この記事の概要を簡単まとめ!
- ブラック企業は当たり前のように存在する
- 公的・民間媒体を問わず求人を掲載している
- 民間媒体ではブラック企業求人に特徴がある
- 口コミサイトの存在は「無意味」
- 少しでも「おかしい」を感じたらそれは正しい
この世界はブラック企業しかないのかと思うほど残酷な世界で出来ている。そもそもの話、企業はブラックもホワイトもなく、実際には利益を優先するために何かを切り捨てているのであるが、それが非人道的であれば、ブラック企業とでも呼ばれるのだろう。
そのブラック企業も、使い捨ての人材か、あるいはブラック企業の後継者を育てるために、様々な媒体に求人を出している。ブラック企業の多くは掲載している内容と事実が異なっていることが殆どで、求人「広告」とすればJAROに報告必須レベルである。
そこで今回は、民間の求人媒体でのブラック企業の見分け方を、リンクス岐部の主観から紹介していく。
ブラック企業と求人広告
ブラック企業はどういう意思のもとで動いているかは不明だが、一般に無料で掲載できる公共職業安定所=ハローワークと、多額の資金を払うことによって掲載が可能となる民間の媒体、一般には求人広告サイトに掲載している。これはブラック企業に限らず、殆どの企業がしていることである。
ここでは、ハローワーク、求人広告サイトそれぞれの求人の特徴を考える。
公共(ハローワーク)の求人広告
ハローワークは求人広告媒体としては利用も掲載も無料である。また、どんな企業の求人であっても、原則全ての求人を掲載しなくてはならない。したがって、企業規模や制度によらず、全ての求人が無条件で掲載されることになっている。
そして、求人の書式は全て一律に整えられており、特徴が全くない求人になっている。必要なこと以外はほぼ書かれておらず、求人から会社の雰囲気、特徴などを窺い知ることは出来ない。また職員に聞いても分からないことが多く、調べても情報が少ないことが多いため、真相は応募して面接し、会社を見学するか、実際に勤務している人を捕まえて話を聞くくらいしか方法がない。
だがいずれの方法も、「コスト」がかかってしまう。共通して時間と資金を消費する必要があり、そしてそれが「あたり」だった場合、リターンはなく、それ以上にマイナスとなり、苦労が台無しになる。
ハローワーク求人の場合、地元の企業が求人を掲載することが多いために、インターネットで調べようにも情報が全く出てこないことが普通にある。それなりに実績を出している企業であるならば、自社のホームページを持っていて、作成しっぱなしではなく、ある程度の更新間隔があるのであれば、ある程度はマシな企業であると思われる。しかし、それが直接ブラックかホワイトの判定に繋がるかといえばそうではなく、やはり実際に自分の目で確かめるしかないのである。
民間媒体の求人広告
民間媒体は、主としてリクルート系のリクナビNEXT、パーソル(旧インテリジェンス)のDoda、エン・ジャパンのエン転職などがある。これらは一般に転職サイトと呼ばれる分類であり、企業が掲載料金を支払って転職サイトに求人広告を載せてもらい、それによって応募されるまで待ち、それぞれの基準という「ふるい」を用いて、採用するに相応しい応募者=新入社員を確保し、人員強化を図る手段である。
これらはハローワークに掲載される求人よりも書けることが多く、写真の掲載も可能である。そのため、ここに実際の職場風景などを写すことで、未来の社畜に対して会社イメージを持たせることも可能になる。もっとも、何をどのように書くか、書式はあっても実際に書くのは企業側であり、そこに企業の特徴や独自性が出る構造となっている。
その反面、書き方を企業に一任している以上、そこに書かれていることの真偽について検証されない。したがって、見栄えを気にしたり、真実を書けないために嘘を書いたとしても、それについて何の指摘もなければ修正義務もなく、ペナルティも存在しない。広告を代わりに掲載するだけで、その内容まで精査しないというのが一般的である。無責任だが、企業と求人サイト、どちらが無責任なのだろうか。
ブラック企業の求人広告の中身と特徴
ブラック求人は、民間媒体に限り広告に特徴がある。
前提条件:ブラック企業そのもの
求人を見る前に、そもそもブラック企業が求人を出していることが多い。これは有名ブラック企業から無名ブラック企業まで様々である。
無名企業の場合、企業名に胡散臭いワードが入っている(「夢」「元気」など)、同じ企業名の求人を複数、条件や募集内容を若干変えて、同じ求人サイトで出している、或いは別の求人サイトで出している場合である。最初に入社した業界そのものブラックの(主観的)ブラック企業では、その手段を利用していた。
