【海外勢も怖くない】ゆかNEO on the VRs:VRChatに持ち込む字幕・翻訳編 | Raven's Articles

【海外勢も怖くない】ゆかNEO on the VRs:VRChatに持ち込む字幕・翻訳編

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この記事の概要を簡単まとめ!

  • ゆかりねっとコネクターNEO、字幕以外のことにも使用できるようになっていく
  • VR方面ではVRCaht, VirtualCast, Cluster, NeosVRで使用可能になっている
  • VRでの字幕の需要は上がってきているはずである
  • VRChatではOSCを利用して字幕と翻訳を送信することが可能
  • 条件はゆかNEO搭載のVRC-OSCプラグインがv1.3b以上
  • ゆかNEO側は設定項目は簡単で、ポートにのみ注意すればOK
  • VRC側でテキストチャットにゆかNEOの翻訳1番を送信する
  • 初回接続時はワールドリロードが必要な場合がある
  • 翻訳だけでなく母国語も同時に送信可能、ただし文字数制限に注意
  • VRChatで翻訳を使えれば、もう海外勢だって怖くない

VRが今後の標準となることは、長期的視点で確定である。だが同時に危惧するは、かつて死のコロナウイルスが起きたときにYouTubeに、既にテレビで出るような有名人が流れ込んできたことと同じようなことである。何かのきっかけによってVR世界にも有名人が一気に流れ込むような事態が発生すると、途端に「つまらなくなる」気がしている。そう思ってしまう理由は正直分からない。

さて、VR-SNSでは様々な言語を母国語とする人がいるわけだが、それがどの言語となるかは、実際に冒険して見なければわからないことである。VR-SNSの最前線であるVRChatは開発元がアメリカにある関係上、基本言語は英語であり、ユーザーの大多数も英語であることは当たり前である。なので英語圏にあたる確率は、Friend+以下の権限でない限りは普通にあり得ることとなっている。

また、VR-SNSの特性上、テキストチャットよりボイスチャットが好まれる関係で、翻訳してテキストチャットで打ち込むというのは時間的猶予を考えると非現実的であり、そもそも口語を聞き取って翻訳して、ということは非常に難しいことである。これについては難しいことであるので、妥協するしかない。だが逆に、日本語から外国語にする方法はゆかNEOを使用することで可能となっており、メジャーなVR-SNSでは使用可能になっている。今回はその中からVRCで、OSCを利用した字幕・翻訳表示が可能となっているため、その解説と実際に使用した際のイメージを含めて詳しく見ていく。

ゆかNEOがあれば、VRChatで字幕と翻訳を出すのは簡単な事だった。

ゆかりねっとコネクターNEOとVR-SNS

ゆかりねっとコネクターNEOの対応状況

ゆかりねっとコネクターがある。字幕・翻訳表示に加えて様々なことができるこれの、現在の開発メインはゆかりねっとコネクターNEOとなっている。このツールは、VTuberに関わっている人なら必ず1度以上は見ているはずのものである。現在は開発者のNao氏、公式ストリーマー/イラストレーターのあすまくん、公式ガイド(旧公式アンバサダー)のclea氏の基軸と、第1期アンバサダー8人とDiscordを中心としたコミュニティ、コメント特化ツールのわんコメとの連携による相互調整によって開発が進行している状態である。

ゆかNEOの対応状況は、刻一刻と変化している。主にDiscordで交わされる使用ユーザーからのレポートと要望をもとに、Nao氏の本業の隙間時間や終わりに修正ないし追加対応を逐次行っていることによるものである。元々字幕表示に特化していたゆかNEOは、ゆかコネからの開発メインの移行によってプラグインとして固有機能がまず移植された。次にDiscordの指定したチャンネルで投稿された内容(要望)について、次の開発版で試験導入し、それを使用した感想を貰い、次回以降の開発版での安定化や改良・修正を行うのが基本の流れとなる。
要望に対する解決策の提示には、既存機能に対する変更や追加、特定の機能で変わった使い方によって実現することを教えてもらうなどの、様々なルートがある。特に変わった使い方については、Nao氏以外の他のユーザーからの情報として教えてもらえることがある。このことは交流しやすいDiscordでよく見られる光景である。Twitterの場合は情報を見かけたうーちゃんこと卯塚ウウがどこからともなく飛んでくることがあり、そこから解決策が出てくることもたまにある。とにかく、ゆかNEOの対応状況はサポートも含め、かなりアクティブである。

