この記事の概要を簡単まとめ!
- USBファンは自分用とPC用がある
- 市販のUSBファンは5V駆動対応型が多く、力不足
- 12V, 24VのUSBファンはなかなか見つからない
- 電気の知識と電子工作の技術で自作することが可能
- ないものは探すよりも作る、が早い
USBファンは、一般的にUSBで駆動する、扇風機型のものを想像する人が多いが、ガジェットの観点からは、デスクトップの吸気及び排気に使用される、12Vで駆動するケース用ファンをUSBから給電・動作するように改造したものをいう。
一般にケース用ファンは直流12V駆動であり、単純に配線を変えただけでは動くわけがない。しかし、あるパーツとともに「電子工作」をすることによって、USBからでも駆動することが可能となるのである。元々ケース用に設計されたものであるので、風量及び耐久性は市販のそれとは比較にならないほどの性能となっている。しかも、少しの知識と技術、そして最適な道具があれば、費用も安く抑えることができる。完成品を探すとなかなな見つからず、かつ高額なことも多いので、不景気の時代には大助かりのアイテムとなる。
今回はそんなUSBファンについて、初心者でもわかるようちょっと解説を交え、作業項目を記述した。これでこれを読んでいる人もちょっとした「強力な」USBファンを手に入れることができる。
ひとっ飛びできる目次
USBファンは自分用とPC用がある
まず、USBファンという名称を聞いて、どれが浮かぶだろうか。現在Googleで”USBファン”と検索して出てくるのは、一般に「USB扇風機」と言われるものである。これは読んで字のごとく、USBで駆動する扇風機であり、見た目も普通の扇風機を机の片隅に置けるほどスケールダウンしたものになる。
そして、USB扇風機ではない方を、私はガジェット的に「USBファン」と呼んでいる。ガジェット派の人はこっちが出てくるのではないだろうか。これは、本来デスクトップやサーバのケースの吸気・排気に使用されるケース用のファンを、配線を切ってUSB Type-A, 俗に言うオスの配線とはんだ付けで接続し、USB扇風機と同じ感覚で使用するようにしたものである。
以下、この2つについて軽い説明をする。
一般向け:USB扇風機
普通に生活している人は、USB扇風機が出てくる。これは先に挙げた通り、USB電源で駆動する卓上扇風機である。
部屋に置いて首振りで換気するような一般家庭用の扇風機とは違い、小さいため完全に個人用である。その小ささにより、机の上に置いても邪魔にならず、USB駆動のためコンセントが不要である。ラップトップユーザであれば、暑い季節でも作業が快適になること間違いなしである。
そして、この手の扇風機は100円ショップでも売られており、300円で買えるほどにリーズナブルである。ダイソーでは、実際に下のような扇風機を販売している。
作りこそ簡素だが、扇風機として十分に耐えうるものとなっている。また300円なので、壊れたら新しいものを買えば問題ない。簡単に分解できるので、色々弄ってみるものいいだろう。
ガジェット向け:USBファン
扇風機とは対照的に、黒を基調とした正方形の無骨な感じがUSBファンである。元々のファンはケース内部に使用されるもので、電源をマザーボードの3ピンないし4ピンから供給し駆動する。このときの動作電圧はDC12Vである。サーバ用などは風量を重視したDC24Vの高出力型が存在する。この場合、ただ正極(赤)と負極(黒)の線のみで、コネクタがついていないことがある。
そのため単体での使用やUSB駆動で使用されること自体想定されていない。そもそも、USB2.0の規格はDC5V/500mAなので、ただコネクタを付け替えただけでは動かない。ファンの規格をUSBに合わせるか、DC5VをDC12Vに昇圧するしか方法がないのである。
その問題を解決すると、USB扇風機として使用することが可能になる。元々ケース用で設計されているため、長時間の駆動に耐えられるように設計されていることが殆どである。サーバ用になれば、常時運転前提となるため、動作部分の耐久性を限界まで上げたものが採用される。これを扇風機にすると、故障とは無縁の扇風機が完成するのである。
ただし、USBファンの元はケースファンである。そのため、足などはついていない。十分な大きさのファンなら問題ないが、小さいと立てることが出来ずに倒れてしまうので、大きさには注意が必要である。
