【PCに優しくする】”GV-US2C/HD”使ってみた!~ハードウェアエンコードの実力~ | Raven's Articles

【PCに優しくする】”GV-US2C/HD”使ってみた!~ハードウェアエンコードの実力~

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この記事の概要を簡単まとめ!

  • 映像出力が可能な機器の映像をPCに取り込むキャプチャーボード
  • HDMIが主流なため、殆どの製品がHDMI対応になっている
  • 低遅延・高負荷のソフトウェアエンコード型と中遅延・低負荷のハードウェアエンコード型の2種類がある
  • IODATA製のハードウェアエンコードタイプ、GV-US2C/HDを導入したので検証してみた!
  • 通信規格はUSB2.0だがType-Cを採用、バスパワーなので外部電源はほぼ不要
  • 4Kパススルー機能標準搭載、出力はFHDまで可能になっている
  • 映像と音声はソースを個別に取り込むことで音声遅延をほぼ0にすることが可能
  • 単体でもSDカードを用いて録画ができ、SDカードリーダーにもなる
  • 同社のGV-USB3/HDとどう違うのかを比較する
  • 60FPSが限界値であるが、そもそも60FPS以上対応プラットフォームが少なすぎるので十分
  • 安いPCでも、強いPCでも使えるキャプチャーボード

妹ちゃん=無音烏のVTuber活動をサポートするために、私は検索ワードと検索オプションを利用して色々な情報を収集し、実践的な部分ではclea氏やうーちゃんの配信を観て、そこから使えるものを無音烏に教えて、あるいは私が設定して使用している。VTuberを始めるのは遅すぎたが、先駆者がいるお陰で引っかかるであろう部分については今のところ、悪戦苦闘しながらも何とか切り抜けることができている。

ただ、PCに対する負荷は下げにくい。単体PCでの配信を行う人は多いが、その場合には最低限のGPUとして、少し前ならGTX1070-Ti以上、現在はRTX2070S以上がリソースの関係で必要で、しかし予算の都合でそこまで用意できなかったり、そもそも配信を考えていなかったためにそれより低いパーツを採用しているということも少なくない。その場合に使われるのが、2PCによる分離配信である。未だに私が実際に行っているものである。

これまでは10年以上も前の世代のPCを配信に使用していたが、1050-Ti(M)を搭載したラップトップを入手したことで、3Dモデルを使用する余裕が出来た。だがそれでも負荷が気になり、今まで使用していたキャプチャーボードを、ソフトウェアエンコードからハードウェアエンコードに変更した。キャプチャーボード界の有名選手といえばIODATA、Type-C接続のGV-US2C/HDである。これまで使用していたGV-USB3/HDとどう違うのか、実際に使用して比較していく。

ハードウェアエンコード型はもう「高い買い物」ではない

キャプチャーボードと配信・動画制作

映像を送る方法の変遷

映像を送る方法は様々である。デジタル対応前のアナログ放送時代のテレビの多くはRCAケーブル、コンポーネントケーブルを使用して映像を取り込んでいた。RCAはコンポジットとも呼ばれ、これは映像の1本と音声の2本で構成される。コンポーネントは映像のみの3本で、別で音声線を引く必要がある。一般的な価格のブラウン管テレビならRCAで、ハイグレードモデルならコンポーネントに別で音声を繋いで出力していたのではないだろうか。

現在はテレビの放送はデジタルに一本化されている。インターネットと同じように電波を受信して映像を出力するものだが、こちらは天候に影響されやすいのが難点である。テレビの方はそれに合わせた形で、HDMI出力に対応する。今では殆どのテレビはHDMIを標準搭載し、旧来の方式となったRCAないしコンポーネントはほぼオミットされていることが多くなった。とはいえ未だに使用している機器も多いわけで、特に業務では旧型機器を使っていることも多い。なのでメーカーによっては最低限それらの接続形式も残しているものもある。

