この記事の概要を簡単まとめ!
- VR-SNSは数多く存在し、それぞれは異なる「得意分野」を持つ
- 多くのVR-SNSは未だに外部ツール依存であることは否めない
- 「そのVR-SNS内で殆どが完結する」があれば色々楽になる
- チェコのSolirax社が開発した”NeosVR“はその理想を叶えた
- Steam版もあるが公式インストーラからインストールを推奨、登録はNeosVR内からも行える
- チュートリアルは存在こそするが簡易であり、実際に動く方が覚える
- モデルインポートはVRMは変換が必要、Blender3.0以上で特定スクリプトが必要
- 毎週火曜日22時開催の初心者案内デーにも参加してみた!
- 主催のオレンジ氏と周りの参加者(手伝い)と共に動かして、遊んで、楽しんで、覚える
- NeosVRに不可能は殆どない、そしてこれからも発展していくVR-SNS
VRM 1.0が正式に発表された。VRMコンソーシアムによって制定された3Dモデル向けファイル形式であり、プラットフォームに依存しないことを目標に設計されている。VRoid Studioは出力がVRMであり、VRMに対応するVR-SNSは現時点ではclusterとVirtualCastである。そのほかではVSeeFace, RibLA Broadcast, VMagicMirror等の3Dモデルを表示してWebカメラなどで動きをリンクさせるソフトウェアに対応する。これまでβ版として展開してきたVRMもいよいよ本格展開の準備が整ったようだ。
ただVR-SNS全体で見れば未だにVRMに非対応なところは多く、その場合はFBXを採用していることが殆どである。VR-SNSの最前線となるVRChatもFBXであり、VRM使用者は変換を余儀なくされる。その方法は有志によって解説と必要なツールが用意されているので、とりあえずは何とかなっている状態ではある。とはいえ、最適化や専用調整にはUnityやBlenderが必須であることは変わらない。
そんなVR-SNSも、思いもよらない国で生まれたものがあった。チェコにあるSoliraxが開発・運営を行う”NeosVR”がそれである。VR-SNSはアメリカか日本か、そんな常識を破壊するかのような存在であるこれだが、実は2018年5月4日からサービスが開始しているので、VR-SNSとしてはわりと古参である。最近、このVR-SNSが「何でも出来る」という点で注目が集まっているようで、その内実調査のため、実際に潜ってみることにした。
「VRに不可能はない」に少しずつ近付いている
多種多様なVR-SNS
VR-SNSのそれぞれの得意分野
VR、一般にはメタバースという名称の方が知られているであろう。検索ワードにVR-SNSやその名前、VRデバイス、或いはこの記事のリンクを貼ったツイートから来ている人については、このことはあえて解説する必要もないくらいには基礎知識は知っているものと思われる。知らない人は自力で検索してもらうとして、国内の大手携帯三大キャリアはそれぞれメタバース事業への投資を行っており、その他の企業もコンテンツ開発・事業展開を進めている。これによりある程度はVR-SNSプラットフォームが整ってきている状況であるが、正直まだ発展途中である。
ところで日本において主要なVR-SNSは、VRChat(VRC), VirtualCast(VCas), cluster, XR WorldないしDOORが挙がってくるものと思われる。VRCは現状、Quest版も存在するが実質的なPC専用VR-SNSである。PC版にはモデルやワールドの容量制限は特になく、規約に従っている以上は何でもできるVR-SNSである。VCasはどちらかといえば配信向けのVR-SNSである。原則The SEED Online(TSO)と連携する必要があり、ユーザーデータは全てここにアップロードする。容量制限は100MBで、これはあまた株式会社として公開中の『Last Labyrinth』愚者の部屋、『オノゴロ物語』Chapter2 オノゴロ銀座で、その制限と戦った結果を見ることができる。
clusterは出資元はあのKDDIである。VR(スタンドアロン版含む)、デスクトップ、スマホのあらゆるデバイスでの利用が可能になっているタイプのVR-SNSで、こちらはイベント開催に向いているタイプである。というのも、イベント開催の際、主催者と参加者をシステム的に区別できるようになっており、イベントページのURLをシェアすることで簡単にその会場に参加可能という手軽さを兼ね備えている。もちろん有料イベントの開催も可能であり、個人的・商業的にも使えるVR-SNSになっている1)参照:詳しい使い方 – ヘルプセンター | cluster(クラスター) このページで基本的なことが分かる。。XR WorldないしDOORはNTTのXR部門であるNTT XRが開発・運営している。こちらも割とclusterに似た構成になっており、特にDOORについてはマルチデバイス対応、ブラウザからのアクセスが可能という手軽さが売りである。主にVCasで行われるミクランドの、非VRデバイス利用ユーザー向けの場所としても使用されていた。このように思い当たるだけのVR-SNSを挙げたが、いずれも得意分野がはっきりしているものとなり、それぞれで使い分けをすることが今後のメタバースにおける賢い生き方になると考えられる。
