この記事の概要を簡単まとめ!
- 2022年9月20日からアーリーアクセスのJRE-TS
- 本格始動は2022年11月25日、¥2,980でアーリーアクセスは無料アップデート
- 各路線DLCは順次配信中(しかし高いのが玉に瑕)
- DLC第11弾は今や通勤路線として定着した南武線+鶴見線
- 南武線:各駅停車2種(立川/武蔵中原)、快速1種(立川)を運転でき、南武支線も同封
- 鶴見線:鶴見から扇町、海芝浦、大川、浜川崎のそれぞれへ運転可能
- 乗務感想:沿線住民として楽しめた+南武支線、鶴見線は新鮮なものであった
- マニアックすぎる路線も網羅するJRE-TSだった
最近どうにも配信ばかりしているせいか、本業とも言えるブログの更新頻度が下がっている。ただそれは単にネタ不足に陥ってきたせいでもあり、その言い訳を「配信が忙しいから」で片づけられるという逃げに走っているような感じでもある。またスランプかもしれないので打開策が必要だ。
そんな中で見つけたネタが、久しぶりのJR東日本トレインシミュレータである。実のところ1つのデータが割高なので全く買えていないのだが、DLC第11弾は南武線と南武支線、何故かおまけで鶴見線がついてきた。地元沿線住民としては流石にこれは外せないことで、実際に乗務することにした。
ひとっ飛びできる目次
南武支線も鶴見線も通勤路線の一部だ
JR East Train Simulator
2022年9月20日からのアーリーアクセス
株式会社音楽館、代表取締役社長向谷実氏の鉄道関連事業の会社である。趣味が高じて始めた鉄道関係の仕事は、乗務員訓練用シミュレータの制作が主でこれで右に出るものが無い。また向谷氏がかつてカシオペアでキーボードを担当していたことから、その経験を生かして各種鉄道会社が使用する発車メロディ、車内メロディの制作を行っていることでお馴染みである。他にも保安装置としてホームドアを制作し、特定の駅で導入され試験を開始している。
音楽館のもう1つの顔が、家庭用の鉄道運転シミュレータを販売していることである。かつてMac/Windows用およびPS2でTrain Simulatorシリーズとして向谷氏の趣味と意向、制作タイミングで所有していた業務用シミュレータのデータを家庭用に調整して流用して販売され、PS3からはRailfanとして販売されていた。その後15年の時を経て2022年9月20日、JR東日本と公式に協力してSteamで最新作”JR EAST Train Simulator“としてアーリーアクセス版を配信開始した。
アーリーアクセス版は¥980で京浜東北線南行、各駅停車大船行を大宮―南浦和まで。八高線は非電化区間となる高崎―高麗川間で、高麗川行を高崎―群馬藤岡まで運転できる。当時はまだ業務用をそのまま直接移植してきたようなものだったため、改善点は多くみられるものになっていた。しかし映像は現実世界のものと全く同じであり、車両性能、挙動、保安装置の再現もボタン操作でこそあるが行われており、業務用を家庭用にスケールダウンしつつも可能な限り省略せずに構成していることからも、JRE-TS開発の本気度が伺えるものになっている。
2022年11月25日本格始動、¥2,980で販売開始
9月20日のアーリーアクセス版公開後のフィードバックをもとに調整を加えて修正した正式版が2022年11月25日に開始した。販売価格は¥2,980で、アーリーアクセスからの購入者に関しては無料で正式版にアップデートできる。操作性に関しては元々キーボードとマウスでのみの操作に対応していたが、後のアップデートで従来のTrain Simulatorシリーズに対応する形で各種コントローラーでの操作を可能にした。現在は基本パックとして京浜東北線南行を全線収録、他にもお試しとして東海道線、中央線快速、大糸線の一部区間を運転可能となっている。
JRE-TSは元々業務用に調整されていたもので、乗務員訓練のために実際の車両の運転台を用意して訓練しているはずだ。その場合画面には映像そのものだけが映し出されていたことになる。家庭版移植に伴い、当然その設備は用意できるわけがないので、映像の上に運転台を重ねて表示するこれまでのシリーズのやり方で再現している。この時、UIは必要最低限のみ用意されていたような状態である。これはお世辞にも見やすい、分かりやすいとは言えないものではあった。
これもユーザーからの声などを元に改良を行い、他にも細かな誤字・脱字の修正、車両音の新規録音、TIMS動作再現、各種保安装置とその動作・ランプ点灯と通知音の再現といった、他では再現不可能であろうことを可能な限り再現するように制作されている。業務用に作っているものを流用するからこそのこだわりが、よく見て取れるものになっている。
各追加路線はDLCとして販売
