この記事の概要を簡単まとめ!
- あらゆる家電の中でも電力大食らいな「ゲーミングPC」
- CPU、GPUが高性能なら消費電力は非常に高くなる
- 電力が高い場合、熱は切り離せない問題
- 現代傾向としては性能より省エネが重要になる
- CPUは難しいがGPUならMSI Afterburnerがある
- 殆どがオーバークロック用途で使うがダウンクロックもできる
- 最大消費電力の制限と低電圧化が主な方法である
- 使用中のGPUの情報をもとに細かく設定していく
- 複数パターンでベンチマークを回し、最適解を見つけ出す
- オーバークロックと同様保証対象外につき素人にはお勧めできない
- 省電力化は実質的な節約に繋がる、パワーだけが正義ではない
私が現在使用しているゲーミングデスクトップは、大学生だった頃に作ったものである。それも安く仕上げるため、GPUだけは中古のものを流用した。それがMSIの1060-6GB(OCV1)であるが、これが3年経った今でも新しく入手したものに切り替えるまで、全く壊れる気配なしに動いていた。他のパーツも壊れるような気がしないのだが、とはいえ性能に限界を覚えてきて、更新を考える時期に来ているようだ。
新しいGPUの遍歴は、最初がMaxwell世代の最強GPU、GTX Titan X(2015)である。その次に変えたのが、2017年登場の最強GPUで、現在もまだ最前線で戦える性能を持つ、GTX 1080 Tiである。いずれもTDP250Wであるが、VRAMではTitan X、全般性能では1080 Tiに軍配が上がる。当然エネルギー効率で言えば1080 Tiであるので、もうTitan Xは卒業だ。ただ、共通事項があり、それは両者とも消費電力が高く爆熱になりがちである、ということ。自作PCユーザーにとってこの2つは無視できないものなので、何らかの対策を取っているのが普通である。
MSIが提供しているGPUをソフトウェア的に調整するツール”Afterburner”は、簡単にGPUの性能を変動させることができる。主な用途は性能アップだが、その逆の性能ダウンも対応している。このツールを使い、GPUにつきまとう熱問題と消費電力を解決することにした。性能を下げればパフォーマンスは下がるが、それがどれくらい下がり、そしてどれくらい対策として効果が現れるのか。詳しく見ていくこととする。
何でも「強けりゃいい」ってものじゃない
電力を食らう物
大食らいの代表「ゲーミングPC」
電気がなければ人は生活できず、創作活動すら滞る。そんな時代が当たり前になった今、1人に1台のPCという定義は崩れている。0か∞かという差である。スマホだけで完結しPCなど不要と考えている人は一定数存在し、珍しいことではない。その逆の、用途別で何台も保有していることは、これもまた珍しいことではない。ただし、学業や仕事で支給されている場合は除く。
PCのタイプは大分類すれば通常2種類で、デスクトップとラップトップのどちらかに分かれる。2-in-1はタブレットにもなるラップトップなのでラップトップの扱いとする。タブレットPCはタブレットそのもののため、ここでは除外する。一般的に仕事・ゲーム・クリエイティブの全てに対応できるのがデスクトップで、ラップトップは性能とできることを削ったうえで携行性を付与し、取り回しを良くして省スペースで使用できるものとなる。その特性上、ラップトップは仕事に利用することが多くなるはずだ。
デスクトップは据え置き型で、コンセントからの電気をATX電源で各PCパーツに必要な電圧と電流に変換し、動作させる。コンセントから直接接続することを前提とし、移動こそあり得るが持ち運びは滅多にしない(できない)ので、バッテリーは存在しない。この関係で停電には弱い。ただし、急な停電時でもデータ保存まではできるように、無停電電源装置を備えることはあるようだ。対してラップトップはバッテリーを備え、電源容量が十分であればどこでも使えて、充電も兼ね備えるACアダプターを接続すれば、フルパワーでの運用も可能となる。ただし、基本的にはデスクトップよりも性能が劣り、dGPU1)Discrete GPU: 一般にグラフィックボードのことを意味する。Discreteは分離、離散の意味である。対してCPUに内蔵されるGPUはiGPUと呼ばれ、この’i’はInternal(内部)の意味である。も搭載しないものが殆どである。そのため、用途がはっきりしていると言える。
そんなPCの中でも、ゲーム性能に特化した、所謂ゲーミングPCが存在する。これはデスクトップもラップトップも存在し、デスクトップはPC販売店によるBTOとパーツを全て自分で揃える完全自作があり、ラップトップはPCパーツ製造メーカーのものと、知名度が低いが性能は同等の中国メーカー製がある。私が使用中のゲーミングデスクトップは完全自作であり、ゲーミングラップトップは妹ちゃんが使用中壊れてしまったが、Hasee Kingbook T65は中国メーカー製である。
ゲーミングPCにおいてもデスクトップとラップトップの性能差は同じである。当然、デスクトップの方が性能は高い。ラップトップは同じ型のCPU(モデル記号はモバイル用)とGPUで比較しても、デスクトップの70%前後に落ちる。しかし共通事項は、いずれも消費電力が非常に高いということだ。あらゆる家電の中でも大食らいであることは確実なはずである。というのも、電力消費が大きい家電といえば冷蔵庫、オーブントースター、電子レンジも挙げられるが、冷蔵庫は実はそんなでもなく、オーブントースターも電子レンジも毎回使っているわけではないので、総合評価すれば「ほんの一瞬」消費するだけだ。対してゲーミングPCは1回に使用する時間はかなり長くなるはずで、本来の使用目的となるゲームや動画制作(エンコード)時は負荷が非常にかかるので、消費電力の高い状態が長時間継続する。これに加えてモニタと周辺機器の接続も含めれば、より消費電力は多くなる。そのため、人によってはゲーミングPCとその関連が最も電力を消費する対象になることも、今では珍しいことではないのである。
