この記事の概要を簡単まとめ!
- CPUの冷却は重要事項の1つである
- CPUボックスを購入すれば純正クーラーが必ずついてくる
- 純性ゆえにヒートシンクは小型で力不足は否めない
- ケース用ファンを流用することで強力なクーラーが作れると考え実施
- ファンが動かないがヒートシンクの大きいCPUクーラーを使う
- 入手したケース用ファンが3ピンのため、PWM化するパーツを併用
- ファンガードでブレードとヒートシンクが触れないようにスペースを取る
- 固定できる部分はないので結束バンドでブレードに触れないよう固定する
- ケース用ゆえ騒音はあるが、それでも冷却力は高い
- 不格好でも純正よりも強い冷却力がここにある
私は普通ではない実験を行うことが多い。それは金がないことで自作した方が安上がりであることや、自分が欲しいものは既製品では存在しないので作った方が早いということが理由である。加えて、今あるものをなるべく捨てずに活用するという、一種の資源の節約と再利用という部分がある。完全に壊れているものはどうにもならないが、一部が動くのならそれを他の一部と組み合わせて変わったものを作ってもいいはずだ。
今回試みることも、その1つである。不用品を整理している時に出現した、サイズのCPUクーラーは断線しており動くことは絶対にない状態になっていた。だがヒートシンクは大型であり、ファンとヒートシンクは分離できる構造になっていた。そこで思いついたことが、ケース用のファンを結合してCPUクーラーを再生することである。これ自体は先駆者が多数存在するので、一般的な改造であるようだ。
本来のケース用ファンはCPUクーラーに接続するためには作られていないわけで、ヒートシンクには無理矢理括り付けるなどの力技が必要になる。また、私が用意したケース用ファンはPWM制御ができない3ピンであり、ここでも躓いた。だが3ピンをPWM化するパーツがあり、この問題はすぐ解決した。少しの投資でIntelやAMDの純正CPUクーラーよりもパワーを出せるものを作れるのではないかと考えた私は、実際に試すことにした。
ひとっ飛びできる目次
純性よりも空冷のパワーを求めて
PCの冷却とCPU
熱くなるCPU
PCの性能が高くなると、できることが増える。そのためには構成される各パーツの性能が重要であり、同時に各パーツの製造時期の差が大きくなりすぎないことが重要である。これは所謂「ボトルネック」であり、あるパーツが周りのパーツよりも古い世代のものである場合、その部分で速度や性能が落ち、実質的に古いPCと全く性能が変わらない状態になることが多いためである。CPUとRAMはマザーボードで使用できる規格が指定されているため、マザーボードが新しいのであれば必然的にCPUとRAMは世代を合わせることができるが、GPUについては原則その制限がない。そのため、GPUの世代が古いとGPUがボトルネックとなり、逆に新しいとマザーボードとその規格に指定されたCPU, RAMがボトルネックとなることが多い。
そのため、特別な理由がなければPCは各種パーツのアップグレードを定期的に行うのが、快適に利用するために必要なことである。おそらく殆どの人がそのはずだ。ここで、CPUの消費電力について注目する。MSI Afterburnerについて書いた記事では、比較データとして執筆時点でIntel及びAMDの両者の最新CPU(デスクトップ限定)の情報を記載しており、Intelの場合は無印モデル及びFモデルはベースパワーが60~65W、性能を限界まで上げたKモデルは125Wと大きく消費電力が上がっている。また、最大ターボパワーが別で記載されている。これは瞬時的に出る消費電力であるようで、これはモデルによって差があるが、現時点で一般ユーザーが使用する最新かつ最上位モデルとなるi9-13900Kは253Wとなっている。AMDは純粋にTDPのみの記載で、Ryzen 3 3300Xが65Wとなり、執筆時点の最上位であるRyzen 9 7950Xは170Wとなっている。