ところで、ゲーム機についてはどうかを見ていく。接続形式についてはコンシューマ第7世代1)任天堂はWii, ソニーはPS3, MicrosoftはXbox 360を発表した。がちょうど切り替え時期である。第6世代以前のものはまだHDMIが制定されていなかった頃なので、映像・音声出力は各ハード専用の端子からRCA端子のオスに変換するケーブルを使用し、それを直接テレビのRCA端子のメス(差込口)に差す形で出力していることが多かった。これが第7世代になると、WiiはAVケーブル(コンポーネント)のままだったが、PS3は標準でHDMIに対応するようになった。Xbox 360は初期のモデルはHDMIを持たず、アメリカで2007年8月頃から発売のPremium System(=スタンダードモデル)にHDMIが搭載されている。これは後に日本でも発売される。なお、この時点ではまだテレビ側がHDMIに対応するものが少なかったため、従来方式であるAVケーブル(RCAやコンポーネント)でも出力可能になっている。PS3の場合はPS2のAVケーブルをそのまま流用できる。

これが第8世代となったとき、Wii UにはようやくHDMI端子が搭載された。そしてPS4とXbox Oneはどうなったかというと、HDMI端子に完全に移行し、RCAないしコンポーネントは完全に廃止された。この頃には既にHDMIに対応する液晶テレビが一般化している時期でもあった。Xbox OneについてはソニーがPS2から採用していた光デジタル(S/PDIF)を搭載するなど、出力端子を完全に切り替える流れになっていたことが分かる。

コンバータの概念

現在はHDMIが主流である。これは映像を出力できる電子機器の殆どで共通である。PCについては主に4規格で、VGA, DVIが昔から使われてきた映像出力端子となり、HDMIとDisplayPortが現在主流の端子である。傾向としてはVGA, DVIは廃止する予定でいたのだが、思うように進まずに現在もマザーボード・GPUとモニタで継続して採用されている。殆どのPCはHDMIで出力しているのが一般的だが、最近はUSB Type-Cの登場で、それとDisplayPortの技術を融合した”DisplayPort Alternate Mode”によって映像出力を行うことも多くなったようだ。

人によってはテレビの持ちが良いので、未だにHDMIを持たずRCAないしコンポーネントのみのテレビを使用していることもあり得る。その場合、HDMIしか映像出力がないなら、そのテレビには映像を送れないことになる。しかし現状の流れからして、今後新しく発売されるであろう電子機器の殆どはアナログ出力を搭載することはないので、そのままではどうすることもできない。

しかしそれを解決するのが「変換技術」である。A/D変換ないしD/A変換を行って対応させるのは電子機器間では当たり前のことで、それがHDMIでも例外なく行われる。かつてはHDMIをRCAないしコンポーネントに変換する方が需要があり、それが殆どであったが、現在はRCAないしコンポーネントをHDMIに変換する装置も多数存在している。それらは一般に「コンバータ」と呼ばれるものだ。これを利用することで、理論上は出力形式と入力形式が一致しなくても無理矢理に対応させてしまえるのである。当然のことながら、ある程度の映像劣化と遅延は避けることができない。それを理解した上で使用することが重要である。なお費用としては、テレビを新規に買うより明らかに安上がりである。或いは強制的にHDCPを外す目的で使用する人もいるという、あくまでも噂である。

HDMI2AVコンバータ
HDMI2AVコンバータの一例。外部補助電源が必要なことが多い。このようにしてD/AないしA/D変換を行えるようになっている。

PCに映像を取り込むキャプチャーボード

PCの映像を出力するのであれば、マザーボードかGPUの任意の映像出力端子に、テレビかPC用のモニタの出力端子を合わせることで映すことができる。では、PCの映像以外のものをPCに取り込んで出力するにはどうしたらいいのか、となるはずだ。通常、PCは出力には対応するが、入力には対応していない。といっても普通はそのような使い方を想定しないので、対応していなくても当たり前のことであるが。

それを実現するために作られたのがキャプチャーボードである。これは指定の出力端子に合わせた入力端子とUSBの組み合わせになっており、テレビ・モニタとは直接繋ぐか、分岐ケーブルを使ったり専用の装置を使って分配する、あるいはキャプチャーボード自体が分配器となり、それに別のケーブルを差してモニタにつなぐことで、PCに取り込みつつモニタにも同時に表示することができるようになる。

通常はゲーム機の映像をPCに取り込む用途で使用する。その場合の端子はやはり第7世代を基準として、それより下ならAVケーブル対応、それより上ならHDMI対応のものを使用する。最近は別のPCの映像と音声を取り込むためにも使用することがあり、2PCによる分離配信または録画を行うことが目的となる。その場合はHDMI対応になることが殆どである。このことは以前に実際に行って記事にしている