CPU, GPUが高性能なら消費電力は非常に高くなる
消費電力を考える際に重要なパーツは3点である。CPU, GPU, ATX電源で、基本はCPUとGPUの推定される消費電力をもとにしてATX電源を決定する。一般にATX電源の容量は最大容量に対して全体の消費電力が50%~65%になるようにするのが最も変換効率が高く、電源の寿命も長く持つとされている。ただしこれはあくまでも一般論である。それ以外のパーツで消費電力が大きいのはDVDドライブで、残りは10W前後ということが多い。もちろん、消費電力を正確に出すには、USB機器も含めたPCに接続する全てのインタフェースを考慮する必要がある。
CPUとGPUはPCの基本性能を左右する重要なパーツであることは誰もが知っていることである。CPUはIntel vs AMD、GPUはNVIDIA vs AMDである。最近はAMDが何か出すたびにR.I.P. IntelやらR.I.P. NVIDIAとネタにされる日々だが、それぞれのラインナップはローエンドやエントリーからハイエンド、その上の石油王(命名)まで様々だ。当然性能はローエンドやエントリーが最低限の性能、ハイエンドはプロレベルかクリエイター向け、石油王は個人ではほぼ使わず、業務用筐体を制作するメーカーが使用することになるであろう。その関係で最も使われるのはミドルレンジのものになる。一般的なPCゲーマーならそれくらいで落ち着く。
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ここで比較のためにCPUとGPUの代表的なものについて、モデルネーム、価格、性能概要、消費電力(TDP)について見ていくこととする。
製造元 | モデルネーム | 世代 | コア数 | Pコア | Eコア | スレッド数 | ブースト最大クロック(GHz) | Thermal Velocity Boost(Intel)(GHz) | TB-MAX3.0(Intel)(GHz) | 基本クロック(P)(Intel)(GHz) | ブーストクロック(P)(Intel)(GHz) | 基本クロック(E)(Intel)(GHz) | ブーストクロック(E)(Intel)(GHz) | ベースパワー(Intel)(W) | 最大ターボパワー(Intel)(W) | TDP(AMD)(W) |
Intel | i3-12300 | 12th Gen | 4 | 4 | 0 | 8 | 4.40 | – | – | 3.50 | 4.40 | – | – | 60 | 89 | – |
i5-13500 | 13th Gen | 14 | 6 | 8 | 20 | 4.80 | – | – | 2.50 | 4.80 | 1.80 | 3.50 | 65 | 154 | – | |
i7-13700 | 13th Gen | 16 | 8 | 8 | 24 | 5.20 | – | 5.20 | 2.10 | 5.10 | 1.50 | 4.10 | 65 | 219 | – | |
i9-12900 | 12th Gen | 16 | 8 | 8 | 24 | 5.10 | – | 5.10 | 2.40 | 5.00 | 1.80 | 3.80 | 65 | 202 | – | |
i5-13600K | 13th Gen | 14 | 6 | 8 | 20 | 5.10 | – | – | 3.50 | 5.10 | 2.60 | 3.90 | 125 | 181 | – | |
i7-13700K | 13th Gen | 16 | 8 | 8 | 24 | 5.40 | – | 5.40 | 3.40 | 5.30 | 2.50 | 4.20 | 125 | 253 | – | |
i9-13900K | 13th Gen | 24 | 8 | 16 | 32 | 5.80 | 5.80 | 5.70 | 3.00 | 5.40 | 2.20 | 4.30 | 125 | 253 | – | |
AMD | Ryzen 3 3300X | AM4 | 4 | – | – | 8 | 3.80 | 4.30 | – | – | – | – | – | – | – | 65 |
Ryzen 5 7600X | AM5 | 6 | – | – | 12 | 4.70 | 5.30 | – | – | – | – | – | – | – | 105 | |
Ryzen 7 7700X | AM5 | 8 | – | – | 16 | 4.50 | 5.40 | – | – | – | – | – | – | – | 105 | |
Ryzen 9 7950X | AM5 | 16 | – | – | 32 | 4.50 | 5.70 | – | – | – | – | – | – | – | 170 |