USBファンと駆動電圧:5Vと12V以上
市販のUSBファンは5V駆動対応型が多く、力不足
USBファンを考えるにあたり、駆動電圧がポイントとなってくる。USBは2.0でも3.1でも、電圧は5V出力である。規格上この出力電圧は固定で、USBポートから先の回路で昇圧する必要がある。しかし、安全性の問題と手間がかかると考えたのだろう、市販品はDC5V駆動のケースファンを使用して、USBファンを作っている。これらは家電量販店で「USBファン」で検索するとすぐに出てくるものである。
5Vは一体何に使うのか不明だが、フィンガーガードやフィルターが既に取り付けられており、購入してすぐ使えるようになっている。サイズは40mmから140mmが多い。40mmだと置いたときの安定性に不安があるので、120mmが一番安定するであろう。
しかし、5Vであるがゆえ、出力は小さく、大型になるほど回転数が下がる。物理的にも半径が大きくなれば、円周(2πr)は長くなるため、1つのファンブレードが1周するまでの時間が長くなり、回転数が下がる。そうなると、送風量が少なくなる。送風面積が大きくなっても、送風量が少ないと効果を感じることができないことが多い。この場合120mmでせいぜい2000rpmがいいところである。それ以上の回転数は、負荷が大きすぎるため、早い段階で壊れる可能性がある。やめておいた方がいい。
回転数を求めると小型化せざるを得ないが、しかし送風面積が小さく、少々物足りなく感じるだろう。かといって大型化すれば、送風量が足りずにやはり物足りなく感じることだろう。5Vでは不十分ということになる。
12V, 24VのUSBファンはなかなか見つからない
5VのUSBファンでは力不足の可能性があることは分かってもらえたことだろう。ならば、デスクトップで普通に使用される12Vないし24Vのファンにしよう、となる。しかし、そのUSBファンは普通に探してもなかなか見つからないことが普通である。
市販品の場合
市販品から探す場合、5V駆動のUSBファンが混じってくることに注意しなければならない。前述の通り、5Vに合わせたものが多いので、完成品の12V駆動を作っているメーカーは少ないと見ていい。
ただ、一部のメーカーはUSB5Vを12Vに昇圧するケーブルを販売している。出力側がピンコネクタになっており、ケースファンのコネクタにそのまま挿して使用することができるものである。さらに、可変抵抗を内蔵しているものもあり、出力調整できるようになっているモデルもある。果たしてそこまでする必要があるのか、微妙ではあるが。
この状況から、USBファンである以上、完成品の12V駆動はないものと考えていいだろう。こうなると、ケーブルを買って、普通にファンを買ったほうが早い。金が余っていて楽したい人向けである。
C2C市場(オークション・フリマアプリ)の場合
次に探すのは、C2C市場である。オークションやフリマアプリでは、ただ市販品を横流し・転売している低俗行為も見られる。殆ど「業者」が販売しているものばかりである。それ以外で、個人で製作したと思われるものが少量存在する。
個人で製作したものは、大抵はコネクタとUSBケーブルを切断して、その両者をはんだ付けしているパターンが多い。不恰好だが、ファンは12Vないし24Vのものを使用しており、何らかの回路が追加されていることもある。本当に出来る人は自分で作って売ってしまえるのである。
ただし、出てくるのもタイミング次第であり、いつも売っているというわけではない。不確定要素が強いC2Cでは探せないこともないが、お求めのUSBファンが手に入るかどうかは運次第というのは、微妙な話である。
電気の知識と電子工作の技術で自作することが可能
ここで、電気の知識と電子工作の技術を持ち出すことにする。USBファンはパーツの1つであり、それに使われるケースファンは、配線だけ弄ればUSBファンとして使用できるわけである。つまり、知識と技術で12V駆動のUSBファンを自作できるのである。
準備:道具と部品と技術
自作するにあたり、必要な道具、部品、技術について書いておく。
- はんだごて、はんだ、こて台、ワイヤストリッパ:USBとケースファンの配線を繋ぐのに必須な道具一式。被覆を剥がすにはワイヤストリッパを使用する
- 昇圧パーツ:下の写真を参考。5Vから12Vにする。1個100円の非常に安いパーツ