VR-SNSはどうしても外部ツールに依存する
Unityは、多くのコンテンツ制作に利用されているゲームエンジンである。内部的にはC/C++, スクリプトはC#によって動作している。ゲームエンジンとは書いているがゲーム以外のものもこれで制作可能であり、VTuberが使用するソフトウェア・ツールもこれで制作されていることが多い。ゲーム扱いにした方が案外何でも作れてしまうようだ。
VR-SNSも例外ではない。VRCはUnityを使用していることが明確であり、clusterもUnityである。他のVR-SNSについては使用エンジン情報が明確にされていないが、VCasについては技術ブログ内にUnityのことが書かれている以上、Unityは確実に使用している。このことからXR World, DOORもUnityを使用しているとみて間違いないはずだ。つまり、VR-SNSとUnityは切り離せない存在であることが言える。これが意味するのは、開発者もプレイヤーも、何かするにはUnityを使用してなんやかんやの悪戦苦闘をしなければならないということだ。Unityについては何かしらの「開発者」ならともかく、全くプログラミングの経験や3DCGを弄るなどの趣味がなかった人には抵抗のあるものになる可能性は高い。
VRCで言えば、自作モデルのアップロードはVRMの場合はFBXへの変換が必要なため、それを変換するUnityパッケージを事前に導入すること、ある程度の調整をUnity内またはBlenderで行い、そしてVRCSDKを導入し、それ経由でVRCにアップロードするということ。手順さえ覚えてしまえば2回目以降は簡単だが、最初の1回を完了するまでは解説を頼りにすることは確実だ。また、解説だけでダウンしてしまう人も少なくないので、そういう意味では人を選ぶとも言える。「山登り」が苦手な人は未だに多いのだ。
Unity以外の外部ツールは、そのVR-SNSから配布されている公式のアプリを使用する、または公式にサポートしているAPIや通信プロトコルを使用してユーザーないし企業が独自に設計するといった形で使用する。それ以外の外部ツールは意図しない動作、VR-SNSを運営しているサーバーに対して異常な負荷をかける、他のユーザーに何らかの(マイナスの)影響を与えることを考慮し、原則禁止されている。これを明確にするため、公式で提供しているもの以外はチートツール扱いとしてAPEX Legendsでもおなじみの実際は大して役に立たないEasy Anti Cheat(EAC)を採用して無効化することもあるようだ。ただ、VRCでこれを導入した際、身体的に何かしらの障害を抱える人をサポートするための非公式ツールも無効化されたこともあって、この部分は常に議論の争点となりやすいものである。
「そのVR-SNS内で殆どが完結する」を実現したのが”NeosVR”
それでは、どうしたら「外部ツールに頼る」や「非公式外部ツールの問題を考えなくて済む」ようになるのか。その答えは簡単で、「そのVR-SNS内で殆どが完結する」が実現すればいい。これはあらゆるVR-SNS、ひいてはコンテンツ制作者の考えていることであろう。つまり、あるVR-SNSが存在して、そのVR-SNS内でコンテンツ制作(モデル制作・ワールド制作含む)、ワールドのギミックをプログラミングする、販売管理を行うといったことができれば、それらの操作をPCで行うことに慣れていない人でも、手を出しやすいのではないだろうか。
とはいえ、それができたら苦労しないという声は当然存在するはずで、VRCでさえそんな機能は提供していない。もっとも、2014年から開始されたそれは開発のメインは従来のPC(デスクトップ)であることは簡単に推測できる。今でこそVRデバイスは色々登場しているので、それに伴ってVR-SNSで出来ることも増えているわけだが、そうであってもいきなりVRで全部何もかもできるようにする、というわけにはいかないであろう。それに至るまでの実装と、その後のフィードバックや問題発生時への対処を考えると、手間がかかることは間違いない。
その苦労を克服したか、或いは最初から「何でもできるように」設計されたのか。どちらなのかは定かではないが、その夢物語を現実にしたVR-SNSが存在した。チェコ・Solirax社が開発・運営を行っている、NeosVRだ。ヨーロッパから生まれたVR-SNSとなるそれは、NeosVRだけで殆どが完結するようになっている。まだほんの一部のことについてはPCで色々操作する必要があるものの、それはNeosVR以外でも処理が必要なことであるので、それを除いて考えれば自由度が非常に高いことが言われている。
既に卯塚ウウ(うーちゃん)がNeosVRで色々と試していることがあり、またNeosVR自体もうーちゃんから知った。日本人の参加規模はVRCと比較すれば少ない方であるが、NeosVRの機能に熟知している人もいるため、その人に頼んだり初心者講習会に行けば詳しく教えてくれることもある。気になった私は、専属VTuberである無音烏と共に調査することにした。
“NeosVR”やってみた!