製造元 | モデルネーム | GPU名 | 世代 | ベースクロック(MHz) | シェーダクロック(AMD)(MHz) | ゲームクロック(AMD)(MHz) | ブーストクロック(MHz) | メモリクロック(MHz) | 実効値(Gbps) | VRAM(GB) | VRAM規格 | メモリバス(bit) | バンド幅(GB/s) | TDP(W) | 推奨電源(W) | 電源ピン1 | 電源ピン2 |
NVIDIA | GTX Titan X | GM200 | Maxwell | 1000 | – | – | 1089 | 1753 | 7 | 12 | GDDR5 | 384 | 336.6 | 250 | 600 | 6 | 8 |
GTX 1080 Ti | GP102 | Pascal | 1481 | – | – | 1582 | 1376 | 11 | 11 | GDDR5X | 352 | 484.4 | 250 | 600 | 6 | 8 | |
RTX 2080 S | TU104 | Turing | 1650 | – | – | 1815 | 1937 | 15.5 | 8 | GDDR6 | 256 | 495.9 | 250 | 600 | 6 | 8 | |
RTX 2080 Ti | TU102 | Turing | 1350 | – | – | 1545 | 1750 | 14 | 11 | GDDR6 | 352 | 616 | 250 | 600 | 8 | 8 | |
RXT 3070 Ti | GA104 | Ampere | 1575 | – | – | 1770 | 1188 | 19 | 8 | GDDR6X | 256 | 608.3 | 290 | 600 | 12 | – | |
RTX 3080 Ti | GA102 | Ampere | 1365 | – | – | 1665 | 1188 | 19 | 12 | GDDR6X | 384 | 912.4 | 350 | 750 | 12 | – | |
RTX 4070 Ti | AD104 | Ada Lovelace | 2310 | – | – | 2610 | 1313 | 21 | 12 | GDDR6X | 192 | 504.2 | 285 | 600 | 16 | – | |
RTX 4080 | AD103 | Ada Lovelace | 2205 | – | – | 2505 | 1400 | 22.4 | 16 | GDDR6X | 256 | 716.8 | 320 | 700 | 16 | – | |
RTX 4090 | AD102 | Ada Lovelace | 2235 | – | – | 2520 | 1313 | 21 | 24 | GDDR6X | 384 | 1008 | 450 | 850 | 16 | – | |
AMD | Radeon RX 480 | Ellesmere | GCN 4.0 | 1120 | – | – | 1266 | 2000 | 8 | 8 | GDDR5 | 256 | 256.0 | 150 | 450 | 6 | – |
Radeon RX 580 | Polaris 20 | GCN 4.0 | 1257 | – | – | 1340 | 2000 | 8 | 8 | GDDR5 | 256 | 256.0 | 185 | 450 | 8 | – | |
Radeon RX 5500 XT | Navi 14 | RDNA 1.0 | 1607 | – | 1717 | 1845 | 1750 | 14 | 4 | GDDR6 | 128 | 224.0 | 130 | 300 | 8 | – | |
Radeon RX 5600 XT | Navi 10 | RDNA 1.0 | 1130 | – | 1375 | 1560 | 1500 | 12 | 6 | GDDR6 | 192 | 288.0 | 150 | 450 | 8 | – | |
Radeon RX 5700 XT | Navi 10 | RDNA 1.0 | 1605 | – | 1755 | 1905 | 1750 | 14 | 8 | GDDR6 | 256 | 448.0 | 225 | 550 | 6 | 8 | |
Radeon RX 6500 XT | Navi 24 | RDNA 2.0 | 2310 | – | 2610 | 2815 | 2248 | 18 | 4 | GDDR6 | 64 | 143.9 | 107 | 300 | 6 | – | |
Radeon RX 6600 XT | Navi 23 | RDNA 2.0 | 1968 | – | 2359 | 2589 | 2000 | 16 | 8 | GDDR6 | 128 | 256.0 | 160 | 450 | 8 | – | |
Radeon RX 6700 XT | Navi 22 | RDNA 2.0 | 2321 | – | 2424 | 2581 | 2000 | 16 | 12 | GDDR6 | 192 | 384.0 | 230 | 550 | 6 | 8 | |
Radeon RX 6800 XT | Navi 21 | RDNA 2.0 | 1825 | – | 2015 | 2250 | 2000 | 16 | 16 | GDDR6 | 256 | 512.0 | 300 | 700 | 8 | 8 | |
