【約15年ぶりの制作】”JR EAST Train Simulator”出発進行:アーリーアクセス編

この記事の概要を簡単まとめ!

  • 実写映像と忠実に再現された挙動の鉄道運転シミュレーションゲーム、Train Simulatorシリーズ
  • 音楽館名義でのコンシューマ向けゲームはRailfanを最後に終了
  • 以降は鉄道各社向けの教育で使用する業務用シミュレータやホームドア開発に専念
  • 約15年の沈黙を破り、業務用の経験を生かしてコンシューマ向けを販売決定
  • 国鉄JR東日本をパブリッシャーとした初めての試み、開発は音楽館
  • 9月20日よりSteamでアーリーアクセス版を配信開始
  • 初期は京浜東北線南行: 大宮~南浦和、八高線上り: 高崎~群馬藤岡を収録
  • その時点での最新データで構築され、展望も車両挙動も「本物」
  • 今後の展開はフィードバックを元に最低3ヶ月後にフル版を予定
  • 鉄道史に残る、新たなTrain Simulatorの始まり

歴史資料とは、一体どんなものを示すか。国立図書館にあるものか。NHKが保有する映像か。それ以外のものは、果たして歴史と認められないのか。そんなことはないはずだ。自治体や個人レベルのものでも歴史資料は多種多様に存在する。しかし1つ明確なルールがあるとするなら、捏造は許されないということ。それだけはいつの時代のいつの出来事でも、それをやってしまえば品格をただ落とすだけになる。

鉄道史において、映像記録作品は数多く存在する。その中でも異彩を放つ存在がある。向谷実氏を代表取締役社長とする株式会社音楽館が制作した、前面展望撮影による実写映像・実際の車両性能を反映・ゲーム性の融合によって誕生した鉄道運転シミュレーションゲーム、Train Simulatorシリーズだ。向谷氏の趣味から生まれたこれは現実と全く差異がないほどに再現されており、同時に撮影当時の風景を切り取っているので、ゲームであると同時に鉄道歴史資料としての価値があるものに仕上がっている。

2007年11月1日の「Railfan 台湾高鐵」を最後にシリーズは終了し、以降は業務用シミュレータや安全対策設備の開発を中心としていた。そんな中で決まったのが、JR東日本公式でTrain Simulatorを家庭用に復活させるということだった。約15年の沈黙を打ち破り復活したTSシリーズ、最新作はSteamのみでの配信となる。この15年で果たしてどのように変わったのか。アーリーアクセス版が配信されているので、実際に走らせてその詳細を確かめていく。

2022年9月20日、TSシリーズのダイヤ改正が始まる

鉄道運転シミュレーションゲームの最高峰”Train Simulator”

株式会社音楽館が生んだ傑作

株式会社音楽館。鉄道ファンでこの企業を知らない人は殆どいないと言える。代表取締役社長は元カシオペアのキーボーディスト、向谷実氏。元々はプロ用レコーディングスタジオ向けの録音機材賃貸を行う会社として1985年に設立した。そしてMacintosh(Mac)を業務で使用できるようになったからであろう、1993年にMacintosh用ソフト”Touch the Music by Casiopea”を販売。これが起点となり、1995年8月19日、Mac用ソフト”Train Simulator 中央線201系(中野 – 豊田)”を発売する。ここからTrain Simulator(TS)シリーズを音楽館の主力として事業展開していくこととなる。

90年代末期~2000年代初頭はまだPCはWindowsもMacも高級品であり、特にMacを持っている人は少なかったであろう。TS PlusからWindowsのみの開発に切り替えている。そしてPS2が登場すると、メインプラットフォームはそれに移行して、TS Realシリーズとして山手線(2001年)、京急(2001年)の後、御堂筋線、東急(TAITOと共同制作)、九州新幹線、京成・都営浅草・京急のTSを販売していた。その後はPS3にRailfanに名前を変え、TAITOと共同制作で無印と台湾高鐵の2つを販売していた。ちなみにPSP版も東急と京成・都営浅草・京急がUMDに最適化される形で販売していた。