これまでプレイステーションだけで販売されていた過去のTSシリーズ、今回からSteamで販売したことによって、気軽にDLCを導入することができるようになった。これによりJRE-TSの新しい路線の追加を簡単に行えるようになり、マイナーアップデートによって細かい修正も随時可能になった。Steamのアップデート情報によれば、大体1ヶ月に1~2回程度のマイナーアップデートがあり、ほぼ1ヶ月周期で新しい路線が追加されている状態である。
執筆時点までで存在するDLC数は11で、価格は¥2,980・¥3,480・¥3,980の3種類で展開されている。基本的に距離が長く、1つのDLCで複数の路線が同封されているほど高くなる傾向である。Steamで展開されているシミュレータ系ゲームの代表格でもあるDCS Worldと比較するとそれほど高くはないが、割引企画などは今のところ1回も行われた形跡はなく、その意味ではやや割高という点で玉に瑕といったところである。
DLC第11弾は今や通勤路線として定着した南武線+鶴見線
JR東日本と協力している関係上、制作するシミュレータはJR東日本管内に存在する路線に集中される。また現状では在来線のみの提供で、新幹線は予定なし、私鉄・第三セクターは対象外と考えられる。配信済みの路線の半分は関東を中心とした路線になっており、関東圏外の路線は大糸線(長野)、仙石線(宮城)、信越本線(新潟)、八戸線(青森・岩手)がある。やはり多くにとって馴染みがあるのは首都圏の通勤通学で使用する路線であり、ダイヤの関係で非常に本数が多い=人員が必要と考えれば当然の傾向と言える。
DLCは順調に進行しており、早くも第11弾が登場した。それが今や通勤路線として定着した南武線と、編成こそ短いがこれも通勤路線として利用される鶴見線のセットである。しかも南武線は尻手―浜川崎の南武支線も含まれている。利用者は圧倒的に少ないが通勤で使用されることもあって未だに存在している。南武線は「おさがり路線」1)主要路線の新型車両投入によって発生する余剰の旧型車両を、利用者がそれほど多くない路線へ転属される際、「黄色い線までお下がりください。」というATOSの放送と掛け合わせて命名したもの。の1つであり、山手線のE231系500番台導入時の余剰の205系先行量産車や横浜線から転属してきた205系H26編成、209系2200番台ナハ53編成を置き換える目的で青梅線・五日市線で運用されていたE233系0番台(6両)1編成をE233系8500番台に改造して運用するといったことが行われていた路線でもある。長らく新型車という概念がなかった南武線にE233系8000番台が導入され、武蔵小杉にクソみたいなうんこまみれのタワーマンションができるといったことで、無駄に通勤通学路線として定着していた。それ故乗務員訓練用のデータも当然作られたものと考えられる。
鶴見線についてはともかく、南武線は南武支線も含まれているということを聞いた私は、流石に沿線住民としてこれは見逃すわけにはいかないと考え、普段はフルプライスには触らない私も永続の定期券を購入し、南武線を中心に南武支線、鶴見線を乗務し、その乗務記録をここに掲載する。
南武線乗務記録
南武線概要
南武線は本線の起点を川崎、終点を立川とする26駅35.5km, 南武支線は起点を尻手、終点を浜川崎とする4駅4.1kmの路線である。元々は南武鉄道として開業、貨物路線として運用されていたものが旅客にも転用されたものになる。1927年時点では電化区間の登戸―川崎と非電化・貨物線の矢向―川崎河岸を結ぶ路線であり、1930年には支線の尻手―浜川崎が開通した。なお、1972年5月25日に貨物線の矢向―川崎河岸は廃止され、南武線は現在の川崎―立川、尻手―浜川崎となった。
JRE-TSでの乗務路線は、南武線は全て川崎から、603F 各駅停車 立川行、843F 各駅停車 武蔵中原行、4027F 快速 立川行の3つを運転できる。南武支線は613H 普通 尻手行のみ小田栄から、721H 普通 尻手行と1401H 普通 尻手行は浜川崎からの運転となる。使用車両は南武線はE233系8000番台6両編成、南武支線は既にE127系0番台が導入されたが運転できるのは205系1000番台2両編成となっている。E233系8000番台は路線の関係で起動加速度2.5km/h/s, 常用最大減速度4.2km/h/sとなっているが、操作性は他のE233系採用路線と全く同じである。205系1000番台は改造こそされているが基本的な足回りは国鉄時代の古い車両であるため、ブレーキ性能は現行車と異なるところに注意が必要である。
南武線各駅停車・快速運転記録
603F 各駅停車 立川行・1401H 普通 尻手行を含めた運転記録はこの動画、4027F 快速 立川行の運転記録はこの動画にある。使用ダイヤは2023年3月28日改正のもので、映像は武蔵小杉付近で工事中の部分があることから2020年10月以前、Googleマップの情報から2020年2月頃であると推定される。登戸以降の一部駅での高架化工事が完了した状態での運転になるため、視界と駅の状態が良い方である。