Radeon RX 6900 XT | Navi 21 | RDNA 2.0 | 1850 | – | 2015 | 2250 | 2000 | 16 | 16 | GDDR6 | 256 | 512.0 | 300 | 700 | 8 | 8 | |
Radeon RX 7900 XT | Navi 31 | RDNA 3.0 | 1500 | 2025 | 2025 | 2394 | 2500 | 20 | 20 | GDDR6 | 320 | 800.0 | 300 | 700 | 8 | 8 | |
Radeon RX 7900 XTX | Navi 31 | RDNA 3.0 | 1855 | 2269 | 2269 | 2499 | 2500 | 20 | 24 | GDDR6 | 384 | 960.0 | 355 | 750 | 8 | 8 |
上記は現行のCPUないしGPUについて、今回必要な情報のみを抜き出して表にして、比較できるようにしたものである。単純にTDPのみを記載しても、性能差が分からなければ何故そのTDPなのか納得できないはずなので、性能面についても記載した。この中には石油王が紛れ込んでいるが、それも指標の1つとして今回は入れている。
これらからわかるように、性能と消費電力(TDP)は比例する。高性能なほど要求される電力は大きく、ATX電源も大容量のものが必要になることが分かるはずだ。特にGPUの場合は推奨容量が指定されていることが一般的で、指標としてもわかりやすいものとなる。この表から、Ryzen 9 7950XとRTX 4090を同時に使用すると、その2つだけで620W消費することが確定する。1000Wの電源ですら62%食われるので、他の機器も接続するならば1200Wでないとまず足りないことになる。ただ、ここまでのスペックであったとしても、一般ユーザーには残念ながら過剰すぎてそもそもパーツの候補からは外れてしまうが。
切り離せない「熱問題」
高性能なパーツに必ずつきまとう問題がある。それが「熱」だ。特に限界までCPUやGPUの性能を引き出すようなターボブーストやオーバークロックを行えば消費電力はTDPに近くなり、本来想定されるよりも大幅に負荷がかかる。電気の基礎として、電力[W]=電圧[V]×電流[A]
の関係が成り立っている。正確にはここに力率cosθ
が関わってくるが、ここでは一旦無視する。
なので単純に考えれば、消費電力がTDPに近い状態なら非常に高い電圧と電流がかかっていることになる。ただ、その電圧や電流が全てCPUやGPUの動作に関わると言えばそうではなく、一部は仕事することなく損失する。そしてそれが熱として現れ、多くのゲーミングPCユーザーたちの頭を抱える問題に発展するのである。人によっては、熱によってパーツはもちろんPC全体をダメにした経験があるはずだ。
通常、PCを使う際に一般用途であるブラウザの使用、動画視聴、オフィススイートで作業するといったものであればCPUクロックは高くなくてよく、GPUもビデオデコードで軽く動作する程度なので、そこまで性能を必要とされない。なので熱は上がっても50~60℃前後で収まり、長時間操作しっぱなしということもないはずなので、自然とクロックは落ちていく。これによって負荷が軽くなり、排熱が機能している場合熱も下がっていくので、動作に影響を与えることは少ない。
しかし上記のことを同時に行う場合や、ゲームや動画制作時のエンコードなどは負荷のかかる作業であり、通常は長時間高負荷の状態になるはずだ。その場合は排熱機能はフル稼働になるが、普通の排熱システムではまず追い付かない。そのため熱がどんどん上がっていき、多くの場合CPUもGPUも90℃台にまで上がることが多いはずである。だが排熱システムが正常であれば大抵はそこで打ち止めとなり、それ以上温度が高くなることは殆どない。これは多くの人が経験しているはずだ。
性能重視から省エネ重視へ:GPUなら制御しやすい
ただ、あまり高温・高熱状態になりすぎると今度はパーツの寿命に影響を及ぼす。それはメインとなるCPUやGPU本体へのダメージの他に、動作に必要な抵抗・電解コンデンサ・セラミックコンデンサといった細かいパーツの破損が発生することもあり、このうちどれか1つでも破損すれば起動不可能になる。熱は触っていなくても壊れる要因なので、警戒しておくに越したことはない。
その熱をどうにかする方法の最も強引かつ効果的な方法が水冷である。これができれば殆どのパーツの熱を気にすることなくフルパワーにできるが、そもそも水冷ユニットは大型で導入が面倒でポンプ駆動なら消費電力もあるので現実的ではない。なので殆どの人は空冷ユニットや軽量なヒートシンクを使用していることが多い。それが熱を防ぐ方法であると考える人が多いが、実はもう少し電気的な方法でも解決することができる。
安全上CPUとGPUのクロックと電圧は外部から制御できないようになっているが、特殊なツールを使うことで可能である。通常弄る場合は性能アップ、つまりオーバークロック用途に使用する場合が多い。だがそれができるということは、性能ダウン、ダウンクロックにも対応しているはずである。CPUの場合は少々難しいが、GPUの場合はゲーミングPC・パーツ・周辺機器メーカーでお馴染み、台湾のMSIが無料で公開しているツール”Afterburner“を使用することで簡単に制御できるのである。MSIのツールだが、GPUがMSI製でなくても使用できるようになっている。これを使用すれば自由自在に性能と熱と電力を制御することができるので、私が保有するゲーミングPCを実験台に検証することにした。
“MSI Afterburner”使ってみた!