PS2からDVDが標準となったことによって、使用可能な容量は非常に大きくなった。これが保安装置のリアリティを向上させるのにも貢献している。同時にこの頃から「ゲームで使用するための映像」を撮るための特別回送を、撮影を行う路線を管理する鉄道事業者に依頼して手配してもらっている。このとき「停車駅・指定された位置での停車を行ったとき、対向車が見えてはならない」ルールを徹底している。したがって、あらゆる条件とタイミングを事細かに決めて走らせているほど、リアリティへのこだわりが強い。それでも東急東横線では反町で対向車の9000系が来てしまい失敗した経験がある。

PS3ではシリーズ名を東急から管理を引き継いだサイト「レールファン」(閉鎖済み)から取ってRailfanに変更し、路線を限定し使用可能な車両も各路線で1つに固定した上で、PS3のディスク規格(Blu-ray)を生かしたハイビジョン撮影、空撮や沿線からの撮影による実写のアウタービューを採用し、これと前方映像との同期をとって流す、といった試みも行われていた。その性質からRailfanは「鉄道を鑑賞する」側面が強いようにも見える。

シリーズの終了と業務用へのシフト

PS2の頃でも非常に高い再現度を誇っていたTSシリーズは、実際に使用している車両の計器動作、及びその寸法も実寸により再現されている。このことから、立ち位置としてはゲームでありながら、一部鉄道事業者ではそれを実際に新人教育に使用するほどでもあった。このこともあって、2006年から「業務用のトレインシミュレータ」を製作することを始める。そして東京急行電鉄および東急テクノシステムから、実際の乗務員養成に用いられるシミュレータ開発を受注しこれを制作した。このシミュレータは、人身事故も想定して人が飛び込むところも再現できるという、実際に起きると大問題だが教育しておきたいことを行えるものに仕上がっている。

そうして業務用にシフトしていくと、コンシューマはさして需要がないのか、或いはネタ切れというべきか、もしくは予算の都合か。2007年11月1日、「Railfan 台湾高鐵」を実質的なシリーズ最後の作品として販売すると、音楽館名義でのコンシューマ向けのTSは「終点」を迎える。同時に、業務用シミュレータだけでなく、鉄道博物館で一般客が遊べる展示用シミュレータの制作、向谷氏がカシオペアのキーボーディストであったことを生かした各種メロディ制作、安全性とローコストの両立を目指したホームドアの製作など、より鉄道事業に積極的に関わっている。もちろん本業である「音楽」に関する事業もちゃんと行っているようだ。時にSUPER BELL”Zと組み、曲も創っている。

「開発が音楽館」の鉄道ゲーム

しかし音楽館がパブリッシャーとなってゲームを販売することをやめただけであって、開発そのものは頼まれればいつでも行えるような体制となっているのであろう。そのため、ニンテンドーDS向けに販売された「鉄道ゼミナール -JR編-」および「鉄道ゼミナール -大手私鉄編- 」は両方ともTAITOからの制作請負、「山手線命名100周年記念 電車でGO!特別編 〜復活!昭和の山手線〜」はFF以外はあまりよくないスクウェア・エニックスからの制作請負で開発を行った。

このことからコンシューマ向けの作品は自分からは作らないが、誰かが作りたい場合には力を貸す、というのが音楽館の現在のスタイルであるようだ。しかし結局のところ、山手線(DS)を最後に制作請負はなく、そもそも鉄道系ゲームを作る意向のあるゲームメーカーはメジャー・マイナー含めても殆ど存在しない。また、海外の路線をTSないしRailfanで実装した経験があると言っても海外メーカーが音楽館に制作請負することは今のところ存在しないようで、そういう意味では業務用に安心して専念できていると言える。