これまで通り、名義は無音烏(silent_raven_v)でNeosVRをプレイする。現状、NeosVRはPC版のみ提供されているため、PCVRを前提として話を進めていく。
前準備:NeosVRをインストール
この手のVR-SNSはPCからブラウザにアクセスし、先に登録を済ませるのが殆どである。NeosVRは逆に、インストールしてからNeosVR内で登録も行える。NeosVR日本語Wikiにある説明によれば、ブラウザからの登録は一定時間内での登録数上限が存在するようで、VR内からは制限はないとのことである。よって、先にNeosVRのインストールを行う。
先にSteamで配信開始となったこれだが、Neos公式サイトでもインストーラが配布されている。Steam版はSteam自体の規約によってトークン関連機能が制限されており、公式サイトのものは全ての機能が有効である。今後のメタバースの発展を考えた場合、トークンは避けて通れないものになると考えているため、特に理由がなければ公式サイトのものを使用する。なお、トークンについての詳しい情報は、ここでは専門外のためwikiを参照のこと。
インストーラは一般的なウィザード形式のため、難しいことはない。インストールが完了すると、NeosVRのランチャーが起動するようになっているはずだ。そこまで出来ていればインストールはまず完了である。
登録:NeosVR内で登録する
次はユーザー登録を行う。キーボード入力の方が楽なのでここではデスクトップモード(右)で起動する。このとき、ファイアウォールがブロックしようとしたら許可すること。画面はデフォルトはフルスクリーンで表示されるが、alt+Enterでウィンドウモードに切り替えられるため、重かったりブラウザを同時に動かす必要がある場合には切り替えるといい。初めてNeosVRを起動すると、まず初期設定を行う画面となり、その途中でアカウント作成の画面が出る。ここでは以下の手順で進めていく。
- 言語設定を行う。自分の言語を選択する。規定の言語はシステム(PC)の言語になる。
- 音声入力デバイスを選択する。自分の環境に合わせて選択する。
- 基本設定を行う。移動設定、プライマリコントローラー、身長を設定する。
- Neosアカウントを作成する、またはログイン、ゲストモードを選択する画面が出る。ここではアカウント作成を行う。作成はその場で行える。
- ユーザーネーム:半角英数字と一部記号で構成する。
- メール:有効なアドレスを入力。2回入力する必要がある。
- パスワード:8文字以上、半角で大文字・小文字・数字をそれぞれ1個以上使用する必要がある。
- 私は13歳以上です:チェックする。これがある理由は後述。これの下にある「ユーザー登録」をクリックすることで、アカウントが作成されると同時、入力したアドレスにNeosVRからの認証確認メールが送られる。
- 認証確認メールにはリンクが貼られており、そのリンクをクリックした先のページの”Verify account”をクリックすることで認証が完了する。ここまで確認したらブラウザは閉じていい。
- チュートリアルワールドをパブリックまたはプライベートで開くかを選択する。任意であるが、パブリックで開いたところで「話せる人」が来るとは限らないので、プライベートの方が気楽ではある。
この手のアカウント作成は大抵面倒なものが多いのだが、NeosVRは作成に苦労することはなかった。基本設定の後、ちゃんと作成する流れになってくれるうえに、見た目にもわかりやすい入力フォームで何をどうしたらいいかがすぐにわかる。メール認証は通常のブラウザで行う必要はあるものの、それ以外は全てNeosVR内で行っているので、この時点で既にユーザーに優しい設計になっているようだ。まずは画像の’5.’まで目指して進めていくといい。
通常のSNSもそうだが、対象年齢は13歳以上であることが多い。VRCの時にはこのような項目はなかったが、そもそも対象年齢が18歳以上を想定したものであるからだと考えられる。NeosVRは単純にVR-SNSとして楽しむほかに、教育分野での使用も想定して設計されているようで、そのために子供がプレイすることもあり得るものになっている。したがってこのような規約を設けているということである2)参照:ガイドライン#年齢制限 – Neos Wiki 13歳以下の使用は原則ガイドライン違反であるが、保護者の監督下で同意を得た上で、その保護者のアカウントでプレイする場合に限り許可される。。
