この記事の概要を簡単まとめ!
- PCは何かとGPUが性能面で優先されがち
- しかし基礎部分で言えばCPUが重要である
- ターボブーストは果たして必要かどうかが疑問になった
- FFXVベンチマークでGPUの設定は前回設定したものを使用する
- ターボブーストの有無でスコアが変わるかを確認
- 結果:ターボブーストの有無だけでスコアが大幅に違った
- 快適性か、寿命か、自分の用途に応じて選べ
PCのパーツの話をしている時に気付いたことがある。今までずっとGPUのことばかり考えていたが、もっと根本的に大事なCPUのことは蔑ろにしていた。それはPC全体の動作に関わるもので、特にGPUが影響を受ける。単純に考えて、i3系とRTX2000番台では釣り合わず、CPUに引っ張られてGPU側の性能をフルに生かせない。
幸いにしてi7-9700に変更したことで性能は十分に活かせている。しかし私は使用時にCPUの寿命を考えてターボブーストを切って運用している。だが最近、RTX2080Tiを使用しているので、本当はターボブーストが必要なのではという疑問が湧いてきた。それを解消するべく、今度はCPUの実験を行うことにした。
ひとっ飛びできる目次
基本性能vsターボブースト
CPUの性能とPC
CPUとGPUの情報
私がGPUを強化し、アフターバーナーの調整をした記事がある。これはGPUについて注目し、1060-6GBから始めてTITAN X、1080Ti、そして2080Tiに到達し現在これを使用中である。1080TiはRTX4000番台が存在する今でも前線で活躍できるGPUではあったが、基本性能の向上で発熱を抑えたかったのと、HEVCを使いたいという欲求のもとで行動し、その結果で入手したのがEVGA RTX 2080 Ti XC Ultra(11G-P4-2383-KR)。基本性能も放熱も十分で、満足するものになった。
さて、私の話は一旦置いておき、インターネット上に存在するPC関係の情報について考える。大抵の人が探す情報はおそらく、CPUとGPUの情報であろう。これらは殆どの人がPCを構築する上で最も重要だと考えているはずだ。これは検索すれば、企業(PC販売店)から個人まで様々な情報を得ることができる。
そうして辿り着いたサイトを見ると、企業系はCPUやGPUの基本的なことを書いており、その後に選び方や注意事項などを書いていることが多い。個人のサイトは特定のCPUやGPUに対して注目し、そのベンチマーク結果と世代とモデルごとに比較情報を乗せて、その評価(個人の感想)を書いているというのが一般書式であることが多い。ただし主観情報であるがゆえに、複数の情報を参照して比較、決定する必要があることは言うまでもない。
基礎部分で考えればCPUが重要
ここ最近、GPUありきでPCが語られることが多いように感じる。その原因はいくつか考えられるが、その1つがパーツ持ちの良さである。私が現在使用しているH370 Pro4は2019年に調達してから使い続けているのだが、まだ各部品の破損が見られないほどによくできており、まだしばらく壊れないとみている。この関係でCPUの使用が第8・9世代インテルに限定されるため、CPUのアップグレードがしにくいというのが大きいであろう。そもそも、CPUもマザーボードも交換するとなれば大掛かりな出費になり、そう易々と買い換えるものではない。
だがよく考えてみると、GPUは(CPUが内蔵グラフィックを有しない場合を除き)無くてもPCは成り立つが、CPUがなければ動作はほぼ不可能である。したがって基礎部分で考えれば、GPUよりもCPUが重要である。そこで今度は、私自身のCPUの遍歴を調査した。
- i3-8100: 第8世代デスクトップ用では最弱のCPUであり、4C/4T, 3.60GHzでターボブーストはオミットされている。しかし第7世代までは2C/4Tであり、物理コアがスレッド数に一致したことで安定性は高くなり、ゲームも中程度の設定であれば問題ないレベルに達している。しかしそれでも最低限というラインであることは否めず、すぐに力不足を痛感することになった。