約15年の沈黙を破り、業務用の経験を生かしてコンシューマ向けを販売決定

そうして人々の記憶からはTSもRailfanもほぼ片隅に追いやられ、多くはPCで動かせるフリーの運転シミュレータであるBVE Trainsimで満足していたことであろう。博物館や大型モールなどには大型の「遊ぶ用」シミュレータは置かれるが、コンシューマ機は当然のことながらPC向けの案内も一切ない状態だった。元々MacとWindowsで出していたわりに、販売する時はいつもPS2かPS3だったのでその辺は気にしていなかったのかもしれない。

だがいきなり、その沈黙は破られた。2022年9月20日、Steamにて”JR EAST Train Simulator“をアーリーアクセス版として配信開始すると、音楽館とJR東日本から公式にアナウンスがあったのである。JR東日本の発表日は明確にはわからないが、音楽館は9月6日に公開している。よって9月の第1週の週末には、少なくともこの情報が公開されていたものと考えられる。



JR東日本公式とはどういうことか。簡単な話、「JR東日本名義でTrain Simulatorが出る」ということである。これまでのTSはいずれも音楽館名義での販売であった。それが今回はJR東日本がパブリッシャーとなり、開発を音楽館が行うという、JR東日本と音楽館が連携している形となる。かといって、この様子から見るに開発を音楽館に丸投げしているわけではないようにも見える。

業務用シミュレータは、運転席のセット+実写映像で構成されていることが簡単に推測できる。家庭用となれば運転席のセットは当然存在せず再現も不可能なので、これらは画面内に再現されることになる。次に大事なのはどの路線が再現されるかということだが、現時点では区間が短いながらも京浜東北線八高線が収録済みである。当然、2022年時点で使用している車両が割り当てられるので、京浜東北線はE233系1000番台、八高線はキハ110系200番台となる。使用する車両が両極端ではあるが。

長い沈黙を経て、再び動き出した音楽館のTrain Simulator。15年も経てば、制作技術はもちろんそれを再生する機械も性能は格段に向上している。収録時点での鉄道の歴史、沿線風景、技術を「鉄道運転シミュレーションゲーム」として残すことができるようになるこれは、果たしてどんな仕上がりになっているのか。実際に走らせて、その出来を体感することにした。

JR East Train Simulator: 出発進行

前提条件:要求されるPCスペック

実写映像を使用した作品であるTrain Simulatorシリーズ。PS2やPS3の内蔵のCPU/GPUは、お世辞にも高性能とは言えないものである。そこから一気にPCになったことにより、高性能CPU/GPU、及び大容量RAMによってスムーズかつより高精度でリアリティの高い映像を綺麗に再生できるようになっている。同時にそれは要求されるスペックも高くなるということである。Steamにあるシステム要件は以下の通りである。

  • 最低要件
    • OS: Windows 10 (64bit)
    • CPU: Intel CPU(第6世代以降の4コア以上)またはAMD Ryzen(第1世代以降の4コア以上)
    • RAM: 16GB(非記載だがDDR4-2133以上が前提と思われる)
    • GPU: NVIDIA GeForce GTX 10シリーズ(2GB以上) = 最低ラインはGTX 1050(GP107, 2GB)
    • DirectX: Version 11
    • Storage: 20GB以上利用可能(後に配信されるであろうDLCを考えればこの2倍は必須)
  • 推奨要件
    • OS: Windows 10 (64bit)
    • Intel Core i5-6500 (4C/4T, 3.20GHz, TB 3.60GHz, Skylake)またはAMD Ryzen 5 1400 (4C/8T, 3.20GHz, BST 3.40GHz, Zen)
    • RAM: 16GB
    • GPU: NVIDIA GeForce GTX 1060 (おそらく6GB)
    • DirectX: Version 11
    • Storage: 20GB以上利用可能
  • 追記事項:モニタの必須スペックは1920×1080, 60Hz。また、DirectX 11.3が必要