チュートリアルワールド:基本的な事を教えてくれる
チュートリアルワールドを開始する前に、どちらで開くかを聞いてくる。しかしどちらで行っても内容に変わりはなく、前述のこともあるのでプライベートの方が気軽であろう。そのワールドはこれからNeosVRをプレイするにあたって必要なシステムと操作の基本について解説しているものとなり、説明ウィンドウを見ながら進めていくものとなる。
操作に関してはデスクトップはキーボード/マウスによる操作となるので、少々操作しにくい。そのため、やるならVRモードにして、VRの操作に準拠した方がいい。ところでNeosVRは、他のVRと比較しても「できること」が多彩であり、ストレージやツールの概念が大きく違っており、一言で表すなら「何でも揃っている」。それだけでNeosVRを知らない人に対する回答になり得るほどである。チュートリアルではそれらについても一応の説明はあるものの、その説明だけでは絶対に理解は難しい。情報量が多すぎて、見ただけでは到底覚えきれないほどだからだ。一応、チュートリアル風景は撮影したものの、この画像で分かることはあまりないだろう。
とりあえずは移動と視点操作ができれば問題なく、加えてコンテクストメニューを操作できるようにしておけばいいだろう。操作方法が分からなくなったらダッシュメニューのホームを見れば書いてあるので、その都度確認していけば何とかなる。ちなみにこのワールドはいくつかのマップで構成されているようで、それぞれはチュートリアルを兼ねているようである。が、実際に体験した方がわかりやすいのではないだろうか。
実はVRCと同様に、有志により制作された日本人向けのチュートリアルワールド「JPチュートリアルワールド」が存在する。これにも実際に行ってきているが、ここで毎週火曜日22時に開催される初心者案内デーに参加しているので、これについてはその解説と共に書くこととする。
モデルのアップロード要件:VRMは変換必須
VR-SNSをやる上で気になることといえば、モデルの形式である。NeosVRの開始時期は2018年5月4日であるため、VRMの登場よりも早い時期からスタートしていることになる。VRMコンソーシアムの設立は2019年4月24日であるので、このことからVRMは採用されておらず、従来のFBXが採用されている。2019年以降にVTuberだったりVRを始めようと考えた人は、Pixivが無料配布しているVRoid Studioを使用してモデル制作している人が多いと思われる。そのため、VRMをNeosVRで使用できるように変換が必要になるのである。
必要な物:Blender3.0以上と特定のスクリプト
変換、と聞くと多くの人は構えてしまう。これはVRCのせいでもある。これはUnityと戦い、面倒な必須パッケージのインストール作業といくつかの操作を行って変換を行ったうえでアップロードしなければならないためだ。実際は慣れるとそこまでではないが。NeosVRでも変換は面倒だったようだが、現在は自動変換できるようになっているため、作業量と難易度はVRCのそれと比較すると圧倒的に低くなっている。
追加で必要な物はBlender3.0以上と自動変換を行うスクリプトのみ。Blenderは公式サイトからインストールする。自動変換スクリプトは安全上、ここでは直接リンクは貼らない。NeosVR日本語WikiのVROIDのページからそのリンクを探し、ダウンロードしてくること。やり方は実に簡単で、以下の通りにすれば待っているだけで出来る。
- Blenderが正常に起動できる状態で、vrmtoglb_autoconvert(zip解凍時のフォルダ名)/_convert.batに変換したいVRMをドラッグ&ドロップする。
- cmd画面が開かれて作業が開始される。変換作業は全て自動で行われ、完了するとその旨がcmdの画面に表示される。この時VRMの内容によって途中で詰まることがあるが、その条件は後述する。
- ドラッグ&ドロップしたVRMのある場所に”[filename]-vrm-converted.glb”とテクスチャ一式の入ったフォルダが生成される。これで作業は完了である。簡単でしょ?