検証するにあたり、Afterburnerのバージョンは4.6.5 Beta4であり、検証するGPUはPalit GTX 1080 Ti Super JetStream[風](NEB108TS15LC-1020J)である。1080 Tiのリファレンスモデル、所謂Founders Editionよりもクロックが上げられており、ジェットエンジンを参考に開発された2基のターボファンブレード、50℃以下の場合はファンが停止するサイレントモード、1680万色LEDで温度が目視で判断できる機能が搭載されたものである。基本スペックはTechPowerUpのデータベースを参照すること。
なお、ここではインストール方法については解説しないが、インストール時にAfterburnerとは別に、”RivaTuner Statistics Server”もインストールする設定になっているはずだ。これはアプリケーション内に現在のGPUの状態を表示することができるようになる機能であるので、GPUの状態を知りたい場合やベンチマークを行う場合はインストールしておくといい。私は入れていない。
基本の使い方
Afterburnerは、UIをプリセットから好きなものを選択して使用する形式である。UIによって差異はあるが、メイン画面が次のようになっている。

メイン画面では現在のGPUの状態とスライダーまたは数値入力によって変更できる設定項目がセットになって表示されており、いくつかのメニューアイコンが表示されている。基本はここにあるスライダーを左右させることによって感覚的に調整することが可能になっている。多くはオーバークロック用途に使うが、今回の目的は省電力とそれに伴うダウンクロックである。
設定を変更した場合は、安全のために即時反映ではなく、チェックマークをクリックしてはじめて設定が適用される仕組みになっている。そのため、設定を変更した際は必ずチェックマークをクリックして適用し、GPUにその設定を反映させることが重要である。なお、設定した内容を元に戻したい場合は、チェックマークの近くにあるリロードマークをクリックすれば、設定を元に戻すことができる。こちらは即時反映される。よって、何か変更を行った際は必ずメイン画面で反映する手順が必要になるので、これを忘れないでおくことだ。
プロファイルは5個まで保存できる
調整項目はAfterburnerを終了した場合はその設定はリセットされ、再度適用する場合はもう一度設定し直す必要がある。メイン画面はスライダー付きで数値による変更も可能なので感覚的にできることのみだが、後述の電圧調整は細かくクロックを下げていき、特定の電圧の時にクロックが最大となり、それ以上の電圧は流さないという設定をする場合、まず最適値を見つけるまでが非常に苦労する上に、リセットされてしまうということは再設定の手間が非常にかかるということでもある。
そのため、最適解を見つけた場合には、その設定を保存してすぐに呼び出せるようにしておきたい。Afterburnerではその設定を5個まで保存しておくことができ、次回以降の起動時に任意のプロファイルをクリックすることでその設定を呼び出すことができる。呼び出したらチェックマークをクリックして適用するのを忘れずに行うこと。保存方法は番号の近くにあるフロッピーディスクマークをクリックしてセーブモードにしてから、保存したい番号をクリックする。もしプロファイルを削除したい場合は、削除したい番号で右クリックする。最大5個までしか入れられないので、使わないプロファイルは遠慮なく上書きや削除していくこと。
ctrl+Fで電圧/クロックカーブエディタを開き、電圧とクロックを調整する
最大電力を制限することで、消費電力は簡単に変えられるが、その代償として性能低下がある。これは目に見えてわかりやすいものとなる。そこで性能を低下させずに消費電力を抑えるもう1つの方法が低電圧化である。GPUには動作のためにある一定の電圧マージンを持たせているようで、それを少しだけ下げてやろうというもの。理論上電圧が下がれば電力も下がるので省電力化に繋がる。ただし個体差があり、設定次第でゲームのクラッシュが起きやすくなるので最適解を見つけるのが難しい作業にもなる。しかし臆してはいられない。
この操作をするには、まず電圧/クロックカーブエディタを開く必要がある。UIによっては”Curve Editor”と書かれたメニューがあるが、それがないUIの方が多い。そのためウィンドウがAfterburnerにフォーカスしている状態でctrl+Fを入力すると、それを呼び出すことができる。ただし、GPUのモデルによってはそもそもこの機能が無効なものがあるようで、私の試した限りではTitan X(Maxwell)はこの機能が存在しなかった。おそらくMaxwell以下の世代では使えない可能性がある。検証する1080 Tiは対応しているので使用可能である。何もしていない状態で開くと以下のウィンドウが表示されるはずだ。

カーブエディタを開くと、横軸を電圧[mV]、縦軸をクロック[MHz]として、1250mVに近付くにつれてクロックが上がっていく形になっている。その間に細かく点が打たれており、任意の地点の点をマウスと方向キーで調整することができる。クロックを上げるも下げるも自由で、変更した場合は先と同じようにメイン画面でチェックマークをクリックして適用する。適用するとカーブは自動的に補正される。補正例は以下である。

詳しい設定は次項以降で解説するとして、任意の一点において本来のクロックよりも高い、或いは低い設定にした後で適用することで、その一点よりも高い電圧のクロックは全て同じ値となり、それより低い方はそれに合わせる形でクロックが階段状になるよう補正が自動で行われる。これにより指定した電圧でそのクロックに到達するとそれ以上電圧が上がらなくなるので、これによって省電力効果を得ることができるようになる。
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注意点:クロックに対して電圧が低すぎるとクラッシュする