一般ユーザーであればここまで極端に性能が高いものを使うことは稀であるが、それでもCPUの基本性能は年々上昇している。だがそれに伴って消費電力も増加しているわけで、そうなってくると切り離せない問題が「熱」である。CPUは通常運用であれば定格クロックで運用する。その場合の消費電力は高くなく、熱も少ない。これがゲーム、3DCG、動画制作といったクリエイティブ用途になるとクロックを上げて運用することになり、この場合は消費電力もTDPに近くなり、熱も多くなる。熱はパーツの寿命を縮め、破損の原因にもなることから、熱対策はどのユーザーでも重要視されることであり、常識の1つである。ガチのユーザーは水冷を導入し、最大限パワーを発揮するようにしているほどである。それほどまでに熱は切り離せない問題である。
CPUボックスを購入すれば純正クーラーが必ずついてくる
ところでCPUを新品で購入する場合、CPUボックスを購入することになるはずだ。その箱にはCPU本体と、純正クーラー(リテールクーラー)が同封されていることが殆どである。Intelの場合はPWM制御可能な4ピン式で、DC12V/0.17~0.28Aの範囲のものが多いようである。使用しているファン本体はFoxconn製のものが多い。ヒートシンクは基本的に小型であり、一部上位モデルではCPUに接触する部分が銅になっていることがある。AMDの場合も殆ど同じで、下位モデルになるほどそもそもTDPが低いことから小型・静音を重視したものになっているようである。
ここで考えることは、CPUクーラーは小型・静音になる場合、冷却性能が低くなるということである。これは元々の消費電力が低い場合はあまり問題にならないが、高い場合はCPUクーラーによる放熱が追い付かないことが容易に想像できる。通常そのようなことは「新品を購入している」なら起きないが、今は資金的余裕を持たせるためにも中古のCPUを任意のオークション・フリマサイトで購入して使用することは当たり前になっている。その場合はCPU単体のみで売られていることが多く、クーラーは元々使っているものをそのまま使うということも少なくないはずだ。この場合に放熱が追い付かなくなり、CPUの寿命を大きく縮めるようなことが起きがちである。
だからといって、全員が全員、水冷ユニットを導入できるかといえばそれは不可能である。水冷ユニットが導入可能かどうかはPCケースの大きさにも依るので、それが小さく導入できるスペースがない場合は不可能だ。占有スペースが大きくなる以上、他パーツとの干渉は絶対に避けられない。加えて常時ターボブーストするようなことをしないのであれば、水冷効果を十分に使用していないので宝の持ち腐れである。導入費に対して十分に活かせないのなら、無理して水冷にすることもないということであろう。業務用なら尚更、リテールクーラーで十分となるはずだ。
純正クーラーでは力不足を感じるようになった
私も結局、Intelの純正CPUクーラーを使用している。それもかなり古く、最初はi3-8100を購入したときについてきたもの、次にi5-9400Fを購入したときについてきたものである。その当時は特に高負荷なゲームをすることはあまりないだろうということで、そのまま使い続けることにした。性能的には、LGA1151のi3-8100, i3-9100, i5-9400F, i7-9700は全てTDPが65Wであるが、i3は8100のみターボブーストが存在せず、それ以外のものはターボブースト2.0が実装されている。そんな中で、i5-9400Fに付属しているリテールクーラーは、以下のものであった。

シールから、規格はDC12V, 0.20Aであることが分かる。4ピンのPWM制御に対応するものであり、CPUの温度に応じて回転数を調整する構造になっている。低負荷で温度が低いなら低回転で、高負荷で温度が高いなら高回転するようにOS側が自動で調整する。ただし、このクーラーの規格から考えるに、必要最低限の機能のみを備えたクーラーであると言える。とはいえCPUクーラーはマザーボードの規格から基本的に12Vのみであるので、性能を上げるには電流の値を上げることしかない。