- USBケーブル、ケースファン:前提。USBケーブルは一番安いもので良い
- (Option)ファンガード、フィルタ:安全対策と埃対策に用意しておくといい
- はんだ付けの基本技術:YouTubeに動画が上がっているので参考になる。参考にしつつ練習することで少しずつ身に着けていく
- テスター:出力を12Vに合わせるために必要
この昇圧パーツは、ヤフオク!で多数の出品を確認している。これは本当に簡単な作りで壊れやすいパーツ1)このパーツは最大24Vまで、可変抵抗の抵抗値を高くすれば電圧が上がる仕組みとなっている。多くは一度セットした状態で電源を切るが、これが12V以上のときで次回使用時に電源を入れると、まれに逆電圧により部品、特にICが破損して機能しなくなることがある。実際に2個、この現象で破壊しているため、注意が必要である。本来、逆電圧が発生しないようツェナーダイオードなどで対策するのだが、このパーツにはないため、特に注意する。なので、多めに持っておくといい。
なお、入力側にmicro-Bメスコネクタがあるパーツのため、入力側のはんだ付けがいらないものとなっている。物によっては出力側にもコネクタがある場合があるが、割高になってしまうことが多い。
製作:作業内容
パーツが揃ったら作業をする。作業内容は以下の通りである。
- USBケーブルのType-A側でない方を切り落とし、ケーブルカバーをはずして赤と黒の線を取り出す。2つの線はあらかじめワイヤストリッパで被覆を剥がす。
- ケースファンのピンコネクタ側を切り落とし、赤と黒の線の被覆を剥がす。それ以外の線は邪魔なので切り落として良い。
- 昇圧パーツのVIN(入力)にUSBケーブル、VOUT(出力)にケースファンの配線をそれぞれはんだ付けする。このとき、+が赤、-が黒となるようにする。配線を逆にしないこと。
- 接続し駆動させる。テスターをあてて確認しながら、可変抵抗のネジを回して12Vに合わせる(破損対策)。
- 破損対策や電圧表示できる7セグメントLEDをお好みで追加するもよし。
以上の通りに行えば、基本的には問題なく作り上げることが出来る。後は、はんだごてとはんだのやり方、ケガへの注意対策をしておけば問題ない。慣れてきたら、熱収縮チューブで保護したりすると安全性が増す。後は、どうしても埃が溜まりやすいので、定期的に清掃して故障の原因とならないようにする必要がある。
ないものは探すよりも作る、が早い
世間には、「ジャンルや種類として存在するものの、自分が求めているものはなかなかない」というパターンで、欲しいものが見つからないということもある。これは、需要と供給のバランスの観点からも、特定の人にしか売れないようなものは、生産価値も需要も少ないと見られ、少量或いは生産すらされないということになりがちである。当然、その状態では探したところで見つかるものではない。
根気よく探せばきっとあるかもしれない。だがそれが自分で作ることが可能なものなら、作ってしまったほうが早いことがある。今回の場合、まさしく作ったほうが早かった。12V駆動がなければ、12V駆動するようにしてしまえばいい、と。
一部の人にしか需要がないというものであっても、その人向けに作ればまた、供給者になり、謝礼という形の金をもらえることも有り得る。とにかく、自作できると色々便利で幅が広がることは間違いない。軽い勉強と思って、実際に作ってみるのもありだろう。
以上、PC用ファンをUSBファンにする自作の方法であった。それでは、次回の記事で会おう。
リンクス岐部(LINKS-KIBE) at 16:08 Nov. 8th, 2019
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脚注
本文へ1 | このパーツは最大24Vまで、可変抵抗の抵抗値を高くすれば電圧が上がる仕組みとなっている。多くは一度セットした状態で電源を切るが、これが12V以上のときで次回使用時に電源を入れると、まれに逆電圧により部品、特にICが破損して機能しなくなることがある。実際に2個、この現象で破壊しているため、注意が必要である。本来、逆電圧が発生しないようツェナーダイオードなどで対策するのだが、このパーツにはないため、特に注意する。 |
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