この記事の概要を簡単まとめ!
- GPUしべ長者を行い、1060-6GBから進化を続けてきた
- 1080Tiをしばらく使っていたが、2080Tiを無事に獲得
- アフターバーナーの再設定が必要になったので再び実験することに
- FFXVベンチマークの結果を基準に電圧-クロック調整を行う
- 何故か電圧を低くするとスコアが上がった不思議現象
- 基本性能が高ければアフターバーナーの効果も高い
2019年1月に初めてゲーム用PCを建てた。その頃の最上級のGPUは1080Ti。今も最前線で戦うには十分な性能を持つそれも、当時はあまりにも高すぎるので手を出すことはできず、中古の1060-6GBからスタートした。当時は高画質を求めなかったのでこれで十分だったが、時間が経つにつれて性能が必要になったので、GPUしべ長者を行った。
これまで様々なGPUを入手しては試してその記録をつけてきた。そうして5年が過ぎて、その頃には1080Tiを使用していたが、先日ついに2080Tiを入手することに成功した。1080Tiでも性能は十分だったが、2080Tiはそれ以上に性能が高く、今後の活動で必須になることが確定した。そこで今回は2080Tiを快適に使う最適解を求めることにした。
ひとっ飛びできる目次
基本が強ければ余裕が生まれる
GPUしべ長者KIBEKIN
初期構成とアップグレード
ゲーミングPCが話題となり、その情報を追うようになったのが2019年1月頃。この頃は卒業研究も終盤であり、ほぼ終わりに近い状態であった。研究室にはPCに強い人が他にも2人存在する状態で、そこから得られる情報と、多数のサイトからの情報をもとに「ゲーム用PC」を作ることにした。ゲーミングPCとしないのは、光らせる予定がないためだ。
最初に作り上げたゲーム用PCは、お世辞にも快適とは言えないものだった。その当時の構成が以下である。
- Mainborad: AsRock H370 Pro4(Intel製第8・9世代CPU対応) 新品
- CPU: i3-8100 (4C/4T, 3.60GHz, no TB) 新品
- GPU: MSI GTX 1060 ARMOR 6GB OCV1 中古
- RAM: CFD/Panram W4U2400PS-8GC17(DDR4-2400 2x8GB) 新品
- SSD: Crucial M550 256GB 中古
- HDD: WD Blue WD5000AAKS 500GB (SATA2/3Gbps) 中古
- Power: 玄人志向 KRPW-N600W/85+ (600W 80Plus Bronze) 新品
- Case: Corsair 100R Silent 新品
もっとも当時はやっていたゲームがHITMAN(2016)およびHITMAN2、RE2、魔女おばさん、9S君を愛でるやつくらいであり、その頃はまだ存在していない伝説のレジェンドをはじめとするFPSをやることは想定していなかった。当然、配信自体も想定していない。そのためCPUもGPUも最低限のラインと言えるものを採用していた。
1060-6GBに関しては、殆どのゲームの標準設定でプレイできるくらいの性能であるが、CPUがボトルネックで十分に性能を発揮できなくなっていた。そのため少しして、GPU前提であるためiGPUがオミットされたi5-9400Fを採用し、基本性能を少し上げた。しばらくはこれで動かしていたが、後の活動において変化が現れると、これで立ち行かなくなった。
GPUの遍歴
私の活動はcleaちゃんの影響が強い。その1つがVRを始めたことである。当然のことながらVRにはマシンパワーが必要だ。1060-6GBはVR Readyでこそあったが、ギリギリ使えるレベルだった。お世辞にも快適とは言えなかったそれ、GPUのアップグレードが必要だということを身をもって知った。そうして私はGPUのアップデートに取り掛かった。
面白いことに、過去のGPU遍歴を調べると同型モデルでも別の種類を使っていたことが分かった。詳しく見ると次のように変化していったことが分かった。
- GTX Titan X(Maxwell): GM200, 技術力が900番台の頃に限界を求めて作られたコスト度外視のGPU。RAMが12GBであるのでVRをするには向いてこそいるが、GPU世代が古いので性能はいまいちである。しかもアフターバーナーによる電圧調整はGPUの世代が古い所為で行えなかったうえ、消費電力は高く、発熱も大きすぎて使うには耐えられなかった。
- GTX 1080 Ti: GP102, 今もなお前線で戦えるクラスの性能を持つ、2017年当時のNVIDIAの最高傑作。NVIDIAのGPUと言えばこれ、というイメージを確定させた存在でもある。ある意味で最も有名な存在であり、各メーカーによってチューンが行われたモデルが非常に多い。以下は、1080Tiで実際に使用してきた順の情報になる。
- ZOTAC FE: ZOTAC版のFounders Edition。所謂リファレンスモデルであり、特にこれといった変わったところはない。放熱性は低いので、水冷改造するのがおすすめである。
- Palit Super JetStream: 基本性能を少し引き上げたPalitのJetStreamシリーズの強い方。独自ファン型モデル。例によって光る仕様である。ジェットエンジンを参考にした2基のターボファンブレードによって放熱性が高く、冷めやすい。漢字の「風」がロゴにあしらわれている。後述のGameRock Premiumまではこれを使用していた。