- i5-9400F: 第9世代デスクトップ用で、i5-9400からiGPUをオミットしたモデル。単体で映像出力ができない以外はFなしのモデルと相違ない性能である。6C/6T, ベースクロック2.90GHz, ターボブースト4.10GHzと、一般的な性能を持っている。よほどスペックを要求されるような設定にしないのであれば十分という性能で、GPUも極端に高性能なものでない限りはボトルネックは発生しないであろう。なお、1080Tiでは少し引っ張られていたように感じる。
- i7-9700: 第9世代デスクトップ用でミドルレンジからハイエンドで採用されるCPU。8C/8T, ベースクロック3.00GHz, ターボブースト4.70GHzで、十分な性能を持つ。多くのゲーミングPCではこれの上位版であるi7-9700Kを採用していることが多い。物理コアが8でベースクロック3.00GHzのため、ターボブーストを使わずとも安定して動作する。ゲームなどで本気を出す場合にターボブーストを使用するといい。基本性能が高いので殆どのGPUの性能を十分に引き出すことができる。
CPUについても、最初は最低限のゲーミングPCということでi3-8100を使用していたが、早々と力不足を感じて更新を決意し、i5-9400Fにしている。その後で1080Tiを入手すると、その性能を十分に発揮できていないことを感じてi7-9700に更新した。このことから分かるのが、GPUだけ強くてもPCは強くならず、CPUも強化して初めて本領発揮となる。当然、それに付随するRAMやディスクなども重要だが、特に重要なのはCPUである。これは配信者、VTuberなら尚更であり、同時に複数のソフトウェアを動かすのであれば必須である。
ターボブーストは本当に必要なのか
メーカー側としてはターボブーストは使用されることを前提に設計しているので、おそらくターボブーストを日常的に使用していても問題ないはずである。しかし私は寿命を延ばすことを重視して、ターボブーストは基本切っている。だが1つ、運用する際にあたってターボブーストは本当に必要なのか、再考しなければならないとわかった。性能を十分に発揮するのと、ターボブーストを使用してもそこまで温度は上がらないのではないか、ということである。
そこで、CPU版のベンチマークを実施する。ターボブーストなしの場合とターボブーストありの場合、ついでにパワーリミットを5/6(2.50GHz, 84%)にした場合の変化についても測定し比較データとする。その結果を比較し、どのように運用していくべきかについて考察することとする。
CPU、定格で行くかターボブーストするか
アフターバーナーの設定の固定
ベンチマークに使用するのは、FFXVベンチマークである。ベンチマーク設定は1080p高画質。これはCPUクロックが与えるGPUへの影響を調べる目的がある。ただし、その際のGPUの設定は以前に設定したものを使用する。その設定は、指定電圧点912mVのときクロックが1965MHzになる設定912mVでは何故か途中で止まってしまったので、925mVで1965MHzとした。この設定が私が調べた中では安定しつつパフォーマンスが良くなるもので、この設定で固定してベンチマークを実施する。
データ取得に使用するモニタリングツール
検証のためには比較としてのログデータが必要になるが、大抵はフリーソフトを利用することになる。CPU温度を監視するツールで有名なCore Tempもログ機能を有するが、残念ながらログ出力機能に不備があり、項目と記録内容が不一致になっていて使い物にならない。他にはHWiNFO64があるが、これは記録内容が多すぎて処理しきれなくなる。必要な情報はクロックとCPUの温度、できれば消費電力である。
Intelが公式で出しているツールに、Intel Power Gadgetがある。2019年5月2日で更新終了の状態であるが、消費電力・周波数・使用率・温度をリアルタイムで監視し、ログも記録可能である。Intel製CPUであればどれでも記録できるうえ、検証に必要なデータを全て取得できるので、今回の実験では最適である。なお、比較を確実にするために、GPU-Zによるログの取得も同時に行う。
実験結果
実験結果について、まず単純なスコアとCPU・GPUの最大温度および最大消費電力、GPUの最大負荷について表にする。
CPU最大クロック(%指定)[%] | CPU最大クロック(実測値)[MHz] | CPU最大温度[℃] | GPU最大温度[℃] | CPU最大消費電力[W] | GPU最大消費電力[W] | GPU最大負荷[%] | スコア |