エンコード方式:ソフトウェアエンコードとハードウェアエンコード

キャプチャーボードのエンコード方式は2種類ある。PC側で処理を行うソフトウェアエンコードと、キャプチャーボード自体がエンコードを行うハードウェアエンコードである。傾向としてはソフトウェアエンコードが製品として比較的多く存在し、ハードウェアエンコードはまともに使えるものは昔は非常に少なく、最近になって基本スペックが向上したものが出てきて、今では両方とも使用の選択肢に入るものとなっている。

多くにとって一般的であり、価格もそれほど高くないのがソフトウェアエンコードである。簡単なものであれば、Amazonで2000円以下で買えるもの(中国製)も存在する。これでもおそらく遅延はほぼないはずである。そうではなく、ちゃんとしたメーカー製を考えた場合、USB3.0(3.1)接続、パススルー機能を搭載したものは1万円を超すことは当たり前で、上位のType-Cを採用していたり、FHD以上で60FPS映像に対応するモデルだと3万円近くまですることも珍しくない。高い買い物になりがちである。その分、エンコードをPCに一任する関係で遅延発生は殆どなく、エンコード形式も選択できる。PCのスペックを求められる分、綺麗な映像を出力することができるため、石油王プレイヤーが好んでいるタイプである。

その対極に位置する、ハードウェアエンコードはキャプチャーボード自体がエンコードを担当する。エンコードしてからPCに映像を伝達するので、PCはエンコードを行う必要がない。これによりPCへの負荷が圧倒的に低くなるので、リソースが貧弱なPCでも「配信のみ」はこなすことができるようになる。これにVTuber必須ツール(3Dモデル表示系)を同時に動かすとなると難しいものになるが。この形式もかつては遅延が酷く、それでいて高額すぎて使う人は少なかった。それも現在は接続規格の更新によって、パススルー機能に対応したものが普通となり、ソフトウェアエンコードと同じ価格のものが増えている。PCのスペックに殆ど依存せずに映像を取り込めるこれは、配信の敷居を低くしているので入門用としては丁度いいものになるはずだ。

キャプチャーボードといえばIODATA

電子機器を製造するメーカーは世界中に存在するが、日本においてキャプチャーボードの有名メーカーはIODATAで間違いない。正式な企業名は株式会社アイ・オー・データ機器で、石川県金沢市桜田町3-10に本社を置く。モニタ・ストレージ・Wi-Fiルーターなどで多くの製品を展開しており、特にモニタについてはお世話になっている人も多いのではないだろうか。

そこもAVケーブルの頃からキャプチャーボードを販売しており、S端子/RCA対応のGV-USB2と同型上位モデルGV-USB2/HQは、多くの人が世話になったものとして有名で、「配信初心者案内サイト」でもまず真っ先に紹介されるほどである。これは第7世代以前のゲーム機の映像を取り込む場合は必須である。では現在のゲーム機やPCからの映像はどうなのかといえば、当然対応したものを販売し、接続規格もしっかり合わせてある。HDMIでの有名機は、GV-USB3/HDである。上位モデルはGV-USB3/HDSである。これらはソフトウェアエンコードでは入門機として最適で、上位モデルならベテランユーザーでも使えるもので、これも案内サイトで取り上げられることが多い。

だがソフトウェアエンコードではきついと考える人も多い。それに応える形で、IODATAはハードウェアエンコードのキャプチャーボードを新たに販売する。HDMI専用、USB Type-C 2.0接続のGV-US2C/HDである。2019年6月末の発売であり、技術的観点から今まではそれをクリアできる技術がなかったために難しかったのであろう、最近の発売である。新品だとGV-USB3/HDと変わらないほど高いが、中古品なら価値が下がっているのか安く入手することができた。今までGV-USB3/HDを使っていて、負荷軽減のためにこれを使うことにしたわけだが、果たしてこれはどれくらいの実力を持ち、ソフトウェアエンコードとどれほどの差があるのか。スペック的にはほぼ同じであるそれと比較しながら、使い方や画質について詳しく見ていくこととする。