殆どのVRMはこれで変換できる。ここで注意したいこととして、読み込ませるVRMがライセンス上問題がないことが重要である。というのも、VRoid Studioで作った人なら見覚えのある、VRM出力時に設定できる「アバターの人格に関する許諾範囲」と「再配布・改変に関する許諾範囲」にある「その他のライセンス条件」が問題となる。この部分に1文字でも何か入っている場合、ライセンス上問題のあるものとして扱われ、変換対象外となって途中で停止してしまうのである。途中で止まってしまって変換できない時は、この部分に着目する必要がある。
この部分は、自分で作ったモデルであればそこを空欄にしたうえでVRMを出力すれば変換できる。しかし購入モデルでVRMの場合、この部分に何らかの条件が書かれている可能性も0ではない。もし書かれている場合、潔く諦めるしかない。VRMにその他のライセンス条件があるかどうかを確かめるためには、”_license_chech.bat”にドラッグ&ドロップするか、VRM対応のソフトウェア・ツールを使用することで確認することができるので、あらかじめ確認の上変換を行うこと。
GLBを用意できたら、後はこれをNeosVRに入れるだけである。が、残念ながら入れただけでは見た目がVRM出力時よりも異なっており、調整が必要である。といってもそれはNeosVR内で調整可能である。しかし、この調整は実はけっこう面倒であるので、初心者案内デーの解説と共に解説する。
余談:自動変換スクリプトの動作の仕組み
Blenderが正常に起動できる状態で、自動変換スクリプトの”_convert.bat”に変換したいVRMを放り込むだけという、実に簡単なものに仕上がっている。ここでPCに詳しい人は、そのフォルダにはPythonスクリプトも入っていることに気付くはずだ。これを見たとき、通常はPythonのインストールを行わなければ使えないと考える。しかし手順にはBlenderだけインストールすればいいとある。何故Blenderだけでも大丈夫なのか、その答えはBlenderのインストール時にある。
BlenderはPythonスクリプトを公式にサポートしている。その際Pythonが入っていないPCでも使用できるよう、Blenderのインストール先の下層ディレクトリにPython環境をインストールしているのである。これによりPythonをインストールしていなくてもPythonスクリプトを実行できるようになっており、これが自動変換スクリプトで使用されている、ということである。変換時はユーザーはVRMを”_convert.bat”にドラッグ&ドロップするだけだが、実際には裏でPythonが動いている、ということを覚えておくとちょっと楽しいかもしれない。
ちなみにバッチファイルの中身を見てみたが、しっかりと作り込まれており、色々とバッチファイルを個人用に作ってきた私も納得するほどのものであった。
毎週火曜日22時開催、初心者案内デー
NeosVRでは毎週火曜日22時に、初心者向けに解説と遊びを行うイベントを開催している。それが「初心者案内デー」である。主催者はNeosVRで様々なものを開発しているオレンジ氏(@Orange_3134, YouTube)で、集合場所はJPチュートリアルワールドである。参加者把握のため、あらかじめGoogleフォームに参加申請を行う必要がある。希望者にはアバターセットアップの案内もでき、このときFBXまたは(VRM変換後の)GLBをあらかじめ用意しておく。必須事項を入力して送れば、22時前にオレンジ氏からフレンド申請が送られる。NeosVRを開始したらこれを承認し、その上でオレンジ氏にJoinすれば初心者案内が開始される。これに無音烏は10月4日に参加した。
初心者案内デー01:NeosVRの基本を学ぶ
取って付けたかのような公式チュートリアルと違い、JPチュートリアルワールドではこれからNeosVRで活動するのに必要なことが体系的にまとまっており、主催のオレンジ氏の案内のもと、実際に動かして覚えることができる。移動方式の基本である歩行/テレポート/フライ/ノークリップのそれぞれの違い、歩行モード時のクライミングの実践、自身のスケールの拡大/縮小、フレンド申請/承認の方法、インベントリのシステム、カメラの操作方法、ワールドのシステムといったあらゆることを遊びながら操作できるので、確実に覚えることができる。習うより慣れよとはよく言われるが、ことVR-SNSにおいてはどれでもその通りである。