100 | 4500 | 100 | 73.9 | 64.997※1 | 263.4 | 100 | 13025 |
99 | 2900 | 68 | 72.4 | 32.817 | 258 | 99 | 11554 |
84 | 2500 | 63 | 71.7 | 25.203 | 254.4 | 98 | 10442 |
※1: 瞬時値では112.895Wを記録しているが、運用上現実的な数値ではないため除外している。
上記の結果が得られた。このことからわかるのが、CPUクロックがGPUの性能に直結し、ベンチマークなどの結果を数値化できるものに対してはその結果に直結するということだ。次に、CPU最大クロックごとの両者の消費電力推移をグラフ化したものを以下に掲載する。
GPUの設定は925mVで1965MHzで固定しており、GPUクロックも1935~1950Mzで固定されていたのでグラフ化はしなかった。その上で面白いことが、CPUの消費電力=クロックはGPUの消費電力にも影響を与えていたことである。これは表のGPU最大消費電力からも判明している。そのため、結果からは確実にCPUクロックはGPUの性能にも影響を及ぼすということが言える。
設定考察
以上の結果から、GPUの性能を十分に引き出すのであればターボブーストを使用するべきである。しかしその場合は消費電力とCPU温度が非常に上がりやすいものとなる。特に熱が非常に上がりやすく、冷却が不十分であると内部に熱がこもり、他のパーツが熱によるダメージを受けることも多くなる。よって使用には水冷または大型ヒートシンクの使用が前提となり、ケースについても外部への排熱設計が十分になされたものを使用することが必要である。それらがない場合はパネルを片面だけでも開放状態にすることで、その熱が外部に抜けやすくなり全体的に5℃以上の放熱効果が得られる。
ただ、FFXVベンチマーク結果基準ではその差は1500程度である。13000を超えて非常に快適というスコアであるが、11500程度でも人間の目では殆ど同じに見え、その差は細かすぎて分からない、というのが正直な感想である。そのため、競技シーンのような小数点以下のスピードが要求される場合などはターボブーストの使用を解禁し、それ以外は基本性能が高いならベースクロックでも問題ないであろう。
快適性か、寿命か、自分の用途に応じて選べ
以上でCPUクロックの違いによるGPUに与える影響の実験を終了する。GPUのアップグレードは簡単であるがCPUのアップグレードはマザーボードの採用するCPUソケットとチップに縛られることが多く、しかしマザーボードが「当たり」であるなら5年以上は持つので、そのために基本部分となるマザーボードとCPUの買い替えを行っていないという人も多いはずだ。
そこで気付いたのが、CPUとGPUの関係性である。今までGPUにばかり注目していたが、本来はCPUがPCを構成する上で最重要である。実のところ、ゲームや3Dモデリングといったグラフィックにリソースが消費されることをやらないのであれば、iGPUがオミットされているモデル以外のCPUだけでもPCは動かすことができるのである。その場合はオフィス用途になるはずで、だとすれば高性能である必要もないが。
今回はマザーボードとCPUがIntel対応なのでIntel CPUについての解説となったが、基本性能が高ければ無理にターボブーストを使用することもないというのが私の考えである。何故なら、いくら技術が進歩しようと人間の目は細かな違いを判断できるようには出来ていないからだ。つまり、FFXVベンチマークスコアで1500の差があったとしてもあまり差がないように見えるということだ。その上で、快適性を求めるか、それとも大事にして寿命を延ばすか。聞くまでもない、自分の用途に応じて選べばいい。
以上、CPU定格論:動作が安定するならターボブーストは要らない?であった。過剰な性能は多くにとって不要であるということは、理解しておくべことである。
KIBEKIN at 00:00 Aug. 23th, 2023
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