- Inno3D X2: 国内ではあまり見かけないメーカー、Inno3Dのツインファンモデル。基本性能に変更はない。やや力不足感があったので、これは検証後に売却した。
- Palit GameRock Premium: PalitのGameRockシリーズの強い方。Palitの中で最上位のモデルである。ファンの基本構造はJetStreamシリーズに準拠し、ファンが2枚ずつの計4枚になり、これが相互に回転方向を変えることによって高効率な排熱を実現し、これにより動作音も低くなった。ベースクロック1595MHz, ブーストクロック1708MHzの圧倒的高さで、Palitの本気が現れている。これを今までメインに使用していた。
- Inno3D X4: Inno3Dのクアッドファンモデル。正面に大型ファンが3つ、上部に小型のファンが1つある。正面はチップを、上部は回路を冷却するために存在する。基本性能の他にメモリクロックも引き上げられている珍しいモデル。ただ発熱しやすく、ホットスポット95℃以上なので非常に熱い。幸いバックパネルは熱を吸い上げやすいので対策すれば使えるであろう。検証後は使いこなせることを信じていちやちゃん
とデートしたときに売り渡した。
- RTX 2080 Ti: TU102, 2018年9月に登場した、1080Tiの後継となる2000番台の最上位モデル。入手したのはEVGA RTX 2080 Ti XC Ultra(11G-P4-2383-KR)。ベースクロックは据え置きだがブーストクロックが1650MHzまで上げられている。基本性能が高いため、設定が極端に高くなければ温度も高くならない。フル回転の場合は平均70℃台、ホットスポット90℃台だがファンの最大回転数が3000rpm以上でバックパネルの熱吸収性能が高いため、冷却システムをきちんと構成すれば長持ちするはずである。
画像は面倒なので省略させてもらったが、GPUの遍歴が少し偏っているようだ。途中でTitan Xを挟んだことはその理由が私にもわからない。その後で一気に1080Tiに飛んで、しかも1080Tiだけで5個も検証した。メーカー毎に異なる特性を持つため、自分が求めるものに合わせて選択していくと満足する結果が得られるはずだ。そしてそれに満足せずに高みを目指した結果入手したのが、RTX 2080Tiである。現在のメインはこれに変更している。
アフターバーナーの再設定が必要に
MSIが公式に提供しているGPUチューニングソフトウェアのAfterburner(以下アフターバーナー)は、GPU(のチューニング元)がMSI製でなくても使用でき、NVIDIA及びAMDのGPUのほぼ全てに対応する。最近登場したIntel Arcシリーズへの対応は2023年4月に行われた。アフターバーナーはメーカーのGPU単位で設定情報を記録しており、GPUの型番が同型だがメーカーやバージョンが異なる場合は設定情報は別のものとして扱われる。したがって、1080Tiの各メーカーの異なるバージョン間において、交換する度に最適値を設定し直していた。
そして2080Tiになってからもまた設定し直しになった。これまでの1080Ti、特に使っていたGameRock Premiumとは異なり、クロックは低くなっている。また私としては基本性能の高さを生かして、長持ちさせるように運用をしたい。よって方針は以前SJ風のアフターバーナー調整を行ったときの方法を参考に、EVGA RTX 2080 Ti XC Ultra用の設定を手探りで調査していく。
アフターバーナー、準備よし!
本項より先の内容について、アフターバーナーはインストール済みであり、ベンチマークソフトにはFFXVを使用するものとして実験と考察を行う。なお、アフターバーナーによるGPUの電圧変更は、メーカー保証外の行為につき実施する場合は自己責任にて行うこと。
基準となる無調整データを取得する
まずは調整の基準となる、無調整のデータを取得する。FFXVベンチマークを起動し、そのまま何も考えずに実行する。条件は1920×1080, 高品質、フルスクリーンである。また、CPUはターボブーストを行わないi7-9700とする。この時GPU-Zを使用してGPUの各種データをログに記録し、そこからクロックを基準に温度、GPU電圧、消費電力をグラフ化したものを掲載する。その結果が以下である。
また、このデータを作成する際に使用したデータからクロックと電圧についてのみ抜き出した。すると、以下の関係があることが確認できた。
項目 | 電圧[V] | クロック[MHz] |
1 | 0.700 | 300 |
2 | 0.706 | 1350 |
3 | 0.856 | 1710 |
4 | 0.893 | 1770 |
5 | 0.950 | 1890 |
6 | 1.000 | 1920 |
7 | 1.050 | 1965 |
このデータをもとに、アフターバーナーの電圧とクロックの設定を行う。設定方法は過去記事でも行ったカーブエディタから指定電圧のクロックを変更する形で行うこととする。なお、操作方法については既に使用できるものとして解説を省略する。
ブーストクロックを基準にプロファイルを作成