ゆかNEOのVR方面への対応

VTuberといえば、VR-SNS。或いはメタバースとも呼ぶ。これは切り離せない存在であることは確かだ。では現在主流のVR-SNSは何があるかと挙げれば、まずVRChatが挙がるはずだ。そこから国内系でVirtualCast, cluster, XR World, DOORが存在する。ここ最近はチェコのNeosVRもユーザーが多くなっており、何でもできることと今後の発展可能性の期待値が高いVR-SNSとして注目されている。このうちVRC, NeosVRについてはそれぞれ初心者向けの記事を書いている。その記事ではあくまでも「初めての場合にどうやったらいいか」であり、詳しい部分の解説までは行っていない。門を叩いた後のことは余力があるときにやる予定でいるが、他のことも詰まっているのでなかなか手が出せない

ところでゆかNEOは今、どれくらいVR方面に対応しているのかを確認してみる。v2.0.21時点でVRに関連するプラグインは以下が存在する。

  • VRオーバーレイ(v1.1a):HMD内にゆかNEO字幕+翻訳やわんコメを表示できる。自分のみに見えるものなので、VR-SNSなどでは他の人には見えない
  • VRChat向けOSC(v1.6):VRChat内のアバターギミックやワールドギミックを、OSC経由でゆかNEOの音声認識を利用して動作させることができる。字幕と翻訳を送信することも可能である。
  • Cluster Web Trigger連携(v1.0a):VRC-OSCがcluster版になったと考えればいい。主にワールドギミック向けのプラグイン。
  • バーチャルキャスト連携(v1.1c):「ゆかりねっとコネクター字幕連携VCI」(2022/11/20時点でv1.0.13)がThe SEED Onlineで配布されているため、まずはそれを導入する。ゆかNEOで指定したディレクトリを書き出し先としてセットすることによって、VirtualCast内で同じ字幕と翻訳を表示させることができる。元々はゆかコネ用だったが、ゆかNEOでも使用可能である。
  • NeosVR連携(v1.1c):NeosVR版のVRC-OSC。うーちゃん提案、オレンジ氏協力でプラグインが安定化している。

これらのうち、ゆかコネの頃から運用されていたのはVRC-OSCとVCas連携であったはずだ。ただ、2021年頃のものであるこれらは、Facebook/MetaによってようやくVRが一般化し始めた時期であったことを考えると、これらを使って何かするという情報はそれほど流れているような様子ではなかったのであろう。現在はDiscord参加者もVRデバイスを持っている人が多く、検証は容易になっている。また、Nao氏自身でVR検証を行うことや、ゆかコネの役職者も検証する機会が増えている関係で、VR方面の対応も進み具合が良好である。これらの蓄積と情報が揃うことで、誰でも使うことができるようになってきている。

現時点ではXR World及びDOORへの対応予定はない。これらについては利用者が増え、要望があった場合に実装することになるはずだ。

VRでの字幕の需要は上がってきているはずである

近年の各VRプラットフォームにおける、字幕の需要は上がってきているはずである。国内系VR-SNSならともかく、海外系VR-SNSであれば必然的に母国語以外のユーザーがいる。これらのユーザーと遭遇する機会は、ワールドを開くレベルをPublicにしていない場合は通常は殆どないことである。だが最近はVR-SNSにおいて大小・企業民間問わずイベントが開催され、その場合はPublicで開かれることが多い。このとき母国語以外の人がそのイベントのワールドに入ってくる可能性は十分にあり得ることで、イベントスタッフの場合は自分の言語が異なったとしてもその人に対応しなければならないことを意味する。だが知っての通り、全員が全員、英語ができるわけではないので非常に難易度の高い話となる。さらに会った人が英語以外の人であった場合は尚更難易度が高くなる。



