この記事の概要を簡単まとめ!
- 5G回線が使えるキャリア回線をテザリング運用中
- 時々謎の回線速度低下に見舞われる、だが制限は食らっていない
- スマートフォンの発熱が速度低下の原因と断定し実験する
- 冷却システムを構成して一定温度以上にならないよう設定する
- 結果:冷却システム構成後は回線速度低下が発生しなかった
- 熱が原因であることは多いので対策すると快適になる
Xperia 10 IVと共にNUROモバイル(D)に変えてからというもの、配信で利用する回線は全てXperia 10 IV経由となっている。その際はテザリングを利用する。現在のテザリングはOSに関係なく標準機能として利用できるものである。以前はキャリア別で有料オプションだったのだが、今考えると意味不明な制限である。
極端に長時間配信するわけではないため、基本的に回線速度制限に引っかかるということはまずない。だが夏のクソ暑い時期に入ってから、これまで3回の回線速度低下を経験した。最初は制限に引っかかったものと見ていたが、その割にはすぐ後でYouTubeへのアップロードをしたときには速度が戻っていた。そこで気付いたのが、配信終了直後はスマホが異常に熱かったことだ。「熱」が原因という仮定に辿り着いた私は、冷却システムを構成して実験することにした。
ひとっ飛びできる目次
熱は万物共通の問題である
全ての動作は熱が出る
スマートフォンでテザリングする
スマートフォンで出来ることは非常に増えた。とはいえPCの作業を代行するにはまだ至っていない。したがって目的に応じて使い分けるのが現在のスタイルである。ところでほとんどの人は、家または職場にいる場合はスマートフォンをWi-Fiに接続しているのではないだろうか。その場合はスマートフォンのモバイル回線を使用することはないというのが一般的である。
しかし移動中は、ポケットWi-Fiのような持ち運び可能なルーターを持っているか、移動手段として利用する車両などにWi-Fiが装備されているなどの特別な事情を除き、Wi-Fiの利用ができないというのが一般的である。その場合はモバイル回線を利用する。だが多くの人はこれを使いたがらないはずだ。一般にモバイル回線は契約している事業者が提供する各種プランによって一ヶ月で使用可能なデータ容量が異なり、極端に小さい場合は1GBということも多いためだ。傾向としては三大キャリアは低容量ですら無駄に高く、MVNOでは高容量でも三大キャリアの低容量並価格ということが多い。
さて、スマートフォンではモバイル回線が利用できるというのが一般的な中で、PCは特殊な方法を用いない限り、LANまたはWi-Fiでしかインターネット接続ができない。だが人によっては緊急対応として、その場でPCを開いて何か作業しなければならないということも想定される。その場合に使うのがテザリングである。かつては馬鹿みたいに有料オプションの1つとして提供されたそれも、現在はOS標準機能として利用できる。方法は様々あり、USB有線接続、Wi-Fiアクセスポイント化、Bluetooth経由、変換してLANで接続といった方法で行うようになっている。
通信とスマートフォン
スマートフォンも当然のことながら通信を行うことで、様々なことができるようになっている。内部には通信用の小型アンテナがセットされており、ハードウェアあるいはソフトウェアの仕様によって通信可能規格が決定する。一般流通レベルでの通信規格を考えると、モバイル回線では一部エリアでのみミリ波の5G、現在主流なのが所謂”Sub6″の5G、機材が古ければ4Gであり、3Gは廃止傾向である。Wi-Fiは進行中の規格がWi-Fi 7となる802.11beで、これは802.11axをベースに設計されている。一般で主流なのは前述の802.11acまたはacであろう。機材が古い場合は802.11nであることも珍しくない。
通常のインターネット利用であれば通信間隔は断続的になるはずだ。ブラウザの例では、検索結果の表示のために通信を行い、そこから任意のページに移動するタイミングで通信を行い、そのページを読み込む。そのうちの結果表示~移動のためのタップ間はリアルタイムに表示するものがある場合を除いて通信は一時中断される。この場合の通信量は小さめになる。逆にYouTubeのような動画型コンテンツの場合は、一定量の通信を連続で行う。このとき1080pに代表される高画質再生の場合は大体3~6Mbps=0.3~0.75MBとなる。単純計算で4Mbpsの動画を1分(60秒)再生する場合に必要な通信量は30MBである。計算式は(回線速度Ns[Mbps]/8)×再生時間T[s]によって表される。