意外にも、推奨要件はミドルクラスで落ち着くことが判明した。FPSでは石油王クラスのパーツを求められることが常だが、TSは激しく動くようなシーンは、120km/h前後を出せる常磐線快速を運転する場合などであろう。しかしその路線の場合、ほぼ何もないところを走ることになるので逆に負荷が少ない可能性もあるが。そもそも出るかどうかすら怪しい。

このスペックで落ち着く別の理由として、撮影時のカメラ性能の限界も考えられる。業務用シミュレータの映像を更新するために、不定期に回送を用意して撮影を行っていると考えられるが、映像を撮影する機材の情報は不明だ。少なくともハンディで撮影しているわけはないはずで、新規に撮影するとなれば、その時点での最新のビデオカメラを使用することは間違いないはずだ。




最初の儀式:操作方法、ゲームシステムの確認

まず確認しておくことは、操作方法とゲームシステムの確認である。まずはこれを確認しないと始まらない。操作方法およびゲームシステムは以下のようになっている。

JRE-TS操作方法
JRE-TSの操作方法。基本操作はキーボードで行う。ワンハンドル車とツーハンドル車で使用する部分が違うが、おおむねBVETSと同じ感覚で操作できる。
  • 難易度は3種類存在し、それぞれは画面内に表示される情報量が異なる。
    • 初級:従来の電車でGO!やTrain Simulatorシリーズを経験したことがない人向け。操作ガイドとHUDが有効で、誤差範囲が5mとなっている。
    • 中級:従来のTSシリーズの経験者向け。誤差範囲は3m。操作ガイドがなくなり、過去作品とほぼ同じ画面構成になる。
    • 上級業務用シミュレータと同様の仕様で運転する。次駅時刻残距離表示なし。誤差範囲は1m。停止位置目標が駅構内に入ったときに表示されるのみで、実際の運転と同様、前方風景を頼りに運転する。マスコンも手の感覚で操作する。
  • 運転中はPキーでポーズ、escキーでメニューに戻る。メニュー画面でescを押すと終了する。
  • 非記載内容として、ワンハンドルマスコンはAキーで1段ずつニュートラルに戻す操作ができる。

この操作方法を見てわかったのが、BVEとほぼ同じであるということ。したがってBVEをプレイしていた人は違和感なく操作することができるはずだ。また、マウス入力に対応しており、ホイールでマスコンを動かすことができるようになっている。とはいえ一段単位での入力は正直難しいので、キーボード入力が主になるであろう。

現時点ではコントローラー非対応だが…

音楽館の公式発表では、コントローラー操作については現段階ではサポートしていない。他のPCゲームよろしく、キーボードとマウスのみの操作である。とはいえWin95/Macではその操作しかできなかったはずなのでこれは今更というべきである。また、制作にあたってのキーバインドの設定も、多種多様なコントローラーすべてに対応させる時間とコストを考えれば、複雑な操作を要求するものではないのだから、別に対応させなくてもいいと考えられる。

ところで、PS2の頃にはポニーキャニオンがTS用マスコンを販売していた。山手線系のツーハンドル、京急系列のワンハンドル、九州新幹線に対応させるカートリッジなどが存在していた。これらは生産終了・現存品でレア物と化しているが、リアリティを追求する音楽館からすれば、操作にもこだわりたいところであるはずだ。そのため、製品版ではコントローラー対応が正式にサポートされると同時、専用マスコンの製作・販売も行われるのではないかと見ている。ここはユーザーのフィードバック次第である。

試運転:全体的な操作感はどうか

まずは初級で試運転を行い、操作感を確かめた。京浜東北線と八高線の両方で、キー入力の入力遅延や画面表示上の遅延などは特に起こらず、おおむね自分の思い通りに操作できている。「このキーを入力したのに反応しない」ということは今のところ、私の側では発生していないため、この部分には問題はない。