また、最近では身体障害者とVRを結びつける流れがある。流石に全盲だとプレイは不可能であるが、色覚異常や難聴でもプレイできるような環境・アクセシビリティを追加し、一般の人がそれらの「症状」を体験ができるようなものがワールドの中に存在することがある。つまりVR-SNSをやる人の中には、それらの事情を持つ人がいる可能性があり、偶然に会うこともあり得る。この場合はその人は自分の言語と同じであることも多い。このことから言えるのが、VR-SNSでも字幕と翻訳を持ち込むことができれば、それらとのコミュニケーションはより円滑に行えるはずだ、ということ。既にVCasでは実現しているが、他のVR-SNSではまだうまくいっていない様子である。8月中旬に書いた記事では、まだそんな感じであった。

そんな中、「VRChat向けOSC」(VRC-OSC)で進化が見られた。それまではOSCを利用して「アバターに仕込まれたギミック」を音声認識の結果=字幕、または翻訳結果をキーとして動作させるために使用するだけだったそれが、VRC自体のアップデートによって追加されたチャットボックスを利用することで、字幕または翻訳をVRC内で表示させるシステムに変えることができるようになった。この方法はNao氏自身で実験済みで、使用方法と設定手順が公式サイトで書かれているほか、clea氏、うーちゃんが使用していることも確認できている。ただ、詳しい解説がまだ存在していないようなので、本記事の解説でこれから増えるであろうVRCイベントでも使えるように、設定方法から実際に出している様子まで、詳しく見ていくこととする。

VRC-OSCで出すVRC内の字幕・翻訳

専属VTuberの無音烏協力のもと、ゆかNEOのVRC-OSC経由でVRC内に字幕・翻訳を出す手順を解説する。このとき、VRCは常にSteamの最新版であり、執筆時点でのゆかNEOのバージョンはv2.0.21, プラグインのバージョンはv1.6である。この条件を揃えた上で以降の情報を読むことを推奨する。

前提条件:同一PCへのインストール、バージョンの確認

使用するにあたって、VRChat=Steam, ゆかNEOが同一PC上にあることが前提条件となる。これは原則としてlocalhostを用いたゆかNEO―VRC間の通信を行うためであり、デフォルトでのポートはVRC→ゆかNEOを9001、ゆかNEO→VRCを9000としている。また、対応するプラグインのバージョンはv1.3b以上を前提としており、VRCのバージョンについては、アップデート履歴からチャットボックスが導入されたのがBuild 1229(2022年8月30日のアップデート)であり、最新機能の追加はBuild 1258(2022年11月3日のアップデート)で確認されている。もっとも、VRCをプレイする際は原則として常に最新版でないと、統合性の観点から問題が発生したり、そもそもプレイ不可能であることが多い。だが大抵の場合、Steamは自動でアップデートを行ってくれるので、この部分を気にする必要はあまりない。

ゆかNEOとVRCの設定

ゆかNEOでの設定

ゆかNEOの設定から行う。対象プラグイン「VRChat向けOSC v1.6」をプラグイン一覧から上の方に移動し、チェックボックスにチェックを入れる。次に設定を開き、次の項目について確認を行う。

  • 項目左側、”VRChat→NEO”と”NEO→VRChat”のポート番号を確認する。デフォルトでゆかNEO方向へは9001、VRC方向ではlocalhost(127.0.0.1), 9000となっている。接続するのは(処理的に)VRCを起動してからである。
  • YNCMessageで設定する項目はない。
  • “VRChat”の欄から“Translation Language”にチェックを入れる。また、下の”Target User Name”は自分のIDを入力しておく。この部分は動作に無関係であると思われるが、安全のために設定する。
ゆかNEOでのVRC-OSCの設定
ゆかNEOでVRC-OSCを設定する。ポート番号を確認しておき、”VRChat”欄の”Translation Language”をチェックを入れ、”Target User Name”には自分のIDを入力しておく。