使用するにあたって、通常のゲーム用、VR用、省電力用の様々なパターンを考慮して電圧-クロックプロファイルを作成する。設定も変更も簡単なので、作成した後にFFXVベンチマークを実施して、開始不可能になることや、途中でクラッシュや動作が重すぎる現象が発生した場合は適宜変更する。これを何度か繰り返すものとする。性能と省電力の両立を考慮し、基準はブーストクロックの1650MHzとする。
基本はゲームとエンコードの同時使用が多く、その場合は極端な高画質設定は行わないため、省電力に割り振っても問題ない。しかしVRは電圧が足りないとクラッシュすることを既に1080Tiで経験済みのため、VR用に個別に電圧に余裕を持たせた設定も暫定として保存しておく。また、クラッシュ対策用に省電力の限界より少しだけ余裕のある電圧設定も保存しておくことで、余計なエラーを起こす可能性は低くなるはずだ。
実験結果と考察
現在も調査中の暫定プロファイルであるが、実験結果は次のようになった。なお、無調整ベンチマークの結果のうち、最大温度は74.1℃、最大消費電力は271.0W、スコアは10932である。また、ここではグラフを掲載しない。
設定電圧[mV] | 設定クロック[MHz] | 最大温度[℃] | 最大温度比較[%] | 最大消費電力[W] | 最大消費電力比較[%] | スコア | スコア比較[%] |
800 | 1650 | 64.1 | 86.5 | 187.0 | 69.0 | 11183 | 102.3 |
762 | 1650 | 63.4 | 85.6 | 176.1 | 65.0 | 11088 | 101.4 |
750 | 1650 | 62.8 | 84.8 | 167.8 | 61.9 | 11035 | 100.9 |
912 | 1965 | 69.6 | 93.9 | 247.6 | 91.4 | 11257 | 103.0 |
ここで、この結果を確認して不思議な現象に見舞われた。無調整よりも調整後の方がスコアが高いということだ。考えられる要因は、電圧を下げたことで発熱が少なくなったことと、最近は熱対策としてCPUクーラーのファンの向いている方向のパネルを開放して運用しているため、放熱の効率は高くなっていることだ。それによってスコアが上がったと考えることもできる。
また、750mVより下の電圧で1650MHzのベンチマークを実施したところクラッシュし、限界値は750mVであることが判明した。同時にこの関係から800mVはもう少しクロックを上げても安定するはず。とはいえ現時点では性能を過剰に必要とする作業は行う予定がなく、唯一行うであろうVRに関しても設定を過剰にしなければ問題ないはずだ。しかし負荷次第で不安定になることを考えると、電圧に余裕を持たせた設定は保持すべきである。この時、指標として6mVごとに45MHzクロックが上昇していたのを発見しているが、あくまでも参考であり、安定して動作する保証はない。
なお、アフターバーナーの設定は5個までしか保持できないため、使わないプロファイルは破棄し、いいと思ったプロファイルは優先して保存する方が調整もしやすい。つまり今後も調整するつもりである。
基本性能が高ければアフターバーナーの効果も高い
以上で2080Tiのアフターバーナー調整レポートを終了する。これを入手する前の前身である1080Tiは、ちゃんとしたものは2023年1月に入手している。最初に使っていたのがPalitのSJ風、次に最上位モデルのGRPである。1080Ti自体は2017年当時の技術で作られた最高傑作であり、登場から6年が経っても前線で戦うには十分な性能を持っている。導入時は1060-6GB, Titan X(Maxwell)との違いに感動し、「NVIDIAの伝説」を身をもって体験した。しかも導入したときに配信用の1050Ti(M)を搭載したラップトップが起動不可能になったこともあり、運が良かった。
だが私は暇さえあれば1080Ti以上のGPUも見ていた。とはいえ現在が1080Tiである以上、候補は2080Ti以上になることは確定である。GPUのアップグレードは、検討するGPUの1つ前の世代で数字が10小さいモデル、Tiがある場合はTiがあるもの同士で比較して、それがどれくらい強いかを比較して検討する。2080Tiを検討する場合は1つ前の世代でTiがつく、1070Tiが対象であるが、既に私は1080Tiを使用していたのでそれと比較している。性能としては40%ほど強くなるとのことであった。
本来はこれらのパーツは中古でさえ高値がつくが、今回入手したEVGA RTX 2080 Ti XC Ultraは過去に動作確認済みだが現在は環境がないということで、未確認ジャンク扱いで安く買い叩いたものだ。これにより基本性能がまた大幅にアップし、過剰にGPUを回さなくともゲームと配信を快適に行えるようになった。そこにアフターバーナーで調整をかけることによって、より効率的にGPUを使うことができるようになる。GPUの寿命の延長、発熱が少なくなることによる温度低下と安定化、消費電力を少なくして節電、チューニングはやるとやらないでは様々な部分で差が出てくるので、もし調整に時間をかけることに抵抗がなければ、じっくり探してアフターバーナーの効果を高めていこう。
以上、RTX 2080Tiレポート:アフターバーナーで最適化するまで、であった。GPUの最適化をすれば、熱も消費電力も抑えられて完璧になる。
KIBEKIN at 00:00 Aug. 8th, 2023
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