この記事の概要を簡単まとめ!
- ゲーム機も機械であり壊れ物
- 旧型ハードは生産も修理も終了したものが多い
- 有志により多くの旧型ハードが『再現』されている
- PC以外にAndroidで多くの旧型ハードを動かせる
- 完全再現不可能な旧型ハードも多い
- 「公式」エミュレーターはいつ出るのか
人は新しいものを追い求める生き物である。同時に過去を懐かしみ、思い出に浸る生き物でもある。ゲームもまた同じように、新しいものを追い求めながら、過去の名作を繰り返しプレイしている人がいる。あるいは、そのハードが誕生したときよりも後に生まれた人が、経験や好奇心をもとに「レトロゲーム」をプレイすることもある。
しかしゲーム機といえど機械であり、使用していればいつか壊れてしまうものである。そうなれば修理するか新しい本体を購入するかの2つである。ただし、製造元である大手ゲームメーカーも、発売から一定時期が経過すると本体の生産を完了し、その数年後にサポート終了となる流れが一般的である。新しい本体も修理する人もういなくなってしまうというのが、悲しいものである。同型の中古品を探すか、非公式の修理業者をあたるなどして、どうにか使い続けられるようにしなくてはならない。
とはいえ、ゲーム機の中身はゲーム・グラフィック特化のPCである。XboxはPC/AT互換機そのものだったと言われている。ということは、GPUを搭載し、高性能CPUをセットしているPCでならゲーム機の「再現」が出来るはずである。そして、有志の手で実際に「再現」されている。今回は旧型ハードのゲームを手軽にプレイできる、エミュレーターについて書いていく。
ひとっ飛びできる目次
ゲーム機と機械
家庭用ゲーム機「ファミコン」の登場
家庭用ゲーム機を基準で考えると、1983年のファミリーコンピュータ、通称ファミコンから始まっており、これが実質的な「最初の家庭用ゲーム機」となる。実際にはファミコン以前にもゲーム機は出ているが、家庭用ゲーム機のラインナップに入ることが少ないようだ。
後のヒットタイトルから黒歴史にしたいクソゲーまで、様々なメーカーが様々なゲームを生み出した。そして当時の人たちは世代も年齢も問わずファミコンでゲームをしていた。これが30年以上も前の話である。
そのファミコンのスペックは、当時の家庭用ゲーム機では特に高性能だったようで、もしかしたらPC/ATより性能が高かったかもしれない。また翌年にファミリーベーシックが登場しているため、簡易ながらプログラミングも出来たのである。なお、詳しいスペックはWikipediaを参照すること。
ファミコンを中心とした周辺機器は続々登場した。任天堂自身が開発した有名なものは光線銃、ロボット(スマブラに出ているあれ)、ディスクシステムなど。サードパーティではジョイカード(ハドソン)やホリコン(ホリ)である。かなり充実していたため、ファミコンの頃から周辺機器の概念は確立していたと言える。
ゲーム機も壊れることがある
ファミコン登場の後、任天堂・ソニー・セガ、海外はMicrosoftがゲーム事業に力を入れる。ただし、時代を先取りし過ぎたセガはドリームキャストを最後にハード部門は実質撤退。現在のゲーム機といえば、Nintendo Switch、Play Station、Xboxの3つである。携帯機では任天堂が2/3DSで独占状態である。PS Vitaは失敗したようだ。
しかし、任天堂が64、ソニーがPlay Station、MicrosoftがXboxを出した頃から、ゲーム機が壊れるようになった。特にXboxは当たりと外れがあって、すぐ壊れるものがあれば全く壊れないものがあるという話があった。
ゲーム機も機械の1つであり、壊れるのは当然のことである。そのためにメーカー修理がある。したがって、壊れたらとりあえず修理を依頼するか、別の新品または中古ハードを購入することで対応することが殆どである。新規生産が続いているうちは、上位モデルへの買い替えも手段の1つである。
旧型ハードの生産とサポート終了
しかし、ゲーム機はある一定数を生産すると生産終了を宣言し、それ以上は作らなくなる。ただし公式による修理や、インターネット対応機であればネット利用などのサポートは継続して行う。よって壊れたとしても、まだ「修理」という方法が残っている。