ただし設定時に注意すべきことが、省電力を求めすぎてあまりにも低い電圧で高いクロックを設定しようとすることである。これはオーバークロックの時と同様、あまりやってはいけないことである。というのも、電圧が低すぎると指定されたクロックで動作させるためのパワーが不足し、動作が不安定となり、最終的にアプリやシステムがクラッシュする原因となるからだ。極端な話、700mVでメーカー公称値のブーストクロックを出そうとするようなもので、それをやればまず動作しないのは、物理を知らなくても分かる話である。とはいえ現代の半導体事情は非常に複雑ゆえ、単純な計算式で導き出せるものではないが。
そのため、設定時はある程度の余裕を持たせて設定する必要がある。ただし先にも書いたようにGPUは例え同じメーカーの同じ型番であっても個体差を持ち、どのような個体差を持っているかというのは実際に設定して試さないと分からない。そのため、試す時は「ちょっと高い電圧」「ちょっと低いクロック」を意識すると、GPUとPC全体を痛めずに済む。そしてクラッシュしたら、少し上の電圧で同じ設定をしてやる、を繰り返せばいずれ最適解にたどり着くようになるはずだ。
基本的な使い方は以上である。これをもとに、次項から実際に設定していく。
Afterburner節電実施データ GTX 1080 Ti編
設定に必要な情報を収集
ここからは実際に調整していくことになるが、それにあたってまずは設定に必要な情報を収集する。そのため、TechPowerUpから1080Ti(SJ[風])のカタログスペックのデータ収集2)後に判明したが、GPU-Zでは何故かベースクロック1557MHz、ブーストクロック1671MHzとなっていた。と、最初に無調整の状態でFFXVベンチマークを実行する。このときGPU-Zを同時に起動しておき、ベンチマーク実行中の値の変動を記録し、そこから現時点で必要な情報としてその時の最大クロックと最大電圧を記録しておく。それらの調査から、次のベンチマーク結果と情報が得られた。

電力を制限していない状態では、メーカーが記載するクロックよりも高い値が出ることが多い。1080Ti(SJ[風])も例外ではない。しかしこれは一時的なクロックであり、これに到達した後は少しずつクロックが下がっていくのをログから確認できた。ただし、電圧はそれより低いクロックでありながら高い場合もあるため、必ずしも比例するものではないようだ。
実験1:電力制限のみのベンチマークを行う
まずは比較のため、単純に電力制限を行ってベンチマークを実行する。電力制限を行うと制限した分だけパワーが純粋に低下するので、その低下率の確認も行う。まずは単純なスコアと、ベンチマーク中のそれぞれの消費電力[W]、GPU温度[℃]、TDP[%]が以下である。
パワーリミット[%] | 最大消費電力[W] | 最大温度[℃] | 最大TDP[%] | スコア | スコア比率[%] |
100 | 256.3 | 67.1 | 102.5 | 10831 | 100 |
90 | 243.7 | 66.3 | 95.5 | 10608 | 97.94 |
80 | 222.9 | 64.9 | 86.7 | 10194 | 94.12 |
70 | 192.1 | 63.7 | 73.4 | 9806 | 90.54 |
60 | 159.9 | 63.1 | 69.6 | 9381 | 86.61 |
50 | 137.3 | 62.7 | 54.5 | 8273 | 76.38 |

このような結果が得られた。単純に電力制限を行ってあげるだけでも消費電力が抑えられることが分かる。GPU温度は大して変わらなかったが、元々の冷却システムが高性能なためか、70℃を越すことはなかった。しかし電力制限の代償は70%以下になると顕著となり、60%以下ではスコア減少幅に対する消費電力の低下割合も小さくなっている。そのため、単に電力を下げる場合の実用制限値は70%前後が最適解となるものと考えられる。下げすぎても逆に効果を得られないのであれば、中間値にすべきなのはどこでも変わらないようである。
実験2:電力を制限せず、電圧のみ調整する
次に行うのは、電力制限は100%にしたままカーブエディタで電圧とクロックを調整し、ある程度の地点で電圧に制限をかけることによって低電圧化を行い、消費電力を抑えるものである。この方法は先駆者が多数存在し、その中でも多くの人が参考にする有名な実験データは、FF14のあるユーザーがRTX 3080に対して低電圧化を行った際のものである。実際のカーブエディタの画像と独自の設定ルールが書かれているので、目安としてわかりやすいようだ。それを基準に、他の先駆者のサイトも参考とする3)参考資料群 1: 夏のゲーミングPCは熱すぎる!「MSI Afterburner」でビデオカードを省電力・低発熱に – 石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』 – 窓の杜 2: 低電圧化でグラフィックボードの消費電力と発熱を改善する – Tool.CMD08.COM 3: GTX 1660 SUPERを低電圧化してピーク消費電力を削減。GPUが異なれば、設定の仕方も異なるからである。
設定候補1:700mV=1000MHzベース
先駆者の情報と結果を参考にまず行ったのが、700mVを1000MHzに合わせることである。1080Ti(SJ[風])のデフォルトは700mVで1164MHz前後である。前後としたのは、その時々によって値が上下するためである。そのためクロックを下げる値もその時々で異なる。ただ、必ずしも1000MHzにしなくてもよく、1000MHzに近ければ5~10MHzは誤差である。
調整方法はメイン画面の”Core Clock(MHz)”スライダーを動かしたり方向キーで微調整するか、shiftを押しながら任意の点をクリックして全体を動かすことで調整できる。微調整はメイン画面の方がしやすい。これで1000MHzに設定したらチェックマークをクリックして反映した後、任意の電圧点のつまみを任意のクロックまで引っ張り出して、同様に反映させる。これにより、その電圧を基準として自動調整が行われる。この方法で次の設定で行い、ベンチマークを実行した。
指定電圧点[mV] | 設定クロック[MHz] | ベンチマーク結果 |
950 | 1936 | 開始前に停止し検証不可能 |
1000 | 1936 | 開始前に停止し検証不可能 |