NeosVRではワールドのセッションにP2Pを採用している。このときセッションを開始した人がホストとなり、参加者がホストに接続する形式となる。ホストがセッションを終了すると、そのセッションに接続していた人は全員解散する。このシステムにより、ホストとの地域が近い程ラグが少なくなるようにできている。今回の場合なら、オレンジ氏がホストとなり、それに他のユーザーが接続している構図となる。そしてNeosVRが他のVR-SNSと大きく異なるのが、複数のセッションをバックグラウンドで開くことが可能で、接続中のセッションは「フォーカス」することで、Webブラウザのタブのように自由にセッションを切り替えられるのである。
他のVR-SNSでは一旦そのワールド(セッション)を終了した上で別のワールドに移動するのが一般的である中で、NeosVRは現在参加中のセッションを閉じることなく、新たにセッションを開いたり参加することができるようになっている。したがって、セッションAに参加しつつセッションBに時々見に行く、といったことも可能になっている。ただし開きすぎると重くなるため、使用していないセッションは閉じたり切断しておくと軽量化できる。ここまでがNeosVRの基本となる。
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初心者案内デー02:遊びのアイテム・ワールドも多彩
NeosVRの自由度が高いことを生かして、様々な遊びも用意されている。まず、NeosVRでもちゃんと権限が存在し、次のような権限設定が存在する。
- Admin: 管理者。通常はセッションを建てた人が管理者となる。
- Builder: 開発者(?)。DevToolTipを使ったり、インスペクターを触ることができる。
- Moderator: モデレーター。キックや権限を設定できる。
- Guest: ゲスト。アイテムを出したり触ったりできる。
- Spectator: 観客。見るだけで、そのセッションでは何にも干渉できない。
- 参照:ダッシュメニュー・設定#セッション/権限 – NeosVR日本語Wiki
これらの権限が存在し、また通常は他のユーザーのコントロールを「奪う」ことはできないようになっている。そんな常識を破壊するかのように、他のユーザーをコントロールを奪えるアイテムが多数存在するのである。例えば、次のようなアイテムだ。
これは「おとうさんコントローラー」であり、基本的に誰でも自分のインベントリに保存することができるアイテムである。横についている棒を誰かに刺すと、その刺した人を遠隔操作できるという、他では絶対にありえないことができるアイテムである。何故か自爆もできてしまう。爆発オチなんて最低だ!
これが他のVR-SNSに存在した場合、場合によっては喧嘩に繋がるので、そもそも機能として制限していることであろう。しかしNeosVRではできるようになっている。これは、ある一定のユーザー間の信頼と、NeosVR自体が権限の制限もできる機能が存在することによって実現しているものであると考えられる。また、技術的な面で言えば操作権限のオーバーライドを(目に見えない範囲で)行っているということであり、普通のアイテムでそのような処理を行えてしまう「自由度」の高さは、驚きの連続である。これ以外にも他のユーザーに干渉できるアイテムは多数存在するので、信頼のおける人を連れてきては試してみるといいだろう。
ワールドについては、遊べる様々なワールドが用意されている。無音烏が行ったのはアタリの伝説である「ポン」をNeosVRで再現した”NEOS PONG”, モデルからお面を生成する”Omen Generator”, リアルスケールで再現されたボンバーマン”Blast Arena”の3つである。残念ながらボンバーマンについては重すぎて落ちてしまったが、ポンは筐体があって、アーケード版のようにレバー操作で対戦できるものになっていた。お面はスキャンするタイミングで全く異なるお面ができるなど、幅広い遊びが体験できるようになっている。他にも遊べるワールドはあるため、気になったら行ってみるのが吉である。
一部のワールドでは、見た目的には密閉空間のように見えるそれも、ノーフリップで床・天井や壁をすり抜けてみると、その外側にも何か作られているということがある。”NEOS PONG”がその例であり、実際に壁をすり抜け、上の方に行くと、実はポンそのもののワールドにいた、というオチがある。どういうことかは実際にそのワールドに行って体感してもらうとして、普通に行動できる範囲の「外側」にも何かしらの要素が存在するのがNeosVRの面白いところである。
初心者案内デー03:アバターセットアップ