また、企業名の後にホールディングスといった、親会社と子会社があって、そのどちらも求人を出しているパターンがある。これはおそらく、実態は1つの会社であるが、その名前では人が集まらないために、親会社っぽく見せている可能性がある。親会社に入れると見せかけて、実際は親会社など存在しない、実在しても事業形態は全く同じということが有り得る。汚いやり口である。
この傾向は、スカウト機能のある求人サイトでよく見られる。便利な機能であるスカウトだが、これを利用してくる企業の大半はブラック企業だと疑った方がいい。ガバガバな経歴でも毎日絶えることなくスカウトは送りつけられてくる。そこには会社のことを全く書いていないものも多く、機械的に送られるものが殆どであるからだ。
タイトルと概説と写真
多くの求人サイトでは、検索機能を利用して求人を探すことが多い。その結果は一覧形式で、タイトル・概説・写真が表示される。
タイトル
タイトルは最も重要となる部分であり、ここには会社の特徴が一言で分かるようなものが相応しい。福利厚生などを書いても意味がわからないのである。ここに、残業なし、月給○万円以上、ノルマなし、働きやすいなど、これらが書かれていたら怪しい。「他に書けることがなくて」書いていることが多く、危険である。
概説は主に内容と条件を見る。求人を掲載するからには何かで人手不足になっているということであり、仕事内容は何をさせたいかを明確に書いているべきである。ここが曖昧であると、何をされるか分かったものではない。本当の意味で雑用にまわされて使えなかったら追い込み自主退職させられる、そんな運命しか待ち受けていないだろう。もっとも、明確に書いてあっても、私が経験したように研修ありますと言っておきながら、実はありませんという詐欺もあるので、書いてあることが全てとも限らないのである。
条件
条件も、役職に対してそれ相応の経験や人材を要求するものが一般的である。もっとも、求人サイトのターゲットは中途採用が中心で、新卒レベルの求人は殆どない。したがって、想定されるのはそれなりに働いた人が転職するために使用するものである。
それを考えると、役職なのに未経験歓迎、学歴不問とされているものは明らかに危険である。名ばかり管理職という可能性もある。要するに雑用。慢性的人材不足であるが、誰も来ないために管理職を未経験/学歴不問にするという常套手段を用いることが多い。研修を用意している、とはいってもその場合はブラック業界である「常用型派遣」の求人であり、研修が終わればどこに飛ばされるか分からない危険を伴うので、経験者談からすると全くもって勧められない。
写真
写真は目立つ「顔」であり、これがあるかないかで印象が大きく変わる。ただ、写真だけでは大丈夫かどうか判断しにくい。しかし、これが無関係な画像を使用している、紹介するべきでない社員の個人的な話が掲載されている、何故か漫画風であれば、ブラック企業の危険がある。
無関係な画像は、そもそも表に出せない「疚しい」何かがあるということ。企業秘密以上に秘密にしたいことがあると疑っていい。また、社員の個人的な話を画像として使用することも、求人広告として会社を紹介するという点では何の参考にもならない。暗部を表向きの明るい話で塗りつぶし、隠そうという思惑がそこにある可能性がある。
また、一部の求人広告で、何故か実在写真の1枚も使用せず、漫画の1コマを切り取ったかのような画像を使用しているものもある。これはブラック企業確定としていい。真面目に募集するのであれば、誤解を与えるようなものは常識で考えて使用しない。また、漫画風にすれば許されるとでも考えているのか、「月収○万円も!」といった、根拠なし・実績なしの謳い文句をついでに一緒にしているものも見受けられる。これが求人に使用する画像でいいのかどうか、広告を作成する企業側の倫理観を疑いかねないものばかりである。それ以前に、ブラック企業は社員に対する倫理観もなっていないため、求めること自体が間違っていると言い切れる。
ちなみに、一部の求人は画像がないため、上記に当てはまらない。
求人の詳細
先に挙げた条件をクリアしていて、悪くなさそうであれば中身を見て判断する。ここで見るのは給与、勤務地、勤務時間、休日、選考の流れの5点を中心とする。
給与
仕事をする上で気になるのが給与である。金にならない仕事は誰でもやりたくない、だが金があってもそれ以上に負担になる仕事であればそれもやりたくないものである。その時に基準となるのが、年齢・経歴・ポジションそれぞれに対する平均月給と、掲載されている月給を照らし合わせることである。