そのため、動画をモバイル回線で見ようとするのは無制限プランユーザーくらいである。なので殆どはPCから見るか、あるいはWi-Fi環境下で見る人の方が多いのである。一応、画質を落とせばモバイル回線でも無駄に消費することはないが、そこまでしても見ている時間が長ければ、結果的に通信量を消費することになる。そのため、モバイル回線で動画を見るということはあまり行うことはない。
真の5Gによるテザリング経由の配信
私の配信環境は非常に特殊なものになった。配信はアップロード速度が重要であり、これが出なければまともに配信できない。そのため、初心者講座的なものでは必ず光回線を使えと書かれる。だが私にはそんなものがない。なのでクソフトバンクダメダーでギリギリの配信をしていた。それも、4月16日のNUROモバイル(D)への変更をもって真の5Gを入手し、それを利用するためにテザリングをしていた。NUROモバイルのNEOプランのオプションにはあげ放題があり、これを利用して配信している。
使用中のPCはNICが有線と無線で2つ存在する。Windows OSではメトリック値は有線に優先されて小さい値が割り当てられるようになっている。その上で無線はテザリングに接続し、基本の通信は有線を経由するようにしている。これは実験し、記事にした。これまで何度か設定に苦労したものの、現在は何の問題もなくすぐに設定することができている。
真の5Gの効果は非常に高く、実験時に1080pの最低限表示できる速度である3000kbps以上をどの時間帯でも維持できることを確認している。ところで規約には使いすぎると制限をかけるとは書いてあるものの、普通に使う分には然程問題はないはずである。今までこの運用で制限をかけられたことがないからだ。
謎の回線速度低下と熱
だが毎年のクソ暑い夏になってから3回、謎の回線速度低下を経験している。それは配信中、アップロード速度が何故か上限1Mbpsになってしまうというものだ。当初はいよいよ制限を食らったものと考えていたが、そうではないとすぐに分かった。緊急で配信終了後、YouTubeへのアップロードを実施するとその上限はなくなり、ちゃんとしたアップロード速度が出たためである。
これが3回目のタイミングで1つ気付いたことがあった。回線速度低下の瞬間とYouTubeへのアップロード時、テザリングのために使用しているXperia 10 IVの熱さだ。配信終了直後のそれはカイロ並に熱くなっているが、それが10分も経てば普通に戻っている。PCでは熱がボトルネックの原因ということが度々起きるが、それはスマートフォンにおいても同じだと考えた。そこで1つの仮説を立てる。
熱の発生は連続通信が起因である。もし冷却しながらテザリングすれば、回線速度低下は発生しないはず。そしてこれを証明するために、冷却システムを構成して再び配信を行うことにした。
テザリングスマートフォン冷却配信実験
冷却システム構成の方法
接触冷却:冷やスマ
PCの冷却方法は水冷ができるので強いが、スマートフォンでは残念ながらそうはいかない。特に凍った保冷剤や氷菓子で冷やすのは、結露により内部に水が入り込む危険性が高く故障の原因になりやすい。それを考慮し冷却にはヒートシンクを取り付ける、水滴などの水が発生しない安全な化学反応を用いる、空冷モーターを背面に取り付けて熱を外へ逃がすといった方法が挙げられる。
シックスグラブが製造・販売している冷やスマは、30℃で融解する固体物質をパック内部に充填し、スマホの熱を吸収して液体化することによって冷却を行うものである。また冷やスマが30℃以下になった場合は凝固するため何度でも再利用可能になっている。冷却するために低温下に置いて準備する必要がなく、常温で利用するのが前提のため結露の心配がなく、安全に冷却できる。冷房が効いている部屋や冬の時期なら簡単に凝固するので、連続しての冷却も可能である。
これをスマホの大きさと発熱する部分に合わせて、ゴムバンドかジェルシールで固定することができる。ジェルシールは洗浄して再利用可能である。このためタブレットや携帯ゲーム機にも適合するようにできている。これをXperia 10 IVの真下に置いて、常時冷却しながら使用していく。
空冷:改造サーバ用ファン
しかしこれだけでは不安なため、もう1つ用意した。普段から8570wの冷却用として使用している、サーバ用のファンをUSBから起動できるように改造したものである。DC24V/0.2Aの単純な電圧制御のファンであり、外付けで使用することを想定しているので温度センサは不要である。通常USBはDC5V/0.5Aでまともに起動できないが、昇圧モジュールを間に組み込むことによって規定電圧を取得できるようにしている。電圧調整は手動であるが最大24Vまで上げられる。