設定自体は簡単で、必要部分についてのチェックを入れれば、後はVRCを起動した後でOSCを有効にし、その上でVRCと接続することによって「翻訳1のみ」VRCに送信することができる設定となる。現在のVRCの仕様で、チャットボックスには母国語と翻訳1のみ送信可能で、翻訳2~4はまだ未対応であるため、このような設定になる。この関係で現時点ではチャットボックスに入るのは母国語・翻訳1のみとなる。

なお、OSC自体は母国語と翻訳1~4から任意の言語について対象として、完全一致または部分一致で起動フレーズを決めることができる。一致した場合に行う動作をここで作ることができ、コントローラーではなく音声認識で動かすことができるようになる。詳しい使い方はうーちゃんに聞くと詳しく教えてくれるはずだ。




VRC側の設定

VRCをまず起動し、任意のワールドをFriend+以下の権限で開いたら、Questコントローラー基準でBまたはY長押しで呼び出せるアクションメニューから、次の操作を行う。

  • “Options/OSC”と開き、”Enabled”のトグルはOFFになっているので、これをONにして有効化する。有効化するとアバターリセットが発生する。
  • 有効化した状態でゆかNEOの”VRC-OSC”の”VRChat→NEO”の”Open(J)”をクリックする。これによりゆかNEOとVRCが接続された状態となる。
OSC有効化の手順
VRCでOSCを有効化する手順。OSC有効化時にはアバターリセットが行われる。無効化したときはリセットは発生しない。

OSCのON/OFFはアクションメニューに存在する。アクションメニュー自体はあまり使わないものであるので、この存在に気付かない人も多いのではないだろうか。VRCとゆかNEOの接続はVRCが起動していないと不可能なので、VRCを起動したタイミングで接続するのが最も早い。とはいえVRCはVRモードであると接続するのを忘れがちでもある。なので気付いたタイミングで接続するといい。

実際に翻訳表示を行う

相互に接続が出来ていれば、ゆかNEOの翻訳1番がVRCのチャットボックスに送信される設定が反映され、実際にVRC内でチャットボックスが自動で表示されるはずである。実際に表示した場合が次のようになる。

 

ここでの音声認識にはgumbek氏のSpeechRecognitionWeb Send YNCを使用している。VRをプレイする場合、UDトークをスマホから使用するのは難しいためで、その場合に使用する仮想マシン(Android)を用意していなかったという準備の悪さもある。本来はその方が楽なのであるが。それはともかく、音声認識が行われ、翻訳1番が正常に翻訳された場合、その情報はチャットボックスに送信され、デフォルトでは自分の頭の上にそれが表示されるようになっている。表示されているかを自分で確認するには鏡を使うといい。

チャットボックスへの出力がされているかどうかについての内部的確認には、アクションメニューの”OSC Debug”を開くことでデバッグウィンドウを出すことができる。そこで翻訳される度にデバッグウィンドウ上にデータが追加されるのが正常な動作である。これによっても確認できるので、実際に使用する前にこれらの方法で確認しておくことも重要である。

場合によってはワールドリロードが必要

検証中に発見したこととして、OSCを有効化した後でゆかNEOと接続し、それから翻訳1番を送信しようとしても、最初はどういうわけか表示されなかった。その場でのアバターリセットやチャットボックスを手動で入力して表示した後で翻訳を送信したものの、それでも表示されなかった。そのため、ワールドリロード(別の場所に移動)した上で再度行うと、今度は表示された。このことから推測されるに、有効化してもすぐに表示されない場合は、最悪の場合ワールドリロードするか移動する必要があることを覚えておくといい。なお、OSCデバッグを確認して出力がされているのなら故障でも設定ミスでもないので、そこは心配しなくていい。

後で調査した結果、VRCを起動していなくても接続できることが判明した。そのため設定が完了したらあらかじめ接続してしまっておけば、この問題は発生しないものと考えられる。