新卒であれば、最低ラインは20万以上で、諸経費を引いて手取りが16万以上あるのが理想である。諸経費については約5万と考えるといい。これを下回るようであれば、問題である。15万以下では将来設計も私生活にも影響が出るレベルであり、それが何年も続くようであればその企業には応募すべきでない。これは常用型派遣、所謂SESに多い。しかも給与が上がりにくい仕組みとなっていたりするので、新卒はSESに行ってはいけない(警鐘)。
逆に、新卒や中途でいきなり25万以上というのも問題である。その場合、激務であったり、残業が当たり前のようにある、固定残業代(みなし残業)が異常、実は手当てマジックだった、などが疑われる。労働環境や教育についても最悪な可能性がある。特に、教育においては辞めさせないための「洗脳」もあると考えても差し支えないだろう。それでも人材不足ということは、なんとしてでも辞めていった人がいるということであるが。
先ほどアンダーラインを引いた項目については、ブラック企業を判定する指標にもなる。悪質な手段として、基本給が18万円台であるが、固定残業代と各種手当てをプラスして20万近くに見せているパターンがある。基本給で20万以下は怪しいが、それ以上に見せかけの20万は危険である。労働対価が見合わない可能性も十分高い。ボーナスは基本給に対する月数の乗算であり、これを少なく抑える目的も十分あり得る。
また、固定残業代の基準として20時間を越えている場合、普段から激務であることが多い。それが良いか悪いかはここでは問わないが、労働環境は決して良いものとは言えない。1つの指標としては参考になる。
勤務地
勤務地は、SESとそれ以外で顕著である。SESは大抵の企業が『全国47都道府県の各プロジェクト先』『勤務地は希望を考慮』と書かれている。ただし、考慮してもらえるのは原則大企業のみであり、中小企業のSESは私がそうだったように全く考慮してもらえない。「とにかくどこか適当なプロジェクトに突っ込ませろ」感覚が強いので、希望は叶わないものと考えるべきである。
それ以外は、全国に支店があるような企業ではどこかの支店に配属される。オフィスワークやプログラマの場合は、どこかのビルの1フロアで行うことが多い。
ここでやってほしいことが、住所を実際に調べ、その周辺の地図と建造物を確認することである。どこかのビルを拠点としているときに、もしそのビルが古臭い雑居ビルであった場合、まともな企業ではない可能性が高い。ビルの見栄えが良ければいいというわけではないが、雑居ビルでずっとやっている企業がまともとは言えない。「進化・時代適合」を辞めた企業であることも多く、未来のない企業で働くことは時間と自分の未来を無駄にしてしまう。そうなってしまわないよう、ここも調べる必要がある。
勤務時間
勤務時間は9時~20時以内の8時間が原則である。シフト制はこの限りではない。ただし、定時だけでは実際のところは判断できない。紙面上ではいくらでも嘘を書けると疑えば、サービス残業が横行していることが有り得るのである。
特に働き方改革がうるさく言われる現代において、それを避けるために見かけ上は定時退社させて、家でサービス残業をさせる企業の屑が出現し始めている。結局は残業しているにも関わらず、役所には堂々と「残業させていません」と言うのである。結局残業ありなので、騙されないようにする。とはいっても、紙面上では分からないので、実際に社員を捕まえて聞くか、会社に電話したり実際に面接で聞いてみる他ない。とにかく、持ち帰り残業をさせるような企業は危険である。
休日
休日は業界・業種によって異なることが多いため、これは一概には言えないものの、完全週休2日制は総休日数108日以上でなければ、ブラック企業と認定していい。無論、完全週休でも休日出勤が多ければ、まともとは言えない。
週休2日制と書かれている場合は要注意である。このパターンは、土曜日を休日として扱わない場合が多く、休日が日曜日だけという可能性が高い。48日しか休めないのはブラック企業以前に人間らしい生活が出来なくなるので、絶対に無視すること。そもそも、週休2日制は避けたほうが安全である。
シフト制に関しては、休日の実績から判断する。これは実際に働いている人を捕まえて聞いたほうが早いかもしれない。
選考の流れ
通常の選考の流れは、書類選考から一次選考、二次選考、最終面接の順に上がっていく。一次選考か二次選考で筆記試験が課されることも多い。多くはSPIだが、中途の場合は独自の試験になると思われる。対策に関しては、高校~大学1・2年レベルの復習で大体が事足りる。ただし業種によっては専門分野も必要になる。
それとは別の所謂「適性試験」があり、第二のふるいである。人によっては何度も不適とされて縁なしが続いている人も多い厄介な試験である。内容をざっくり言えば、「意識高い系ですか?」ということを訊いてくるので、自分を偽ってでも意識高い系にしないと突破できないようになっている。なので作者は弾劾されるべき。
