のページである。 |