低スペックの救世主、GV-US2C/HD

GV-US2C/HDを使うにあたって、使用するPCはHasee KINGBOOK T65とする。これはGTX 1050-Ti(M)も搭載しているのでスペックとしては十分で、ハードウェアエンコードを使うほどではないのだが、現在のメイン配信用PCとして使用しているため、これで検証する。また、いつも通り無音烏協力の下検証する。




基本調査:仕様と外見

入手したらまずやることは仕様と外見を調査することである。仕様は公式サイトから確認すると、以下のようになっている。

  • 商品名:GV-US2C/HD
  • 基本仕様
    • インタフェース:USB 2.0 Type-C, SDカードスロット(Class2~10, UHS-I, スピードクラス1~3, 最大容量128GB, FAT32/exFAT対応)
    • 映像入力・出力端子:HDMI(HDCPパススルーのみ対応)
    • その他の端子:ヘッドセット端子及びパーティーチャット端子(両者とも3.5mm 4極ミニジャック、入出力対応)
    • エンコード方式:ハードウェアエンコード
    • 外形寸法:約129(W)x27(D)x74(H)mm (コネクタ及び突起物は含まず)
    • 重量:約130g
    • 電源:USBバスパワー(DC 5V)、ACアダプタ(別売り)
    • 添付ソフト:”I-O DATA HD Live Capture”, CyberLink “PowerDirector 15 for I-O DATA”(ダウンロード版、ユーザ登録必須)
  • 記録仕様
    • 保存形式:PC録画 MPEG-4 AVC/H.264(MP4), 単体録画 MPEG-4 AVC/H.264(MOV)
    • 画像サイズとフレームレート:1920x1080p(60fps/30fps), 1280x720p(60fps), 720x480p(60fps)
    • ビットレート:PC録画 30/24/18/16/12/8/4/2Mbps, 単体録画 20/16/12/8/4/2Mbps
    • 音声保存形式:AAC, サンプリングレート:48kHz, ビットレート:PC録画 128kbps, 単体録画:256kbps
    • 静止画(PC録画のみ):保存形式 bmp/jpeg/png/tiff, キャプチャサイズ:1920×1080/1280×720/720×480
  • HDMI仕様
    • 対応入力解像度:3840×2160(4K), 1920×1080, 1366×768, 1280×720, 720×480, 640×480 フレームレート:60/30/24fps
    • 対応出力解像度:1920×1080, 1366×768, 1280×720, 720×480, 640×480 (いずれもパススルー出力) フレームレート:60/30/24fps
GV-US2C/HDの外観
GV-US2C/HDの外観。見た目には小さな箱である。この中にエンコードシステムがあり、PCの負荷が抑えられるようになっている。

外見は小さな箱である。GV-USB3/HDと比較すると、横置きで使うことが前提のものとなっている。向こうは立てて使うことができるようになっている。おそらくGV-US2C/HDでも立てて使うことはできるものではあると思われるが、接続端子とSDカードを挿入できる関係からそのまま横置きにしておく方が安全である。

本体裏面にはシリアルナンバーがある。これはIODATAのサイトでダウンロード専用で提供されている、”I-O DATA HD Live Capture”, CyberLink “PowerDirector 15 for I-O DATA”をダウンロードする場合に必要な情報である。その前にユーザー登録も必要であるのだが、そこまでする価値は正直薄い。おまけ程度に考えておけばいいだろう。

使用方法の解説:OBSで使用する

現在のキャプチャーボードは、専用のドライバをインストールすることなく使用することができるようになっている。IODATAから出ているものは基本的にそれであり、入手したらすぐ使えるものである。昔のキャプチャーボードは専用のソフトでなければ動かないなどの制約があったと言われているが、現在はその制約はほぼ存在しない。よってGV-US2C/HDを多くのユーザーが利用しているOBS Studio(28.0以上を前提)で使用する方法を書いていく。

接続について:必ずしもType-C同士でなくてもよい

GV-US2C/HDはインタフェースにType-Cを使用しているため、使用するにあたって両端がType-Cオスでなければならないと思っている人はおそらく存在すると思われる。しかしその必要はない。仕様から、Type-Cでこそあるが通信規格はUSB2.0であることが分かっており、Type-C同士で速度を出す、ということは一切考えなくていいのである。USB2.0の通信速度は480Mbps(実効速度60MB/s)、給電能力は5V/500mAであり、これに間に合うように本体設計がされているからである。そのため、余程USB機器を挿しているのでなければ、バスパワーで動作するようになっている。外部電源が必要なら、DC5Vを給電すればよい。