NeosVRは、それを起動中のウィンドウに対してローカルファイル(自分のPC内の任意のファイル)をドラッグ&ドロップするだけで簡単にインポートできる機能を持つ。その逆のエクスポートについても、殆どのものをエクスポートできるようである。そのため、参加する前に生成したVRM変換のGLBも、その動作でインポートが簡単に行える。しかし前述の通り、調整が必要になる。この調整はNeosVR内で行えるが、そのための設定項目が多いものになっている。通常はこれを自分で行うが、初心者案内デーの参加申請時にセットアップを申し込んでおくと、オレンジ氏やそこに参加したNeosVRを先にプレイしているユーザーが手伝ってくれる。
実際に調整を行う場合、負荷軽減のためまずは何もないワールドに移動する。そこで生成したGLBをNeosVRの画面にドラッグ&ドロップしてから、次のように操作する。
- GLBをドラッグ&ドロップした際、NeosVRでモデルインポーターが自動で表示され、インポートするものが何かを問われる。ここでは3Dモデルのため、「3Dモデル→レギュラー/アバター→ヒューマノイドの身長に自動設定→高度な設定」と選択する。高度な設定では、マテリアルを”XiexeToon”に変更、「アセットをオブジェクト内に入れる」に追加チェックし、残りはそのままでインポート実行を行う。
- モデル生成中にホーム画面から「アバタークリエイター」を呼び出し、その際に生成される(NeosVR内の)VRのHMDの部分を、生成したモデルの目の位置を合わせるようにして被せる。
- 被せたら、アバタークリエイターのパネルを確認する。通常インポートしたモデルは自分専用であるので「プロテクトアバター」にチェックが入っていることを確認した上で、「頭の前方向を揃える」「頭の上方向を揃える」「頭の右方向を揃える」「頭の中心を揃える」「手の位置をあわせる」を順にクリックする。
- これでモデルの位置修正は自動で行われるが、手の位置はまだ異なっているので、これを手動で合わせる。この時片方の腕を合わせると、反対の腕も自動で同じ位置に合わせられる。
- アバタークリエイターのパネルから「ツールアンカーを表示」にチェックを入れる。これで掴み判定(丸)、レーザー(円錐)、ツール置き場(菱形)の位置をモデルに合わせて修正する。
- 5.までの手順が完了したらアバタークリエイターのパネルから「作成」をクリックし、自分のモデルに向かってトリガーを引き、「アバターを着る」で自分のモデルになることができる。
モデルのインポート自体はここまでで完了であるが、そのままだとモデルに違和感を感じるはずである。そのため続きの調整を行っていく。
- ここからはNeosVR標準機能の1つであるDevToolTipを使用する。これでモデルのインスペクターを開き、調整を行う。VRMをGLB変換後にインポートした際の特有現象として次のことが起きるため、それに対応する。
-
- インポート直後は目が動きすぎる場合がある。これはHead/Eye Managerから”EyeRotationDriver”コンポーネントを開き、そこの”MaxSwing”の値を小さくすることで対応できる。
- 何故か顔のメッシュの“DirectVisemeDriver”のRRに瞬きのシェイプキーが割り当てられてしまうので、これの割り当てを’∅’をクリックして削除する。
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- マテリアルの影色が暗く設定されている場合があるため、これはCenteredRoot/Assets/Materialsから各マテリアルの”XiexeToonMaterial”コンポーネントを開き、それぞれ該当するマテリアルの影色を削除していく。
- その他、服の設定、揺れものの設定などもモデルに応じて設定していく。無音烏の場合、烏が羽をまとめている状態(歩行モード)を模したポニーテールがあるので、それを1つにまとめ、揺れるようにした。
- ちなみに一連の設定はオレンジ氏の解説のもと、大半の設定を任せてもらった。初心者案内デーではこのようなこともできるので、予定が空いていれば毎週火曜日22時に行うと、後で自分で設定するのにも困らないはずだ。
ここまで調整すれば、ほぼ完璧である。気になる部分については後で自分で調整するといいだろう。NeosVR日本語Wikiのアバター作成の項には、ここで行った調整の全般的な説明が書いてあるほか、オレンジ氏のYouTubeには参考となる動画がいくつもあるので、それを参照することでも調整できるはずである。
初心者案内デー04:心ゆくまで遊べ