翻訳1番を変更すればどの言語も入力できる

VRCは英語を基本としている。そのため普通にチャットボックスを使用するにも英語入力にしか対応していない。このことから英語以外は入力できないのではないかという心配があるはずだ。そのことについても検証することにした。検証方法は翻訳1番の言語を任意のものに変更し、チャットボックスに送信しても正常に表示されるかどうかである。その検証結果が以下である。

英語以外の言語での実験
英語以外の言語について実験した場合の結果。翻訳エンジンがONである限り、対応する言語であるならチャットボックスに送って表示することができる。

英語以外の言語で代表的と思われるものをピックアップして実験した結果である。特にソフトやアプリを作る上で実装時にネックとなりやすいアジア圏言語についてもちゃんと表示できていることが分かる。これにより、理論上はチャットボックスに全ての言語を表示させることができると分かった。これで相手を選ぶことなく、VRCでコミュニケーションを取ることができるようになるはずだ。

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追加実験:母国語表示も加えた場合

実験を重ねるうちに気になったのが、実は母国語も同時に表示できるのではないかということ。これはゆかNEO公式解説では未検証になっているものである。というのも解説における検証時期が9月5日時点のもので、11月のVRCアップデート前に書かれたものであるからだ。そこでデスクトップモードであるがもう一度検証することにした。変更点は、VRC-OSC設定画面で”VRChat”の欄から”Native Language”にチェックを入れたことである。この上でもう一度音声認識でチャットボックスに送信した結果(画像)が以下である。

母国語と翻訳を同時に表示する
母国語と翻訳1番を同時に表示した場合の結果。1つのチャットボックスに両方入る仕様で、丸括弧内に翻訳が入るようになっている。

これはいつもの配信や動画投稿で見ている、母国語+翻訳1番(殆どが英語)のスタイルと殆ど変わらない形である。唯一の相違点が、1つのチャットボックスに収めるために翻訳が丸括弧内に書かれることである。そのため、普段より少しだけ見辛い。ただ、チャットボックスはVRC公式機能であり、これについての設定項目もちゃんと存在するため、後述の設定を変更することで表示時間を変更することができる。

また、うーちゃんも同時期に検証を行っていた。検証に歌を使用し、その様子を録画したもので、動作がわかりやすいので掲載しておく。

 

これらから、既にVRCでは普段の配信で使っているのと殆ど変わらない運用が可能になっていることが分かる。VRCを使った配信(ワールド探索やVketなど)では、いつものゆかNEOに加えて必要に応じて使用することで見せ方も変わってくるはずである。

字幕・翻訳を出す上での諸注意

字幕・翻訳を出す上での諸注意をまとめておく。

現時点では翻訳1番のみ対応、翻訳エンジンの設定に注意

母国語も表示できるようになっていたので、もしかしたらと翻訳2~4番の翻訳エンジンを有効にして再度音声認識を行い、表示テストを行った。その結果は「未対応」だった。母国語と翻訳1番のみが表示されて、翻訳2~4番はチャットボックスには反映されなかった。これはゆかNEO側の仕様によるものと考えられるが、後述の文字数制限を考えた場合、迂闊に翻訳2~4番を入れると翻訳が途切れたり、狭いチャットボックスに無理矢理詰めることになるので見づらいことが予想されるからである。現在はゆかNEOでは翻訳を個別にON/OFFする設定はないが、この部分は需要があった場合、必要に応じて追加されるものと思われる。

また、当然のことながら翻訳エンジンが指定されていない、設定が間違っている場合はそもそも翻訳されないので、チャットボックスに送信もされない。母国語が表示されていて翻訳が表示されていない場合、チェックし忘れの他に翻訳エンジンの確認もして対応する必要がある。

チャットボックスの調整

字幕・翻訳は、相手が読めなければ意味がない。それはいつも配信をしている・見ている人がよく知っていることである。通常は10秒前後の表示後猶予を持たせて読み切れるようにしているが、その設定をすることが可能である。そもそもチャットボックス自体はVRC公式機能であり、OSCのコントロール対象にもなっている。したがってVRCのアクセシビリティの中にチャットボックスに関する設定項目が用意されている。その項目が以下の通りとなっている。なお、見える範囲以外の設定は各プレイヤーのローカル設定になる。