だが私はこれに力不足を感じるようになった。まず私は入手しやすく交換もしやすいGPUのアップグレードから手を付け、それまでGTX 1060-6GBだったものを、TITAN X→1080Tiと更新した。RTX 2080Ti以上のモデルが存在する今では力不足感はあるものの、相対比較では大幅なアップグレードになる。この時に問題になるのが、CPUがボトルネックになることだ。FFXVベンチマークをMSI Afterburnerの検証で行っていた時に、思っていたよりもスコアが伸びなかったことで、現在使用中のPalitの1080Tiの最高モデルであるGameRock Premiumもその現象に悩まされた。能力をフルに生かすにはi5-9400Fをターボブーストで使用する必要があるが、その際は90℃近くまで上がるのでかなり負荷がかかり、正直冷却が追い付いている感じがしない。また、i7-9700はTDPが65Wであるが、8コア8スレッドでターボブースト時は4.70GHzまで上がり、i5-9400F以上に温度が高くなる可能性があるので、将来のために真面目に更新することを考えなければならなくなった。
ケース用ファンを流用することで強力なクーラーが作れる
PCケースは内部に籠る熱を外部に放出するために、各箇所にケースの外側に向かってファンが2~3個設置されている。このファンは通常、ケース用であり、CPU・GPUや各種パーツの冷却のためには使用することが難しいものであることが殆どである。中には小型のファンがあるが、これはNVMe SSD向けのクーラーであることが多い。したがって、通常はリテールクーラーとそれに準拠した各PCメーカーが製造・販売しているカスタムのCPUファンを使用する。PCメーカー製の場合はヒートシンクが大型である、銅を使用している、大型ファンや高回転数といったものになる。
だが世の中には、本来の用途とは異なる形で使いたいと考える人は多く、その1つがケース用ファンをCPUクーラーとして利用することである。ただし、ケース用ファンはヒートシンクを持たないので、それ単体ではCPUクーラーとしては使えない。そのため、一般流通しているケース用ファン向けのファンガードやビスなどのパーツと、束線バンドという少々荒い方法で、既存のリテールクーラーからファンを載せ替える形で改造することで実現することが可能であると分かった。インターネット上では、先駆者がそのような方法で改造クーラーを作った情報を発見することができた。
ケース用ファンは、主流なものは3ピンと4ピンのどちらも存在し、古いモデルであると3ピンが多い。CPUクーラーはPWM制御のため、4ピンで運用することが原則だが、ものによっては3ピンしかないことも少なくない。その場合も市販の3ピンをPWM制御の4ピンに変換できるパーツを使用することで運用可能になる。今回、偶然に偶然が重なって3ピンのケース用ファンを入手、手元にファンの死んだメーカー製のCPUクーラーがあり、不足パーツを追加購入して改造することで理想とするCPUクーラーを作ることができた。その過程と実力を、次項から詳細に書いていく。
改造CPUクーラーを作ろう!
今回使用したパーツ群
まずは改造するにあたって使用した各パーツの情報を掲載する。
- CPUクーラー・ファン部分:FOXCONN PVA092G12H DC12V/0.40A FOXCONN製のケース用ファン。直径92mm、厚さ25mmである。実は3ピンであり、PWM制御ができない。これは後述のパーツによってPWM化することができるので問題ない。殆ど使われていない中古品で、クーポンを適用して800円で入手。
- CPUクーラー・ヒートシンク部分:SCYTHE / MONOCHROME VALUE サイズ製のIntel製CPUのリテールクーラーに準拠したCPUクーラー。終売品。LGA775及びLGA115x系列に使用できる。ヒートシンク部分が大型であり、1500~3400rpmで高回転数である。あるマザーボードを入手した際の付属品であるが、既に黒と黄が断線し、動くことがない代物になっていた。そのため、ヒートシンク部分を流用することにした。
- Ainex ファンガード 92mm用(CFG-90A):PVA092G12Hは92mm幅のため、ファンガードは92mmのものを使用する。ヒートシンクとファンが干渉するのを防止するのと同時、無理矢理くっつけるための土台にもなる。
- Bullet ファン固定用ネジセット FS01:25mm厚ファンを固定するためのネジセット。スプリングワッシャーが付属するが、これを挟むとナットに止められなくなるため、ワッシャーのみで使用する。