これが終われば、後は心ゆくまでまでNeosVRで出来ることを色々見ていくと、より理解が深まるだろう。無音烏の参加時は、もう1人の参加者(ユキ-JP, @yuki_jp123)もいた。無音烏はオレンジ氏に任せたこともあって早めに終わったため、様々なアイテムを出して遊んでいたほか、ゲーム制作経験があり様々なものをモデリングしているsentaku610(せんたく)氏が作った3Dモデルを見ているなどをしていた。また、NeosVRでは「咲-Saki-」のような能力麻雀ができる台がアイテムとして存在することも教えてもらった。テーブルゲームをアイテムとして自由に持ち込めるのは便利である。この感じだと、他にもテーブルゲームがアイテムとしてあるように見える。
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そうしているうちに無音烏を含めた、申請した参加者全員(10/4は2人しかいなかった)のセットアップが完了したので、記念撮影の後、NeosVRで使えるアイテムで遊び倒す時間となった。その量はすさまじく、もはや言葉で説明するには足りないほどである。具体的には、以下の画像のようなことをしたのである。
アイテムとして持ち歩けるものが非常に多彩で、それこそ、ワールド自体に何もなかったとしても遊べるような感じである。他のVR-SNSでは類を見ないものばかりであり、その点ではこれまでの常識が破壊されたとも言える。VR-SNSでも不可能だと思っていたことは、これを見れば「ない」といっても過言ではないだろうか。やりたいことが何でもできる、それがNeosVRであるとも言える。
ちなみにアイテムの中には、某VRなチャットで親の顔より見たロード画面があり、作るための技術と道具と素材が揃っているなら他社のものでも余裕で再現できてしまうということも、これで分かった。とはいえ、これはおそらくNeosVRの広大な世界の一部分に過ぎないはずだ。
こうして約3時間にわたり、日付をまたいだ初心者案内デーは、オレンジ氏が寝るために抜けたことを機として、時間的にもちょうどよかったので終了することにしたのである。NeosVRの可能性を存分に感じた、充実した初心者案内デーであった。
NeosVRに不可能は殆どない、そしてこれからも発展していくVR-SNS
NeosVRはチェコ・Solirax社が開発・運営を行っているVR-SNSである。この存在を知ったのは、うーちゃんからだった。そのうーちゃんからの情報で、現存のVR-SNSの中で自由度が非常に高いことを知った私は無音烏と共に調査に赴いた。そして得た答えは、「NeosVRに不可能は殆どない」、「これからも発展していく」ということだ。ちなみに他のゆかコネアンバサダー(わたあめ子、L*aura)もやっているようである。
VR-SNSといえば、VRChat。その次にcluster, VirtualCast, XR World, DOORといった国産系が出てくる。VRCについてはもはや説明不要だ。国産系は「日本では」知名度は高く、日本発ということもあって中国や韓国でもこれらのVR-SNSに一定数のユーザーが存在するようだ。しかしそれ以外のユーザーはあまり見かけない。最近はゆかNEOでVR内に字幕と翻訳を持ち込めるようにNao氏が設計してくれているので、言語の壁は心配なさそうであるのだが。
それらと比較すると、NeosVRはあまり聞いたことがない人の方が多いのではないだろうか。だが実は、2018年5月4日にサービスを開始したので、VRCをエースとするなら、NeosVRはベテランの位置になるであろう。そんなVR-SNSであるこれは、他のVR-SNSで成し得なかったことを容易く実現してしまえるほど標準機能が揃っていて、教育方面やビジネスでの使用も想定されているほどである。しかも話によれば、LogiXと呼ばれるNeosVR独自のプログラミング言語(システム)があり、これが相当すごいという。事情でプログラミングを棄てた私でも、こればかりは気になって仕方ないことである。しかし、入門編としてこれを書いている以上、それについては次回以降の解説となる。
気になったそこの、既に他のVR-SNSで活動している人。まずは好きなモデルを変換して、毎週火曜日22時に初心者案内デーに参加してみよう。世界が変わるはずだ。
以上、”NeosVR”やってみた!~何でもできるVR-SNS、入門編~、であった。次は何の記事で会おうかな?
KIBEKIN at 01:33 Oct. 11th, 2022
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脚注
本文へ1 | 参照:詳しい使い方 – ヘルプセンター | cluster(クラスター) このページで基本的なことが分かる。 |
---|---|
本文へ2 | 参照:ガイドライン#年齢制限 – Neos Wiki 13歳以下の使用は原則ガイドライン違反であるが、保護者の監督下で同意を得た上で、その保護者のアカウントでプレイする場合に限り許可される。 |