1100 | 1936 | 9960(元より電圧が大きくなりすぎるので意味がない) |
この段階ではまだ手探りであったので、最大電圧を気にしていなかったこともある。これらの設定では残念ながらベンチマーク自体が動作せず、1100mVは実質オーバークロックであり、全く意味のないものになってしまった。つまり、設定は失敗である。そこで次の設定に移ることにした。
設定候補2:700mV=800MHzベースで変動させる
そこで私は1080 Tiであって3080ではないということを意識して、700mV=1000MHzや最大クロック1936MHzを出すことに拘ることをやめて、メーカースペックに沿った設定を意識することにした。つまり、個体値最大の1936MHzではなく、平均値の1733MHzやベースクロック1557MHz、ブーストクロック1671MHzを基本とする設定を行うことにした。この際のダウンクロック幅は、思い切って下げられるところまで下げた。下げた後で任意の電圧点で指定クロックまで上げてから適用すると、それに合わせて自動調整される関係であまり下げても意味がないようであるが、やらないよりはマシである。
ここで使用するクロックは、ベンチマーク中に発見した平均クロック、ブーストクロック、ベースクロックの3つであり、次の設定を行った。
700mVのクロック[MHz] | 指定電圧点[mV] | 設定クロック[MHz] | 補正値[MHz] |
900 | 850 | 1670 | +67 |
900 | 900 | 1733 | +29 |
1000 | 812 | 1556 | +47 |

どのくらいが安定するかということを考えていた時に気付いたのは、1080 Tiは登場から5年以上経った今でもミドルクラスユーザーなら快適な性能を持っていることである。これは過去に最も使用していた1060-6GB、少し前まで使用していたTitan X(Maxwell)と比較しても明らかで、UserBenchmarkによる比較では、単純性能差で1060-6GBは+135%、Titan X(Maxwell)は+70%と、非常に大きな差である。大幅に性能アップしていると言っても問題ない程だ。VRでの活動において1060-6GBでは力不足が目に見えて分かっており、Titan XでさえもVRAMは十分だが基本性能はやはり劣っていて、不安定だったからだ。
それを踏まえて、かなり余裕を持たせた設定にしてベンチマークを行った。その結果とベンチマーク中のクロック、GPU温度、消費電力をグラフ化した。
指定電圧点[mV] | 設定クロック[MHz] | 最大消費電力[W] | 最大温度[℃] | スコア | 無調整ベンチマーク結果に対する比率[%] |
850 | 1670 | 166.8 | 63.1 | 9751 | 90.02 |
900 | 1733 | 184.4 | 63.5 | 9834 | 90.79 |
812 | 1556 | 152.0 | 62.9 | 9363 | 86.45 |

上記のような結果が得られた。ここでは動作の安定性を重視しているため、余裕を持たせた設定にしている。そのため、単純に電力制限を行った場合とスコアがあまり変わらないように見える。ただ、表3の結果と単純比較した場合、表6の上2つは電力制限が70%の場合と近い結果になっているが、消費電力は表6の方が低くなっていることが分かるはずだ。また、812mVで定格にした場合の結果は電力制限が60%の場合に近く、スコアは微妙に低いがほぼ誤差であり、消費電力も低いことが分かるはずだ。したがって、より高い効果を得たい場合は、電圧を調整した方が良いことが分かる。
それぞれの結果についての考察
ここから、それぞれの結果について考察していく。
まず、最も手軽な方法である「電力制限」であるが、これは結果から70%台が最も効率が良くなると考えられる。これは無調整100%の時のベンチマーク結果に対する比率から導き出したもので、消費電力が200Wを下回り、かつスコア減少が10%以内であることから、多くの人が満足するのがこの「中間値」となるはずだ。この方法はPCに詳しくない人でも感覚的調整が可能であるので、多くのPCユーザーに推奨できる方法となるであろう。
対して電圧を調整する方法では、電力制限は行わずにユーザーが任意に指定した電圧点において、設定したいクロックまで引き延ばして設定する。これは電力制限と比較してリスクのある行為である。電圧とクロックが釣り合わない場合、クラッシュの原因となるためで、しかも個体差によって実際に設定してみなければ動作するかも明確にわからない。あまりにもクラッシュさせすぎるとGPUの寿命を縮め、OSを破損させる原因にもなり得る。しかしそれと引き換えに、電圧とクロックの設定が最適であれば、スコアを殆ど落とさずに消費電力を下げ、発熱も抑えることができるようになる。その効果は電力制限よりも効果が大きく、若干であるが消費電力もより低くすることができる。
ここで、電圧調整についてもう少し詳しく考える。次は電力制限なしの状態におけるベンチマーク結果のうち、クロックと電圧の関係をグラフ化したものである。

このグラフはおおよそのものであり、もっと正確な値は元の数値を比較する方が分かりやすい。それはともかく、クロックと電圧の比例関係は確かに見て取れるものであることが分かるはずだ。ここで、ベースクロック(1557MHz)のとき831mV、最大クロック(検証時1936MHz)のとき1062mVであることが分かっている。ベースクロックについては812mVの時でも完全に動作することができたので、おそらく800mVでもベースクロックで動作可能であり、812mVの時はもう少しクロックを上げても余裕があるものと考えられる。うまく調整することができれば、より効率を上げることができるはずである。
ただ私としては性能を求めるプロゲーマーというわけではなく、VR活動もそこまで積極的というわけでもない。消費電力削減と熱を低くすることが優先事項であり、その場合は812mV=1556MHzは現時点での最適値になる。以前使用していた1060-6GB(MSI GTX 1060 ARMOR 6G OCV1)はTDP120W、ベースクロック1544MHz, ブーストクロック1759MHzで、今でこそ力不足と言っていいものであるが、仮にそこまでのTDPに寄せたとすれば、相当な効率で運用できることになるであろう。省電力を実現しながら性能も確保したいのであれば、敢えての高性能GPUを採用して電力制限と電圧調整(マイナス方向)をすれば、理論上は省電力・低発熱と快適さを同時に得ることができるはずだ。