少し気になる点としては、京浜東北線での各駅のホーム入線時、一瞬だけFPS値が乱れるということである。現象としてはホーム入線の手前からFPS値が40前後に一瞬落ちてから50台を行き来しているような形で、それが大体5両分(100m)が入るまで続くというものである。もっとも通勤路線であるこれは入線速度も70km/h前後であることも多いので、その分だけ映像を加速させていて、その部分で負荷が発生してFPS値に影響しているものと考えている。

というのもTSでの撮影は常に一定の速度で撮影用の回送を走らせて、それをベースの映像としている。この映像をプレイヤー=運転士の入力した速度に合わせて倍速再生することによって、実際に運転しているように見えるのである。この手法はPS2時代から変わらず行われている。この再生媒体が以前はDVDであったので、時々引っかかることはあったが現在は最も高速であればNVMe M.2 SSDを使用できるので、この部分での問題は起きにくいはずだ。ただ、私の場合はデータを従来のHDD(SATA III 6Gbps)に保存しているため、それで引っかかっている可能性も否定はできない。とはいえ、進行不能バグではないので許容範囲である。

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京浜東北線、八高線乗務記録

操作方法やシステムについてはこれで完璧である。これらを踏まえた上で、アーリーアクセス版で最初から同封されている京浜東北線南行: 大宮~南浦和、八高線上り: 高崎~群馬藤岡を実際に乗務する。

京浜東北線南行

大宮を13時に発車する。現実のダイヤでは平日・土日祝問わず、昼の時間帯であるので種別は快速に固定されるのだが、モニタの表示には各停とあるので、アーリーアクセスに合わせた暫定的なダイヤであると思われる。首都圏の路線としては通勤客が多くてやたらと遅延も多いが、昼とあって人はまばらである。また、北浦和駅のホームドアが配置されておらず、工事中である映像を見る限り、映像自体は2019年頃に撮影されたものと思われる。これはGoogleMapのストリートビューから判定した。

E233系1000番台をはじめとする、E233系のシリーズは3枚の液晶モニタによるデジタル表示を採用している。TSで見えるのは主要計器と運行情報のモニタで、特に速度計は1km/h単位で表示されるため非常に見やすい。車両性能は起動加速度2.5km/h/s、減速度5.0km/h/s(常用ブレーキ最大)となっている。元々が通勤路線のためブレーキ性能は特によく、B8を使わずとも綺麗に停めることができるほどである。このおかげで、少々オーバーランしそうになってもカバーできる。また、実車ではTIMSを介して力行・制動をVVVFインバータ制御装置やブレーキ制御装置へ伝達している。このTIMSは伝達速度改良版(10Mbps)が採用されており、応答速度の良さには感動するものがある。運転しやすさは大事だ1)参照:JR東日本E233系電車#1000番台 – Wikipedia

保安装置はD-ATCを全線で採用している。D-ATCは5km/h単位で速度管理されており(E233系の場合は表示の関係上1km/h刻み表示)、その指示は速度計に表示される。そのため、速度制限はこれに従って運転していけば問題ない。路線上には速度制限標識があるが、これは無視していい。その意味では初心者でも安心な路線とも言える。

以下に1区間、与野ー北浦和の運転を掲載する。これでイメージを掴むといい。

 

八高線上り

八高線は名前の通り、八王子~高崎の路線である。扱い上は倉賀野を終点としているが、ここを始発・終着とする列車はないので、その隣の高崎が実質的な始発・終着である。高崎から東京方面(八王子)へ向かうため上りとなる。ここを11時56分に発車する。使用車両はキハ110系、記載はないが高崎車両センターに配備されたのは200番台であるので、ここでも200番台を運転する。目印になるものが殆どないため、いつの映像かは不明である。