USB2.0と聞いて、転送速度に不安を覚えた人はいるはずだ。何故ならソフトウェアエンコード型のGV-USB3/HDはUSB3.1 Gen 1(USB3.0)であり、転送速度が明らかに違いすぎるからだ。しかしGV-US2C/HDはハードウェアエンコードなので、先にエンコードを行ってからPCに映像を転送している。つまり映像が(内部の設定である)mp4に既にエンコードされた状態で転送されるので、通信速度(帯域)がそこまで必要ないのである。インタフェースこそType-Cになっているが、だからといってPC側もType-Cで接続する必要はなく、従来のType-Aオスで接続しても十分動作するものである。そのため、Type-Cを持たないPCでも問題なく使用できる

なお、ハードウェアエンコード故にPC側での映像遅延は若干ながら存在する。それについてはパススルー機能によってモニタに映すことで解決する。また音声遅延については、後述の設定によって解決することができるので心配しなくていい。

OBSソース設定:映像と音声は別々でセット

まずはGV-US2C/HDをPCに接続し、その状態でOBSを開く。そして次の手順でソースを追加する。

  • 映像キャプチャデバイス(映像を取り込む)
    1. 「ソース」タブの下側メニューの追加(プラスマーク)から「映像キャプチャデバイス」を選択する。新規作成で”GV-US2C/HD”またはそれとわかる名前を入力し、OKをクリックする。
    2. プロパティから、次の部分について設定する。それ以外はデフォルト。
      • デバイス名:I-O DATA GV-US2C/HD
      • 解像度/FPSタイプ:カスタム
      • 解像度:1920×1080, 1366×768, 1280×720, 720×480, 640×480から任意の値を選択。基本的に1920×1080で問題ない。
      • 音声出力モードは無視していい。
  • 音声出力キャプチャ(音声を取り込む)
    1. 「ソース」タブの下側メニューの追加(プラスマーク)から「音声出力キャプチャ」を選択する。新規作成で”GV-US2C/HD_Sound”またはそれとわかる名前を入力し、OKをクリックする。
    2. プロパティからデバイスを「マイク(I-O DATA GV-US2C/HD)」にする。
  • 設定完了後、映像キャプチャデバイス側の音声はミュートにしておくこと。
OBSでのデバイス設定(映像・音声)
OBSで映像と音声で個別に設定を行う。映像キャプチャデバイスで一括設定したくなるところだが、後述の音声遅延問題を解消するために音声は別で指定する。

OBSは用途と接続しているデバイスの仕様に合わせて、様々なソースを追加することができるようになっている。本来であれば映像と音声の遅延も考えて、付属のソフト(I-O DATA HD Live Capture)を使うべきなのであろうが、市販のキャプチャーボードにほぼ対応しているOBSはソースとして追加でき、設定が間違っていなければ問題なく映像を取り込むことができる。前述の通りパススルー機能を搭載するため、映像遅延についてはモニタに表示できるのであれば考える必要はなくなる。

音声出力のルール:PCの場合は工夫が必要

キャプチャーボードの使用想定は、第7世代以降のHDMI出力を持ったコンシューマゲーム機である。なので本来はゲーム機の映像をPCに取り込む目的で使用するものとなる。だが分離配信によって、PCの映像を別のPCに取り込む場合には、この設定に少々癖がある。PCにおける音声出力のルールとして、仮想オーディオデバイスを含めた音声出力が可能なデバイスを1つ選択して、そこから音声を聴くことになっている。この際、物理デバイスとして挙げられるのが内蔵スピーカーや3.5mmヘッドホンジャック(3極ないし4極)、USB接続のヘッドセットマイクなどである。これらから1つを選択して音声出力を行うのである。