注意事項:メーカー保証外の行為につき素人にはお勧めできない
ここまではかなり詳しく手順と結果を書いてきたが、念を押して注意しておきたいことがある。NVIDIA及びAMDと各PCパーツメーカーによって製造されたGPUユニットは「無調整」を前提として設計されているので、通常はGPUのクロック・電圧・電力は外部ツールによって制御されることを想定していない。したがって、その前提から外れることになる行為を行った時点で、メーカー保証対象外となる。これはオーバークロックはもちろん、ダウンクロックと低電圧化も対象である。要するに、Afterburnerを使った時点で自己責任である。これはツール提供元であるMSIですら同じである。できるようにしておいて保証しないとは無責任な所を感じるが。
そのため、私が書いた「実験データ」を見てその通りに設定して、それで問題が発生したとしても誰にも助けを求めることができないのである。当然、私に文句を言われたところで対応しない。よって今回の方法は、PC素人には全くお勧めできないものである。それ以前に技術的な事が分からない人はそもそもPCを使うことすらままならないので、Afterburnerに辿り着くことや私の記事に辿り着くこともないとは思うが。
ただ、このことは完全に新品でGPUを購入する場合に考えることであって、中古でGPUを入手する場合は、そのGPUが製造された年によっては既にメーカー保証が切れていたり、そもそも新品購入ではないので保証を受けられないということが多いので、そうであれば何のためらいもなくAfterburnerによる調整を行える。中古GPUを酷使したい人には向いていないが、大事にしたい人は調整する価値があるはずだ。
省電力化は実質的な節約に繋がる、パワーだけが正義ではない
PCの進化は凄まじい。基本性能が向上することによってできることが増えていき、理論上「不可能はない」状態になっていった。CPUやGPUはその最たるものである。しかしその代償は主に価格と消費電力である。性能が上がれば上がるほど、それを作るためのコストは高くなり、大抵は消費電力が高くなっていることが殆どである。価格は初期費用、消費電力は管理費用に直結し、それが高ければ高いほど石油王となる。多くにとって石油王は縁のないもので、それよりもコストが削減され、消費電力も落ち着いたミドルクラスのモデルを使うことになるはずだ。
とはいえミドルクラスであっても、価格は良くても要求される消費電力が高いことは多い。それは往々にして、熱も発生しやすいということだ。その熱をどうにかする方法は多数存在し、空冷ファンの強化、水冷ユニットの搭載など様々だが、それらはどちらかといえば一般的な物理現象を利用するタイプの解決方法である。ただこれでは消費電力までは削減できない。電気的な部分には干渉していないからである。電力は電力[W]=電圧[V]×電流[A]
(厳密には力率cosθ
も考慮する)から導き出されるもので、ここに一般的な物理法則が入り込む余地がないことは分かるはずである。
そうであれば、実際に電気的な部分に干渉すればいいだけのこと。CPUは難しいが、GPUは幸いにしてMSIがAfterburnerを出してくれているので、それを使えば簡単に電力制限と電圧の制御を行える。調整には幾度かベンチマークを行い、その記録から最適解を自力で探し出すという、人によっては苦労するであろうことを行う。最適解は例えGPUが同じであっても、或いは構成が全く同じであっても「個体差」によって微妙に異なることがよくあるので、この部分は根気よくやるだけである。
重要なのは、何故わざわざ性能を下げるようなことを行うのか、ということ。これを理解しておかなければ、Afterburnerを使って電力制限することや低電圧化することがただの作業になってしまう。目的は省電力、付随する効果は低発熱とGPUの寿命を延長することだ。ではそれらをするとどういうことになるか。答えは、「節約」だ。省電力すれば電気料金が(若干だが)減ることは目に見えてわかることで、GPUの寿命を長くすればGPUを買い替えるまでのスパンが(性能に満足しないなどのことがない限り)長くなり、余計な出費を抑えることができるのである。現代は無能が人の上に立つことが当たり前になってしまった時代ゆえ、あらゆるものに高額な出費を強いられている。そんな状況下でも快適にゲームやVRをするには、これが必須とも言える。そしてもう1つ言えるのは、パワーだけが正義ではないということ。今一度、GPUの電力消費、Afterburnerを使って見直してみてはどうだろうか。
以上、”MSI Afterburner”使ってみた!~熱対策と電力効率編~であった。次はどのくらいの設定にしようかな?
KIBEKIN at 00:00 Feb. 8th, 2023
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脚注
本文へ1 | Discrete GPU: 一般にグラフィックボードのことを意味する。Discreteは分離、離散の意味である。対してCPUに内蔵されるGPUはiGPUと呼ばれ、この’i’はInternal(内部)の意味である。 |
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本文へ2 | 後に判明したが、GPU-Zでは何故かベースクロック1557MHz、ブーストクロック1671MHzとなっていた。 |
本文へ3 | 参考資料群 1: 夏のゲーミングPCは熱すぎる!「MSI Afterburner」でビデオカードを省電力・低発熱に – 石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』 – 窓の杜 2: 低電圧化でグラフィックボードの消費電力と発熱を改善する – Tool.CMD08.COM 3: GTX 1660 SUPERを低電圧化してピーク消費電力を削減 |