これをDC12Vになるように設定して使用している。そもそものファンがDC24Vで使用するとパワーが強すぎるためである。配信中は8570wを触ることはないので、これを余っているUSBポートに挿して、Xperia 10 IVに直接風を当てて冷却する。よって私のスマホは次の状態で運用される。
実験の開始と結果
実験するにあたって、果たして温度をどう検知すればいいのかという問題がある。これについては全く考えていなかった。そのため外部アプリを利用して計測を行うことにした。メジャーなものはBattery Mixであるが、これはXperia 10 IVに対しては互換性がないということで使えなかった。そこでグラフ化できるアプリとして見つけたのがBamowi – Battery Temperatureである。当然のように英語で殆ど読めないが、グラフさえ取得できるのなら無問題である。検証のためなので使い終わったらすぐアンインストールしてしまえば問題ない。
実験環境は2023年8月2日、タイトルを伝説のレジェンドで行うことにした。開始前の状態と終了後しばらくしての状態を掲載し、その時のバッテリー関係についてデータ化した。その後は同様の熱対策を行った状態でのYouTubeへのアップロードも行い、比較とする。その結果が以下である。
ここで、配信開始時間が22時47分、配信終了が翌日1時46分であり、YouTubeへのアップロード開始が2時7分から30分ほどである。冷却対策を実施したことによって、いずれの場合も40℃以上には達していないことが分かるはずだ。もっとも冷やスマは融解が30℃であり、常に30℃近い夏の時期では常温環境下では凝固できず、あまり役には立たなかった。もっともこれは同製品の真夏用になる冷やスマ PROを使えば何とかなる可能性はある。とはいえ融解が37℃に設定されているが、逆に真夏以外は出番がない。
そのため大半は改造サーバ用ファンだけで冷却システムが動いていたことになる。しかしこれだけでも何もしないより明らかに効果がある。スマートフォン本体よりも冷たい風を直接当て、それによって外部への熱の放出が加速し、結果冷却出来ているということになるはずだ。流石に温度上昇を止めるということは無理だったが、一定以上の温度にならないことだけでも効果があり、これが「熱による回線速度低下」を防ぐことに繋がるはずだ。
熱が原因であることは多いので対策すると快適になる
以上で実験を終了する。実験結果は、冷却システム構成後は回線速度低下は見られなかったということである。これはたまたま発生しなかっただけということも考えられるが、しかし回線速度低下後にしばらくしてYouTubeにアップロードしたときに速度が回復したことを考えれば、最も想定される原因が熱しかなくなるのである。それは配信終了後にスマートフォンを持ったときに異常に熱かったことからも理由となる。したがって、熱対策を行おうと考えたわけである。
といっても、PCのような水冷ユニットはごく一部のスマホでしか使えず、そもそもコストがかかりすぎる。かといって保冷材のような凍らせてから冷やすタイプの冷却方法は、結露によって内部に水滴が発生することを考えれば使ってはいけない。そこで採用されるのがスマホに貼るタイプのヒートシンク、規定温度で融解するタイプの常温保冷剤、スマホ対応の空冷ユニット、ペルチェ素子を利用した冷却である。今回は価格的に手頃でありながら効果が高い常温保冷材の冷やスマ、前々から改造して使っていた改造サーバ用ファンを併用して冷却を行った。
冷却手段に関しては他にも様々に存在し、ゲーミングデバイスレベルになればPC並みの設備になっていることも多い。しかしこれは一般用途には適さないものである。また、今回はゲームではなく連続通信のために行っているものである以上、過剰な冷却能力は不要だ。それを考慮すれば高効率な冷却をしなくとも一定温度以上にならなければ問題ないわけで、今回実験した方法で十分である。
無論これ以外の操作においても、冷却することによって本体やバッテリー寿命を延ばすことができ、各種動作への影響を最小限に抑えられる。これは高性能なSoCを採用しているスマートフォンほど効果がある。必然的に熱が発生しやすいからで、その放熱をしっかり行ってやれば、性能をフルに発揮でき快適になるだろう。熱によって機械が何らかのエラーを起こすのはスマートフォンでも共通なので、これを機に冷却の心構えを身に付けるといい。
以上、スマートフォン冷却論:回線速度制限は熱の所為だった?であった。熱は機械の大敵なのは、どんな製品でも変わらない。
KIBEKIN at 00:01 Aug. 5th, 2023
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