ここでキャプチャーボードを接続している場合、それがパススルーでモニタに映しているか否かに関わらず、音声出力先の1つとして認識される。キャプチャーボードをUSB接続している側のPCに音声を出すには出力先としてこれを指定する必要があるが、実はこの部分で初心者が詰まりやすい部分となる。というのも、モニタやヘッドホンで音声を聴きながら配信するPCにも音声を流すことをしたいはずだが、PCの仕様上どちらか一方にしか音声を流すことができない。この仕様の複雑さのせいで音声が出ないと困っている人が多いはずだ。

これを解決する手段は、キャプチャーボードを繋いでいるPCの音声出力先はキャプチャーボードにしてしまうことである。つまり、タスクバーの右下にあるサウンドを”GV-US2C/HD”にしてあげればいいのである。ただこの方法だと映像は遅延しないが音声は遅延するので、あまりやりたくない方法であった。それでも音声を取り込めなければ意味がないので、なくなく音声出力をこれに設定し、映像を取り込む方のPCで音が聞こえるようにしていた。



以前は音声遅延をどうしても解決できずに妥協していたが、その解決方法は実に簡単だった。先に設定した通り、映像と音声を別々にソースとして取り込むだけで解決できる。多くの人は映像キャプチャデバイスのプロパティの下の方にある、「音声出力モード」から音声を出したくなるはずだが、この方法では何故か遅延する。それに対し単体の音声として取り込んだ場合は無遅延でPCに取り込めるのである。この方法についてはインターネット上で公開されている情報で最も簡単に改善できるものだった。

なお、この設定をしたら音声は取り込んでいるPCから聴くことになるため、基本的にゲーム内VCを利用することは難しくなる。もしDiscordなどで音声通話を行うのであれば配信側のPCで起動して使用することになるので、そのあたりの準備をしておくことが必要になる。

ここまで設定が完了すれば、ようやく使用準備が整う。次項から実際に使用して、その実力を見ていく。

GV-US2C/HDはどこまで綺麗に見せられるか

実際にGV-US2C/HDを使用して配信や録画を行い、その結果を確認していく。検証においてはソフトウェアエンコードとの比較も行い、どれくらいの負荷が軽減できるのかも確認していく。

確認1:1920×1080はどれくらい綺麗に映るか

まず確認するのは、縮小しないで表示した場合の綺麗さである。最大で1920×1080, 60FPSで出力可能であるが、それが無劣化で出せるかどうかという点を確認する必要がある。最近のキャプチャーボードなら心配はないが、劣化していると使う意味がないからだ。また検証するのであれば、画面の動きがあるゲームでブロックノイズが発生するかどうかも見なければならない。ということで、最も検証しやすい録画で確かめることとした。国鉄JR East Train Simulatorを検証するためのゲームとして、録画したものの一部を掲載する。この時の録画設定として、NVEnc H.264を使用する。それぞれの設定はVBRで、試験的に以下の設定で行った。

  • ビットレート:808kbps, 最大ビットレート:2500kbps
  • 音声ビットレート:192kbps
  • キーフレーム間隔:自動(0s)
  • プリセット:p7: slowest(最高品質)
  • チューニング:超低遅延
  • マルチパスモード:2パス(フル解像度)
  • プロファイル:high
  • Look-ahead: OFF
  • 心理視覚チューニング:ON
  • GPU:0
  • 最大Bフレーム:2

この設定に関しては、まだ最適値が分かっていないタイミングでの「仮の最高設定」であるため、実際にはもっと別の最適な設定があると思われる。それは別として、実際の録画が以下である。

 

全体が長すぎたため1分にカットしたこれだが、この設定で確認しても画像が乱れているようには見えない。そのため、一般的なソフトウェアエンコードのキャプチャーボードと同等の画質を(OBS側で設定することで)出力することができる。そのため、普通に使用するには問題ないことが判明した。

確認2:実用設定で録画した場合の負荷

全画面検証でエンコード性能は問題ないことが判明した。通常の配信や録画においては全画面で表示することはあまりなく、キャプチャーボードからの画面をある程度縮小して位置を決めた上で、3Dモデルを基本として字幕やコメントを配置して表示するのが一般的である。つまり実用的な状況で使用する場合についても検証する。特にここでは使用時の負荷について確認していく。ここでの録画設定は実用的な設定に戻している。