- Ainex PWM-Master(CA-PWM):3ピンファンをマザーボードのPWM 4ピンコネクタに接続してPWM制御可能にする変換コネクタ。中間部にICチップが搭載されており、これによりファンに適合したPWM特性を生成して動作させることができるようになる。DC12VのINに対し、DC4~12VのOUT(PWM)となっており、定格電流は1Aとなっている。低電圧下では動作不全を起こす可能性があるので運用時は注意が必要である。
- 工具:ニッパー、やすり、プラスドライバー(0番または1番)、束線バンド4本を別途用意

今回使用するパーツは上記の通りである。CPUクーラーはたまたま、線が切れて使い物にならなくなったサイズのものがあり、これのヒートシンクはかなり大型であったことから、それを土台としてファン部分を切除して使用する。取り付けるファンは到着後に確認すると3ピンであったので、これを4ピンPWM化するAinexのパーツを使用して、CPUファンとして機能するようにしている。また、ファンガードはファンとヒートシンクの接触を防止するものであり、同時にヒートシンクとファンを固定するためのポイントとしても利用する。あとは一般的な工具を用意すれば準備完了である。
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工作手順
手順01:ファンガードの取り付け
まずはファンガードの取り付けを行う。ファンの放熱方向と逆、ここでは後ろになる側に取り付けて、ヒートシンクとの接触を防ぎ、固定ポイントを作るようにする。ネジセットからはスプリングワッシャー以外のセットを使用し、以下のように留めるようにする。

セットにはスプリングワッシャーがあるが、これを使うと長さが足りず留めることができなくなった。そのため通常のワッシャーのみ使用している。ナットとワッシャーには表と裏が存在し、両方とも丸みのある側が表、平面でバリがある側が裏となる。ワッシャーはファンのネジ穴に対して表を外側に向け、ナットも同様に外側に向けることで綺麗に留めることができるようになる。今回の場合はCPUファンとして上から見たとき、ネジの頭が見えるようにするのが正解である。
手順02:動かなくなったファンを除去
サイズのファンは、断線している以上どうやっても動かすことができない。しかしヒートシンクと台座についてはそのまま流用することができるので、まずは邪魔なファン部分を除去する。除去する方法は簡単で、ファンを固定する4箇所の接合部分をニッパーで切り取るだけである。その後、切り取った部分についてやすりがけを行い、固定する際に邪魔にならないよう、また傷をつけないようにする対策を行う。以下の画像が参考となる。

このファンは整備用にヒートシンクから外すことができるが、ファンと台座部分は最初から固定されているため外すことはできない。また、大抵はシールの裏にアクセスポイントがあるのだが、このファンには残念ながら存在しないため、修理そのものが不可能であった。もっとも、どう扱ったら2本も断線するのかという疑問が存在するが、それはともかくとして固定されているのは赤丸で囲った4箇所であり、ここをニッパーで無理矢理切断してやれば枠だけ残して外すことができる。切った後は大抵バリが残るので、その部分はやすりがけして綺麗にしておく。なお、ファン部分は断線している以上もう使い物にならないので廃棄した。
手順03:土台とファンを束線バンドで固定する+変換コネクタを装着
ケース用ファンはその名の通り、PCケースの指定位置に設置するためのファンである。そのため、CPUファンの任意のヒートシンクに固定するための引っかける部分やネジ穴などは存在しない。そのため、先程ファンをカットし台座だけ残ったところに、ファンガードを束線バンドできつく締めて固定する方法を取る。束線バンドで締める際は、なるべく台座との隙間が発生せず、ヒートシンクと合わせたときに浮かないように、少し位置をずらしたところに通す。具体的には以下の画像の通りである。