キハ110系は気動車であるので、電車のようにスムーズには動かない。が、実車データでは性能の良いディーゼルエンジンを搭載しており、変直切替は自動で行われ、ブレーキも電気指令式を採用しているという、ほぼ電車と大差ない動きができる仕様である。ただしブレーキの効きはE233系1000番台とは違うので、この部分に注意する必要がある2)参照:JR東日本キハ100系気動車 – Wikipedia

田舎地方路線であるので、駅間は比較的長い。北藤岡からは単線で非電化区間を走行する路線のため、全体的にダイヤに余裕がある。そのため、極端に遅くなければ早着になることが多くなる。また、車両交換の出来る駅では必ず分岐を通る関係で、直前に分岐速度制限が存在する。駅に近付いたらいつでも減速できるように構えておくことだ。保安装置は全線でATS-Pが採用されており、速度制限に近付くとパターン接近を知らせるので、それで速度制限があることを察知できる。これも即座に反応し、減速できるようにしておくこと。

キハ110系の速度計、ブレーキ計はアナログ式である。これはE231系以前の電車でも使われているものだが、気動車では速度計に癖がある。低速域では針が大きく触れてしまい、正確な速度が分からないのである。これは30km/h以降になると安定する。これが引き起こす問題といえば停車時で、ブレーキ調整が難しくなるということである。こればかりは慣れるしかない。幸いにもダイヤに余裕があるので、停車時はゆっくりめでも十分間に合うはずだ。

以下に1区間、北藤岡ー群馬藤岡の運転を掲載する。ある意味で「風景を楽しむ」路線である。

 

上級モードは「本物」

ところで1つ試しておきたいのは、上級モードの内容である。説明には「運転士と同じ環境で運転!」とある。TSの段階でも限りなくリアルに近かったが、上級モードはそれを超えるものになっていた。操作ガイドはいいとして、HUDもないのである。そして誤差範囲は1mである。オーバーランした場合は自分で位置を直す必要がある。京浜東北線の場合の画面は以下のようになる。

上級モードの画面(京浜東北線)
上級モードの画面。運転席から見る風景そのものになる。右上のHUDは全て非表示になり、停止位置目標のみホームに入ったときに表示される。

初級、中級でもVキーによってHUDを非表示にできるが、それとはわけが違う。その場合はそれぞれ誤差範囲が5m、3mまで許可された状態で運転するので、その意味では余裕がある。ちょっと自信がなくなったらVキーで再表示できるので、まだ逃げ道はある。上級は、逃げ道すらない。補助計器が一切ない、まさに「本物」の運転を体感することができるのだ。同時に運転士の気持ちが理解できるようにもなるかもしれないし、これで停止位置調整やダイヤ乱れなしに走破できたらJR東日本に履歴書を持ち込んでもおかしくないレベルである。将来的に入社試験に採用されそう。

業務用シミュレータをベースにしているだけあって、この出来は本職の運転士でも納得するであろう。簡単な話、ゲーム用のデスクトップPCがあれば、上級を選択することで家で運転練習できてしまうものにもなっている。多少は実際の運転およびJR東日本が保有する音楽館製作の業務用シミュレータと差異はあるにしろ、実用性まで兼ね備えたこれは、音楽館・TSシリーズ、向谷実氏のファンのみならず、国内・海外を問わない多くの鉄道事業者にも愛されるTrain Simulatorになっていくのではないだろうか。

乗務記録は以上である。



JRE-TSの今後の展開

アーリーアクセス版配信の動向について、向谷氏は自身のTwitterで状況を確認し、その内容を投稿していた。時系列順で、次の内容を投稿している。

向谷氏のツイート
向谷氏がJRE-TSの動向をツイートしたもの。公開1日前のアクセスと公開後の売上データについてツイートしている。

Steamは全世界のPCゲームユーザーが利用できるので、海外PVが増えるのはごく自然なことである。向谷氏によれば270万回表示のうち75%が海外ユーザーであるので、日本国内よりも海外で注目されていることが分かった。具体的にどこの国かということは不明であるが、このことからJR東日本ないし音楽館への注目は集まることが確実である。そして配信が開始されると、売り上げトップを一気に獲得した。モンハン、CoD:MWII(リメイク)、DQXオフラインといった名だたる新作を抑えての1位であり、日本国内だけであったらこの結果にはならなかったであろう。したがって、海外ユーザーに対するリーチもかけていくことが、JRE-TSの今後の発展に必要なことになると思われる。特にアジア圏(中国・台湾・韓国)方面は、売上が期待できるはずだ。