  • ビットレート:2000kbps, 最大ビットレート:3000kbps
  • 音声ビットレート:192kbps
  • キーフレーム間隔:自動(0s)
  • プリセット:p5: slow(高品質)
  • チューニング:高品質
  • マルチパスモード:2パス(フル解像度)
  • プロファイル:high
  • Look-ahead: OFF
  • 心理視覚チューニング:ON
  • GPU:0
  • 最大Bフレーム:2
  • Source Record設定:エンコードタイプ:x264
    • レート制御:VBR
    • ビットレート:800kbps
    • CRF:0
    • キーフレーム間隔:2s
    • CPU使用のプリセット:veryfast
    • プロファイル:high
    • チューン:(なし)
    • x264オプション:なし

負荷調査のためSource Recordを使い、タスクマネージャーを同時に録画している。以前から判明しているNVEnc利用不可バグによってCPUエンコード録画となる関係で、CPU負荷は通常より20%前後高くなってしまう。それを踏まえた上で、1つにまとめた動画が以下である。

 

実際のCPU使用率は25~35%台であることを前提として、GV-US2C/HDで実際の配信を想定して構築すると、動画中の右に示した負荷になった。また、動画中には表示できていないが、レンダリング平均時間は許容範囲内である15~20ms以内に収まっており、レンダリングラグ、エンコードラグも殆ど発生しなかった。OBSに配置する要素によっては負荷が上昇してしまう(特にswf2js.js)が、それ以外の問題は特に発生していない。この点を考慮すれば、かなり安定して使用できることが分かる。




確認3:GV-USB3/HDとの比較

比較対象としてソフトウェアエンコードであるGV-USB3/HDを挙げる。これはAmazonを基準として2017年9月21日に発売開始となっている。インタフェースはUSB3.0(5Gbps)で、本体へはType-Bで接続するという珍しい形式である。発売時期としては2年の差があるこれだが、同社製品であるのと、エンコード形式の違いがあるので、比較対象にするにはちょうどいいものとなる。そこで確認2の時と同じ条件で、負荷試験を行った。その動画が以下である。

 

負荷は見たところ、ほぼ同じように見える。映像そのものも問題なく出力できているため、一般使用には問題ないことはわかる。しかしそれはゲーム機に使用する場合であり、別のPCから映像を出力する場合には問題が発生する。それが微妙な音声遅延である。GV-US2C/HDでの場合、音声遅延は音声出力キャプチャとして別ラインで0にすることができるが、GV-USB3/HDは音声単体を音声出力キャプチャで認識することができず、音声の別ライン出力設定が不可能になっている。

これにより映像キャプチャデバイスからの音声出力設定をしなければならないので、遅延を避けることができない。またPCの音声出力のルール上、キャプチャーボードに対して音声を出力するようにPCの設定を変えなければならないので、遅延のない音を聞くことができない。同時に配信・録画でも音声が遅延するわけで、その場合は映像に対して遅延フィルタをかけるなどしてわざと遅らせ、映像と音声が一致するように調整する必要がある。ただこれは感覚調整のため、非常に合わせにくいものとなる。その点を考えた場合、GV-USB3/HDは2PCによる配信・録画については性能面で問題ないが、音声遅延において問題になることがネックとなり、あくまでもゲーム機用の域を出ないものになるだろう。つまりスペックに余裕があったとしても、この点でGV-US2C/HDを使う理由になるということでもある。

FHD, 60FPSの制限:それ以上を要求するプラットフォームは少ないので問題ない

ハードウェアエンコードでもソフトウェアエンコードでも、出力可能な映像の規格が固定されていることが多い。そのほとんどは1080p60HD(1920×1080, 60FPS)、所謂FHDが最高設定であることが多い。今ではそれ以上の規格となる2K(2560×1440), 4K(3840×2160), 8K(7680×4320)も出てきてはいるが、これらはあくまで薄型テレビ向けの規格となる上に、多くの配信ないし動画投稿プラットフォームはそもそもこれらの規格に対応していないことが殆どである。大抵の最高設定はFHDまでで、一部のプラットフォームではそれ以上の設定が可能であるとの噂もあるが、定かではない。