そのサポートも、残念ながらいつかは終了してしまう。そのタイミングは不明だが、おそらく初回生産から10年以上経ったゲーム機の中で最も古いものが対象となる。対象となったゲーム機は、多くが5年以内にサポートが終了する。サポートが終了すれば、修理はもちろん、技術的なサポートや公式のインターネットサービスは使えなくなる。ただしブラウザ機能などはサポートの有無に寄らず利用できることはある。
2020年現在までで、ソニーはPS2、任天堂はゲームキューブ、セガは全てのハードがサポート終了である。さらに任天堂は3月末をもってWiiの修理受付を終了すると発表し、そのタイミングで修理依頼が殺到したためパーツが不足し、修理不可能となった。そのため修理受付は2月6日で終了した。これにより、Wiiはレトロゲームとなった。
既に10年以上経過しているため、いつ壊れてもおかしくない。しかし、公式のサポート終了によって、壊れたらそこで終わり、そのハードでしか出来ないゲームができなくなってしまう可能性が強くなってしまっている。中古ハードが残っていればいいが、それがいつまでも動くという保証もなく、難しい話となっている。
ゲーム機の再現「エミュレーター」
PCの性能とゲーム機
ゲーム機と対比の存在に、ゲーミングデスクトップないしゲーミングノートがある。これらを語るとき、ゲーム機はしばしばコンシューマ機と呼ぶことがある。
現在のゲーミングデスクトップは10万円前後で大半のゲームができるものを建てられる。普通にプレイする分にはFPSも問題ないレベルに収まる。想定される性能は、i5-8400、GTX 1060-6GBである。
各最新鋭ハードのスペックは不明だが現行のCPUとGPUであれば、PS3・Wii U・Xbox360の性能を上回っていることは確実である。昔であればPCのGPUはさほど性能は高くなかったことと価格の関係からゲームはコンシューマ機が強かったが、CPUのC/T数向上とGPUの高性能化と開発間隔が短くなっていること、それに伴って旧モデルのGPUの価格が手の出せるところまで落ちてきていることから、簡単にコンシューマ機の性能を超えるPCを建てることができる。そのため、旧型ハードが要求する性能は簡単にクリアできるようになっている。
有志によってゲーム機が「再現」される
そして、有志により各ゲーム機が解析され、PC上で起動できるようプログラムを調整し、ソフトウェアの1つとして、実機とほぼ同じように操作ないしプレイできるように「再現」したのである。これらは一般にエミュレーターと呼ばれる。
その方法は高度なため解説不能だが再現度は、カセット式はそのまますぐに起動できるようになっており、PS1、PS2はホーム画面1)ディスク無しで起動したときに出る画面。も再現している。そのためメモリーカード管理や設定も変更できるようになっている。もっとも、実機ではないので設定変更を行う意味が薄れている。
また、エミュレーターであるが故に、本体に直接接続するものは利用できない場合が多い。PS2のUSBポート、ネットワークアダプターがそれであり、ただ再現しただけでは利用できない。ただし、エミュレーターの設定を変更することで利用できる可能性はある。よって、「再現」の度合いは基本的に内部中心で、それ以外は設定の変更が必要なのが一般的である。
Androidにも多数のエミュレーターが存在
通常エミュレーターはPCで動作させるのが普通であるが、負荷の小さいゲーム機の場合、Androidでエミュレーターが動作する。これも有志がそれぞれ個別タイトルのアプリをGoogle Playで公開しているため、そのアプリをインストールすることで動作する。なお、iOSはApp Storeの規制が強いため、非常に少ない。ごく一部のアプリのみ存在する。
エミュレーターの存在意義を考えると面倒なほど長くなるためここでは省略するが、現在のスマートフォンのスペックはエントリーモデルPC並のスペックを有しており、スマートフォンでエミュレーターが動作出来る十分な性能がある。
現在確認できるエミュレーター(メインタイトルのみ)
注意;アプリ版は原則Androidのみ、具体的な名称等はここでは出さない。
- 任天堂系ゲーム機
- ファミコン/NES PC:◎ スマホ:◎