ダイヤは早朝の603Fは先行電車に追い付きやすいため、信号によって速度はあまり出しにくい。その意味では余裕のあるダイヤになる。武蔵中原行は営業キロこそ短いがラッシュ帯のため、人も多い方である。ブレーキが効きにくいことを考慮するといい。快速は休日ダイヤの10:31発のものになるため乗客数はそれなりにいるが、通過駅に対して速度制限が多いため、常に目を離さず運転しなければならない。
ただ、沿線住民としては再現はほぼ完全なものと言える。唯一気になることと言えば、撮影の関係で武蔵中原での停車駅が通常ダイヤでは使用されない3番線に入線することである。これは武蔵中原止まりであるか、2019年3月16日以前の快速の待ち合わせで各駅停車が入線するのみだったため、普段は必ず4番線に入線するものになる。そのため「いつもの運転」を再現するのであれば、4番線入線パターンも欲しかったところである。とはいえ制作サイドも流石に限界もあるだろう。個人的には中原車両センター入庫もあると良かったが。
南武支線運転記録
南武支線に関しては地元住民ですら、その沿線に住んでいるか浜川崎方面に仕事に行くのでなければ使うことが全く無いといっても過言ではない。朝の通勤時間帯であれば本数は多いが昼は全くない路線で、しかも2両編成である。また、本来南武支線はワンマンだがJRE-TSではツーマンとして運転される。始発は小田栄または浜川崎から尻手へ運転する。613H・721Hは通勤時間帯のもので、小田栄発613Hは人が少なめ、浜川崎発721Hはかなり混みあっている。昼時間の1401Hは人がいない。
営業キロが短く駅数も少ないことで、運転は非常に簡単である。注意するのは分岐制限と尻手駅進入時のパターンである。編成こそ短いがブレーキ性能については注意すること。幸いダイヤは緩い方なので、慌てず早めにブレーキをかけても間に合うはずだ。なお、回生終了は25km/hを切って1秒後であり、そこから空気ブレーキで停車するのでこの点に注意しておけば問題ないはずだ。
鶴見線乗務記録
鶴見線概要
鶴見線は、本線を鶴見―扇町(7.0km)とし、海芝浦支線の浅野―海芝浦(1.7km)、大川支線の武蔵白石―大川(1.0km)を含めた合計13駅9.7kmのJR東日本の路線である。本記事上では左側を起点、右側を終点とする。なお、大川支線の起点は武蔵白石であるが、ホームが存在しないため本線からの乗換は安善で行う。歴史的には鶴見臨港鉄道として貨物運送のために開業され、1943年7月1日に国有化されて鶴見線となる。現在の鶴見線になったのは1996年3月16日にクモハ12系の運行終了と103系の運行開始、武蔵白石の大川支線ホーム撤去が行われたことによるものである。
JRE-TSでは全て鶴見始発とし、701扇町行、705海芝浦行、801大川行、1013浜川崎行の4つを運転できる。701, 705, 801は通勤時間帯なので乗客は非常に多く、その時間を外れる1013は人がいない。各ダイヤはそれぞれ十分余裕があり、特に急ぐ必要もない程である。使用車両は205系1100番台3両編成。収録当時はE131系1000番台はまだ導入されていない状態である。国鉄時代の車両であることと、通勤時間帯はブレーキ性能が低下するためこの部分に注意しながら運転することが、南武支線と同様の課題となるであろう。速度制限は分岐制限とカーブ制限が多いため、南武支線以上に注意する必要がある。
鶴見線運転記録
鶴見線の運転記録は先の南武線との動画と共に1つにしている。開始地点へのショートカットを用意している。映像の時期は目立つものが少ないため推定が難しいが、おそらく南武線を収録したのと同じ時期であると考えられる。鶴見線自体は用事が殆どないため実際の風景は殆ど見たことがないが、一言で表すなら「何もない」というべきである。地図で確認すると浜川崎・扇町方面へ向かうほど住宅街から工業地帯となり、分岐先の新芝浦・海芝浦、大川は完全に工業地帯である。あるとすれば煙突くらいだ。
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朝の通勤時間帯のダイヤの場合は先行電車の関係で信号によって速度が出ないことが多いため、全体的なダイヤで見ると余裕があると言える。そのためマスコンは5に入れるのは出発の時くらいではないかと言えるほどである。対して1013浜川崎行はラッシュも終わってダイヤは非常に余裕があり、信号で引っかかることは全くない。唯一、速度の出し過ぎで分岐速度制限とカーブ速度制限に引っかからないように注意するくらいである。