GV-US2C/HDもその例に漏れない。パススルー搭載で入力・出力自体は4Kまで対応しているそれも、PCに取り込む方の出力はFHDが最高設定となっている。そもそも4Kを必要とする場面は一体どこにあるのかと問いたくなるが、主流の動画コンテンツの上限がFHDであるというのならこれで十分なのである。FHD以上はもはや贅沢品であり、過剰である。ゲームでも一部4K対応しているものはあるにしろ、その場合は運用に石油王クラスのPCを要求されるので、現実的とは言えない。それならモニタのリフレッシュレート向上に投資した方がいいだろう。その場合は結局PC自体のアップグレードも必要となるが。

余談:単体運用可能で、SDカードリーダーにもなる

GV-US2C/HDは単体録画に対応する。この場合、電源をOFFにした状態で本体右側面にある”REC MODE”を”CARD”に合わせることで単体録画モードとなる。この状態でSDカード(最大128GB対応)をセットし、HDMIを接続している状態で上面の録画ボタンを押すことで録画が開始される。これについては余っているSDカードがないため単体での録画が検証できない。

これは実際に試してもらうとして、もう1つの機能として、”CARD”モードでPCに接続した状態で録画ボタンを3秒長押しすると、カードリーダーライターモードとなり、SDカードスロットがなくてもそれ自体がSDカードを読み込みすることができるので、その場でPCに取り込んで再生も可能となっている。ただし、読み込みがうまくいかない場合があるようだ。これは環境によるものと思われる。

どちらにしても、加工やアップロードを行うにはPCが必須であることには変わらない。だが単純に低スペックなPCでも問題なく使用でき、単体での録画も可能であるので、手元にPCがなかったとしても、GV-US2C/HDを接続してSDカードを入れておけばその場ですぐ録画を開始できる。PCに負荷をかけずに録画できるという部分でも評価できる点である。

安いPCでも、強いPCでも使えるキャプチャーボード

以上でGV-US2C/HDの検証は完了した。エンコード形式が異なるが発売時期から先代となるGV-USB3/HDで発生していた懸念点(特に音声遅延)が改善されており、その点だけを考慮しても十分な買い替えの理由になる。エンコード形式もハードウェアエンコードである関係から、スペックの低いPCでも公式からダウンロード形式で配布されているソフトウェアを使えば低負荷で配信・録画できるようにもなる。また、多くの利用ユーザーがいるOBSでも使用可能なため、VTuberが使用するにも助かるものとなる。CPU・GPUリソースを消費しがちなものを同時使用する機会が多いので、OBS自体の負荷を低減させ、それによってレンダリングラグ、エンコードラグによるドロップフレームの発生を防ぎ、なおかつそれらのソフトにリソースを回す余裕もできる。この点でも使う理由になるというものだ。

そう考えたとき、これは安いPCでも、強いPCでも使えるキャプチャーボードであることが言える。石油王ならキャプチャーボードはそもそも必要ないが、全員が全員、石油王ではない。大抵がミドルクラスだ。それを前提として考えた場合、過剰な負荷をかけずに運用することも大事である。それはパーツを長持ちさせる意味でも重要で、私の主張である「負荷分散」を実現する上では欠かせないものとなる。PCパーツは消耗品であるという根底をどうしても人は忘れがちだが、それを大事にするという意味ではハードウェアエンコードも立派な手段の1つに数えられる。

また、死のコロナウイルス情勢によってテレワーク用に購入したはいいが使いきれず、或いは用済みになって手放している人もいるようで、中古市場では状態が良く、あまり酷使されていないが新品よりも圧倒的に安いものが出回っている。基本価格は2万円台だが中古ならその1/2~1/3まで下がっていることが多いので、新品に拘らないならお手頃価格で入手できる。もしハードウェアエンコードに興味を持ったのなら、このGV-US2C/HDは確実に選択肢になる。まずは使ってみて、それからどうするか決めるといいだろう。使う人を選ばないことは確実だからだ。

 

以上、”GV-US2C/HD”使ってみた!~ハードウェアエンコードの実力~であった。次は何の記事で会おうかな?

 

KIBEKIN at 00:35 Nov. 19th, 2022


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脚注

脚注
本文へ1 任天堂はWii, ソニーはPS3, MicrosoftはXbox 360を発表した。
RA管理人
RA管理人。名前は時にない。かつてこのサイトを管理していた前任者はどこかへ消えてしまった。


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