理想の状態は土台とファンガードの隙間が全くないことで、束線バンドによる微小の隙間は留め方の関係でどうしても発生するのでこれは許容する。留め方は使用する土台にもよるが、今回の場合は元々ファンが付いていた、ニッパーで切り落とした残りの部分に重なるのは避けて、その少し左右のいずれかにずらしておく。これによりヒートシンクとの隙間を少なくすることができ、放熱性を損なわない。また、このタイミングでCA-PWMをあらかじめ接続しておき、土台についているであろうコードを固定するポイントを利用してあまり動かないようにしておくといい。なお、固定するポイントは全て使う必要はない。
手順04:マザーボードに取り付ける
揺らしたり、ずらすように動かして外れないことを確認出来たら、マザーボードに取り付ける。ヒートシンクの留め具をそのまま流用しているので、取り付け方はリテールクーラーを取り付けるのと全く同じ方法で行える。取り付ける際は他のパーツに干渉しないように注意しながら取り付けるようにする。問題がなければ、次のように固定できる。比較のため、元々のIntelのリテールクーラーの画像も掲載している。

当然のことながらセットする前にCPUにグリスを塗る必要がある。その上で本体をマザーボードにセットし、CA-PWMの4ピン側をマザーボードの4ピンに接続することで使えるようになる。こちらでやることは固定のピンがしっかりマザーボードに入っているかどうかの確認であり、しっかりセットできていれば動かしても外れることがなくなる。その状態を確認したら、まずは一旦開けたままで実際に起動して動くかを確認していく。
改造CPUクーラーの動作確認
載せ替えに成功したら、次は実際に動くかを確認する。確認方法は目視確認とUEFIからの確認である。
目視確認
動作確認は目視確認が最も確実である。PCケースを開放したままで電源を入れ、実際に回転するかどうかを確認する。問題がなければ次の動画のようになる。
電源投入時は一瞬だけ高回転になり、その後CPU温度に合わせて回転数が自動で下がるのを確認できる。上の方に見えるファンは回転数は固定である。Intelのリテールクーラーを使用していた時よりもファンの音がはっきりしているようで、最大回転になった場合は相当なノイズになると思われる。とはいえ、冷却能力には変えられないのでノイズに関しては許容しなければならない。一応、CPUファンの回転数を制御可能なフリーソフトは存在するが、その手間や排熱効率を考えここでは使用しない。
ここで回転しない場合は、3ピンを変換しているのならCA-PWMに破損がある、4ピンならそのファン自体に問題があるということになる。電源が入る場合は原則としてマザーボード側に問題がないので、使用するファンやパーツに問題がないことをあらかじめ確認することが重要になる。折角束線バンドまで使用して動かないでは手間と廃材が増えるだけであるので、事前の確認作業は怠らずに行うことである。
UEFIでの確認
機械的に認識できていることが分かった場合、次に確認するのはソフトウェアとして認識できるかどうかである。4ピンの場合はこの心配は殆どないが、3ピンでCA-PWMを使用している場合は間に変換装置を挟んでいるので、認識してくれるかどうかが問題となる。最も簡単な確認方法はUEFIにアクセスし、ハードウェアモニタの欄(メーカーによって表記や場所が異なる)からCPUファンについて記載されている項を確認し、回転数が時間によって変化するかどうかを確認することである。以下は画像であるが、イメージが次のようになる。

一般的なPC及びマザーボードであれば、大抵は1つのCPUのみである。そのため見るべき場所はほぼ1つに限られる。該当箇所の数値(単位はRPM)を確認し、これが変動しているのであれば改造成功である。もっとも、多くのCPUファンの定格は12Vであり、マザーボードも大抵12Vしか出力できないようになっている。ここに24Vのケース用ファン(サーバー向け規格)を使おうとしてもマザーボードが破損する可能性が高いので行わないこと。理論上は12Vを無理矢理24Vに昇圧することで可能だが、危険と手間を冒してまで実施する価値はないだろう。
ともかく、回転数が変動できていることを確認できればこの時点では問題ない。ここでもCPU温度を確認することができるが、実際の温度と効率は負荷のかかる操作、特にゲームをした場合に確認できるので、実際の確認はそれで行うこととする。
負荷実験による冷却効率の確認