それは別として、求人サイト経由は通常の手順では何回かに分けて選考を進めていくのが一般的である。そのため、面接回数が少ない・試験がないものは、いち早く使い捨て人材がほしいために手順を少なくしているブラック企業の思惑がある。人柄重視なんて言っているところは信用できない。実力はどこに置いてきたのか。
また、面接後の即内定は確実にブラック企業であると考えていい。通常、企業側は1週間程度の考慮をした上で、改めて採用可否の連絡をするものである。ここには採用後のリスクヘッジの考えもあるのだが、それらを何も考えずに内定を出すのは誰でもいいということが見えてしまっている。
さらに、面接後に食事や飲み会に誘われたら、ブラック企業確定である。そもそもそういう企画の就職イベント(ニクリーチなど)ならともかく、ほぼ初対面の相手と何故食事に行かなければならないのか。囲い込みや、引き込みのためのパフォーマンスとしか思えない。そこに無駄金を使うなら、給料に反映するべきである。
ブラック企業の特徴としては、これくらいである。
口コミサイトの存在も「無意味」
企業も「口コミ」で語られる時代
現代化の影響により、個人が情報発信することを容易にした結果、口コミサイトが色々なジャンルに拡大し、仕事や企業も口コミが語られるようになっている。
よって、ある企業に対して裏話的な話を知りたい場合、口コミサイトで情報を集めることも出来るようになっている。運営母体は皮肉にも求人サイトや転職支援を行っている会社であったりする。必要だと思うなら最初から正確な情報しか載せないように改定したほうが効率がいいと思うのだが。
信頼できる情報源は「登録要件が厳しい」
しかしながら、求人サイトと同じ会社が運営母体の場合、その求人サイトに登録していれば見れるという処理パターンが多く、それ故情報源の信頼性は低いものとなっている。大雑把に言えば「誰でも」使えるのである。
その影響か、企業の口コミサイトとして徹底的に管理されているものが唯一存在しており、”OpenWork”(旧Vorkers)がそれである。運営会社のオープンワーク株式会社の社員が全ての口コミを調査し、事実無根のものは排除されるようになっている。どうやって調べているのかは不明である。
しかし利用条件はOpenWork経由で転職ないし就職サービスに登録するか、現職や退職済みの企業の「正確な」口コミを投稿するか、月額1000円1)サービス登録及び1000円で30日間、口コミの場合は投稿で180日間。で閲覧可能になるという、果たしてそこまでする必要があるのか?と疑問符を打たざるを得ない条件となっている。
口コミの「閲覧」だけならそこまでさせる意味はなく、寧ろ口コミの「投稿」に対して制限をかけ、投稿したいなら料金払うかサービスを登録する仕組みにすべきである。この方法では、本当に情報を必要としている人に対しての利用制限を設ける形となっていて、不平等である。
そこまでしなければ使用できないのであれば、利用価値はない。結局「無意味」でしかなくなるのである。
違和感を感じたらその違和感に従う
ブラック企業に当たらないためには、ブラック企業独特の特徴を求人から読み取ることが重要である。私の主観であるが、上記の通りに紐解いていけば、殆どのブラック企業は回避できる。
しかし時々巧妙な求人広告を作る職人が存在し、調べただけでは求人からブラック企業の可能性を読み取れないこともある。そうして隠れブラック企業の面接に進んだとき、口では説明しがたい、特別な「違和感」を感じ取ることがあるだろう。
もしそれを感じたのなら、その違和感は正しい。その違和感にしたがって、退避することを推奨する。後になって調べれば、危険な事実が発覚することも多いものである。人間はもとより危険から回避するための能力が備わっており、それが純粋に機能したということである。これを否定的に捉える人間も多いが、本能に逆らった結果辛い思いをするなら、本能に従えというものである。仕事をするのも選ぶのも自分のためであり、誰かのためではないのである。皆もう少し自分にわがままになったほうが、円満な生活を送れるのではないだろうか。
以上、リンクス岐部の主観によるブラック企業求人の特徴と判別方法であった。それでは、次回の記事で会おう。
リンクス岐部(LINKS-KIBE) at 00:58 Dec. 21th, 2019
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脚注
本文へ1 | サービス登録及び1000円で30日間、口コミの場合は投稿で180日間。 |
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