- スーファミ/SNES PC:◎ スマホ:◎
- N64 PC:◎ スマホ:○
- GC/Wii PC:△ スマホ:×
- Wii U PC:△ スマホ:×
- N-Switch PC:△ スマホ:×
- NDS PC:○ スマホ:△
- 3DS PC:× スマホ:△
- ソニー系ゲーム機
- PS1 PC:◎ スマホ:○
- PS2 PC:◎ スマホ:○
- PS3 PC:○ スマホ:×
- PS4 PC:× スマホ:×
- PSP PC:△ スマホ:○
- PSVita PC:× スマホ:×
- Microsoft系ゲーム機
- Xbox PC:△ スマホ:×
- Xbox360 PC:△ スマホ:×
- Xbox One PC:× スマホ:×
以上が確認できるエミュレーターである。最新ハードは軒並み開発中である。
完全再現不可能な旧作ハードも多い
また、一部は解析に時間がかかっており、エミュレーターとして出てはいるが実質未完成というものも多数存在する。Cxbxの再開発版であるXboxエミュレーターのCxbx-Reloadedは、ごく最近に開発開始したため、完全対応しているソフトが少ない。特にフロムソフトウェアがXbox末期に出したXbox専用ソフトは軒並み動作不能である。これはXboxに搭載されている特殊なエンジンをフル活用しており、これを再現できなかったためとされている。なお、Xboxに最適化されていたため、後継機であるXbox360(実機)では動作しないという設定上の問題がある。
また、完全再現されていても、動作に直接影響がない範囲で不具合が発生することがある。PS2のエミュレーターであるPCSX2で、GPU(ハードウェア)をレンダリングに使用している場合、16:9(1280×720)を崩すと画像が乱れることや、一部ゲームではハードウェアレンダリングが無効で、ソフトウェア(CPU)レンダリングしか使えない現象が発生する。その場合はソフトウェアレンダリングに変更すれば問題ないが、ある程度のCPUの性能が必要になる。そのため性能の低いラップトップではまともに動かせない。したがって、CPUの性能もエミュレーターでは重要になる。
元々実機に最適化されているため、それを別の機械で動かそうと思うものなら、不具合が出るのは当然である。しかしエミュレーターでは、詳細は省略するが実機にはない機能が多数あること、グラフィックは圧倒的にエミュレーターのほうが上であるので、両方持っている人は比較して使いやすいと思ったほうを選ぶのが最適であろう。
「公式」エミュレーターが来る日
ここまで挙げたエミュレーターは全て非公式のものであり、公式のエミュレーターはほぼ存在していない。任天堂のバーチャルコンソール(VC)はある意味エミュレーターのようなものである。もっとも、メニュー画面等はないのであまり再現することもないだろう。
ソニーはPS2以前のゲームはゲームアーカイブスとしてプレイできるようになっていても、メニュー画面などは再現されていない。もっとも、単にゲームをするだけなら再現する必要などないのだろう。PS3でPSやPS2のゲームをするなら、そのセーブデータだけあれば十分だからである。
しかし、少数の実機は博物館などで動態保存するとして、どうしてもそのゲーム機でないと動かないゲームをプレイしたい人たちもいる。その人たちのためにも作って欲しいところではある。「公式」エミュレーターなら、理論上全てのゲームをプレイできるはずだからである。
しかし、ゲームメーカーもまた利益を追求する会社であるので、苦労のわりに収益が少ないと判断すれば、誰も開始しようとは思わないだろう。そのため、非公式エミュレーターが主流になる状況は変わらないだろう。もう少し待つ必要があるようだ。
以上、旧型ハード再現、エミュレーターのすすめであった。それでは、次回の記事で会おう。
リンクス岐部(LINKS-KIBE) at 20:12 Feb. 29th, 2020
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脚注
本文へ1 | ディスク無しで起動したときに出る画面。 |
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