ここでは実際にCPUに負荷を与えて高温にし、その時のクロック、CPU温度、ファンの回転数を確認していく。それらの情報を同時に表示するには、サードパーティのソフトウェアを利用する。その中で求めているデータを全て同時に取得できるのがHWiNFO64である。これを利用し、高負荷のゲームをプレイして意図的に負荷が長時間かかるようにして、その時のデータの一部分を抜き出し、グラフ化する。そのデータが以下である。

負荷をかけやすいゲームとして伝説のレジェンドを30分程度、通常のプレイで検証した。ここではターボブーストを有効にして検証している。この結果から見ると、クロック(黄)が高くなるタイミングでコア最大値(赤)が同時に上昇し、そのタイミングでCPU1(青)が上がっていることが分かる。その後クロックが下がり温度上昇が落ち着くと、ファンも回転数が一気に下がっている。その後はクロックと温度の変化に合わせて回転数が変動しているので、CA-PWMによる制御は成功していると分かる。
実験時は配信は行っていないため、それに係るソフトウェアを起動しておらず、負荷は普段より低い。これが配信を同時に行っていると、90℃近くまで上昇することが分かっている。しかし確実に90℃を超えることはなく、回転数も高負荷時で3000rpm台も出せるので冷却性能は高くなっていることが分かる。純正リテールクーラーでも90℃を超える(ただしTj100℃には到達しない)ことは多かったため、この改造で普段利用でも十分な冷却性能を得られていることが分かる。
以上で実験は終了である。壊れたCPUクーラーがあるなら、改造の価値がある結果となった。
不格好でも純正よりも強い冷却力がここにある
LGA1151のサイズのCPUクーラーが手元にあったが、どういう扱い方をすればそうなるのか、ファンを回転するためのコードが断線しており、しかもアセンブリであるためにファンの基盤を台座から分離することができず、動かない大型のゴミと化していた。しかしヒートシンクはリテールクーラーよりも大型であることからこれを再利用できないかと考えたとき、ケース用ファンと組み合わせることができれば使えると、安直なことを考えた。だが同じことを考える人は多く、既に流用して改造CPUクーラーを作った人の情報が存在し、そのための方法も多く掲載されていた。
これに従って、私も実際に改造することにしたが、1つの失敗が調達したのが3ピンのケース用ファンだったことである。これではPWM制御ができないと悩んでいたところで見つけたのが、AinexのCA-PWM。3ピンを4ピン化し、内蔵のICによってPWM制御に最適なパターンを自動生成するという、ちゃんとした変換機能を備えたコネクタであった。これを利用するのに加えて、ケース用ファン向けのパーツと束線バンド、そして破損したファンを除去して土台だけ流用し、1つの改造CPUクーラーを自作した。見た目は無理矢理結合させたためにかなり不格好であるが、元々規格が同一のCPUクーラーをベースとしているので、その状態でもマザーボードの指定の箇所に固定することができるようになっている。
リテールクーラーはどうしても力不足であることは否めず、かといって水冷ユニットを導入するスペースはない。空冷でも大型ヒートシンクのものはやはりスペースに余裕がない。そうして改造した後普通に使用しているが、冷却性能は満足するものになっていた。おそらく性能そのものはDC12V/0.40Aの規格のCPUクーラーとあまり変わらないものになるとは思われるが、今回使用したケース用ファンは直径92mmのファンであり、リテールクーラーに合わせた規格となれば直径80mm程度で、それと比較すると少し大きいものになる。また、ケース用ファンは常時回転することが前提であるので、寿命が長くなるように設計されていることも多い。それらを考慮すれば、この改造は意味のあることだと結論付けることができる。不格好でも純正よりも強い冷却力を求めるのなら、ジャンクのリテールクーラーやCPUクーラーを入手して、それを改造すると幸せになれるであろう。
以上、CPUクーラー改造記:ケース用ファンを流用して強化する、であった。次はDC24Vのファンを改造してみるか?
KIBEKIN at 00:00 May 17th, 2023
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