アーリーアクセス中はユーザーからの意見を取り入れて改善を行うことも公言している。フルバージョンは概ね1~3ヶ月後としているが、その間にSteamレビュー欄や別途案内しているメールアドレスから寄せられたものが音楽館に届く。私の予想では、それらの意見を取り入れ、実装し、納得のいく調整が完了するまでに時間がかかるものと考えているので、おそらくフルバージョンは最低でも3ヶ月後であると推測している。その間にマイナーアップデートを細かく行っていくであろう。

Steamならデータの更新が容易に行える。このことを考えると、かつてのTSシリーズでは成し得なかったことも実装できるのではないかと考えられる。例えば「Train Simulator Real THE 山手線」に存在した特殊イベント(急病人・荷物挟まり・出発抑止・延発整理・防護無線発報など)は後のTSでは容量の関係もあって実装されなかったが、SteamならDLCとして実装すれば、簡単にイベントを挿入可能になるはずだ。流石に人身事故といったものは、JRE-TSでは再現が難しいと思われるが。

PC版に戻り、現在主流のダウンロード販売にしたことで、これまで出来なかったことができるようになって、さらにリアリティが高くなると見ている。音楽館も本気になったら、とんでもないクオリティのものが出来上がるかもしれない。

鉄道史に残る、新たなTrain Simulatorの始まり

向谷氏の趣味から生まれたTrain Simulatorは、リアリティを追求した鉄道運転シミュレーションゲームとして受け入れられた。TSシリーズは純粋なシミュレーションゲームであると同時、当時の車両と風景を切り取った歴史資料としての価値もあると私は考えている。しかしWin95/Mac版はOS、ディスク共に入手しにくいものになってしまったが。

シリーズは一旦終点を迎えたが、JR東日本の協力のもとで15年ぶりの運転再開となったTS。その舞台は常に最新のゲームが世界に提供されるSteamとなり、更新も追加も容易なプラットフォームで展開されることで、これまでのTSでできなかったこと、向谷氏あるいはJR東日本がやりたいことを実現できるとともに、ユーザーの要望にも応えることができるようになった。どうしても一方通行になりがちだったこれまでのパターンとは異なり、音楽館・JR東日本とユーザーで協力して1つの作品を作り上げるという感じが強い。なお協力できるのはアーリーアクセス版をプレイしている人のみなので、何か思うところがあるならまずはそれをダウンロードして、ある程度運転することである。

まだ出始めたばかりで、同時に音楽館としても「現代のPCゲーム」に挑戦するのは初であるはずだ。よって、他のゲームメーカー(メジャー/インディー問わず)ができていることができていなかったりすることは普通にある。だがそれは、温かい目で見守ってほしいものである。そしてフルバージョンが出たとき、それが鉄道史に残る、新たなTrain Simulatorとして。その始まりを祝いたいのである。今後の展開に期待したい。

 

以上、”JR EAST Train Simulator”出発進行:アーリーアクセス編、であった。次は何の記事で会おうかな?

 

KIBEKIN at 23:30 Sept. 22th, 2022


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KIBEKIN
会社員という働き方が合わないのに会社員になってしまってから、半ば自分からリタイア後ブログクリエイターとなり活動してきた社会不適合者。VRやVTuberに触れる機会が増え、今後はリスペクトだけではなく自分を作る意味を込め、VTuberならぬVBlogCreator"KIBEKIN"として新しいスタートを切る。

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