風景を楽しむと言ってもほぼ建物で、風景があるとすれば海芝浦方面くらいである。他は建物と木があるくらいか、草が生えているか、貨物線があるくらいだ。この路線で風景を楽しむということはできるものではないであろうし、鉄道ひとり旅のように降りても何かあるのは国道、鶴見小野くらいであろう。なので単純に運転するだけの路線になると思われる。沿線住民であれば楽しめる可能性はあるが。
乗務感想
乗務した感想としては、南武線は地元路線住民なので色々と見ながら運転したのでかなり楽しめた。南武支線は逆に地元でも全く使わないところであり、八丁畷までしか使ったことがない私からすれば新鮮なものであった。仕事等日常生活の足として使っているのでなければ、観光名所も店も殆どない場所であるがゆえに、何があるかは全く想像つかないものであったからだ。実際は多少マンションや住宅があるといったところで、確かに目立つようなものは殆どなかった。八丁畷や尻手になると都会感は一気に強くなったという感想である。
鶴見線はそもそも利用機会がないので実際の風景は知らないが、住宅地と工業地帯の分かれ目がはっきりしており、そして草と工場と貨物だった。簡単に言えば「ほぼ何もない」ということ。主に通勤のための路線であり、少なくとも遊びに行くために使う場所ではない。横浜か川崎、その先に出るために鶴見に向かうというのなら使う機会はあるだろう、ただ時間単位の運行本数を考えれば鶴見から歩いて帰った方が早いということもあり得るが。しかし普段使う機会がない路線だからこそ、JRE-TSで運転できるのは良いことだと感じている。もっとも、時間と共に路線は進化していくものなので現実世界のものと全く同じ状態ではなくなるが、PS2時代のTSのように「映像資料」としての価値があるものになるはずだ。
マニアックすぎる路線も網羅するJRE-TSだった
ゲーム・エンタメ性を重視する電車でGO!と常に比較対象に居たTrain Simulatorは、15年の長き沈黙を経て再び戻ってきた。基本となるJRE-TS本体は京浜東北線南行全線を収録し、他の路線はDLCとして販売する形式にすることで、過去作のディスクROMよりも高い自由度を持って路線を追加できるようになった。そしてJR東日本の教習用として実際に撮影した映像を利用して、原則収録当時の環境で路線データを再現し、家庭用向けの調整を行って頒布される。もちろんDLCとして出して一発で終わりではなく、不具合やミスがあればパッチとして数日以内に簡単に修正できるので、昔のシリーズとは異なって不具合は非常に少ないものになっている。
そしてDLCなので、JR東日本管内の路線を自由に追加できるのが利点である。これまで正式版開始後1ヶ月周期で路線が追加されてきて、その第11弾が南武線、南武支線、鶴見線である。南武支線は南武線の一部であるので実質2路線であるが、南武線単体では割と路線距離は短いものになるので、南武支線の終着浜川崎の関係から鶴見線もついでに追加したのであろう。鶴見線も路線自体は短く、ある意味気軽に運転できるものである。
滅多にセールしないため常にフルプライスのシリーズであるのだが、流石に南武線があることで¥3,980でも見逃すことができずに買ったのである。今のところそれ以外のDLCは買っていないが、これを書いている時に第12弾は総武快速線(東京―成田空港)を予定しているとの情報が流れた。残念ながら横須賀線は含まれていない。E235系1000番台が導入されているが使用する車両はE217系とのことである。おそらく津田沼、千葉止まりもあると推測され、成田線を経由するものになる。内房線の君津行、外房線の上総一ノ宮行、鹿島線の鹿島神宮行は不明である。
随分とマニアック、寧ろマニアック過ぎるというべきか。南武線はともかく南武支線と鶴見線はまさしくそれである。もっとも、大糸線、仙石線、信越本線、八戸線はマニアックのそれに入ると思われる。だがそれはJRE-TS、向谷実の作品だからこそできたことと言える。JR東日本に実際に業務用シミュレータを提供しているからこそ、1つ1つの細かい部分まで再現してこうして出せるのだから、「本物」なのだろう。それが今回のDLC第11弾ということになる。今後もJR東日本の路線が1ヶ月周期で登場するであろう、その出来とマニアックさに期待である。
以上、”JR East Train Simulator”出発進行:南武線(+鶴見線)編、であった。南武線快速を最もうまく運転できるようになりたい。
KIBEKIN at 23:30 Dec. 11th, 2023
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脚注
本文へ1 | 主要路線の新型車両投入によって発生する余剰の旧型車両を、利用者がそれほど多くない路線へ転属される際、「黄色い線までお下がりください。」というATOSの放送と掛け合わせて命名したもの。 |
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