  • Local Chatbox Visibillty: チャットボックスが見える範囲を指定する。左からOwner(自分のみ), Friends(フレンド), Everyone(全員)の3タイプである。翻訳機として使うならEveryoneが標準となる。
  • Chatbox Position: チャットボックスの表示位置を変更する。Front(自分の目の前・可変可能)かHead(頭上・固定)のどちらかを選択する。
  • Display Duration: 表示時間を設定する。デフォルトは32秒。
  • Chatbox Size: チャットボックスのサイズを変更する。デフォルトは100%。
  • Chatbox Opacity: 不透明度を設定する。デフォルトは100%。
  • Chatbox Notification Sound: チェック式。デフォルトはOFF。誰かがチャットボックスを使用した場合、それを知らせる音が鳴る。
  • Chatbox Notification Volume: 上の音量を決める。
  • Show Own Chatbox: 自分のチャットボックスを表示するかどうかを設定する。デフォルトはON。
チャットボックスの設定項目
チャットボックスの設定項目。見える範囲を変更する以外は、基本的に変える必要がない。場合に応じて変更していくといい。

普通にVRCをプレイしている場合、チャットボックスを使用するタイミング、或いは字幕や翻訳が必要となるタイミングはあまりないので、設定すら存在を知らないというのは珍しいことではない。というのも、チャットボックスが登場する以前からボイスチャットが中心であり、テキストチャットできる機会は少なかったためである。今になってチャットボックスを導入したその思惑は知る由もないが、もし使うのであればこの設定を色々変更することで、「字幕・翻訳用途」として使う場合にも使いやすいものとなる。

チャットボックスの文字数制限

どんなものでも文字数制限は存在する。それはチャットボックスも例外ではない。入力可能な文字数は現在のバージョンでは144文字である。しかしテキストチャットはVRモードで打つには非常に時間がかかり、かといってわざわざキーボードで打つのも面倒である。もっとも、悠長に入力している時間などないはずなので、144文字を消費しきる事態はそうそう発生しないはずだ。大抵は一言の返信程度に使うくらいである。

そこで確認したのは、1文字の基準である。通常コンピュータでは半角を1文字、全角を2文字と扱う。これは文字の情報量に合わせた処理であり、このルールから半角は1バイト、全角は2バイトになる。VRCは英語が基本言語であるため、これに合わせていると全角は2文字分消費されるのではないかと考えた。この動きであると、母国語と翻訳を同時に表示した場合に文字数制限をオーバーして途中で途切れてしまう可能性があるためだ。

この検証は、チャットボックスを手動入力する本来の使い方で確認した。このとき全角を入力するにはPCで任意の文字列をコピーし、VRCのキーボードでペーストを行えばいい。これで「消費文字数」を確認したところ、半角でも全角でも1文字としてカウントされることを確認できた。つまり、日本語以外のハングル、中文体(繁体・簡体)、キリル文字でも全て「1文字」である。なので、結果が長すぎなければ、おそらくチャットボックス内に収まってくれるはずである。

ただ、このルールから半角文字が半角文字へ翻訳する場合は途切れやすい可能性が高い。その場合は、翻訳のみをチャットボックスに送信する設定にしておくといいだろう。少なくとも、翻訳を必要とする場面では母国語が読めない前提で翻訳機能を使っているわけで、今後の更新で文字数制限が撤廃されるなら母国語も表示して使えることになるだろう。

以上で検証を終了する。この通りに設定して動かなければ、今すぐゆかコネDiscordへGOだ。

VRChatで翻訳を使えれば、もう海外勢だって怖くない

VR-SNSは口頭でのコミュニケーションが重視され、所謂「無言勢」に対するフォローはそれほどなされていなかった。2014年から始まっているVR-SNSの始祖であり最前線であるVRChatも、Build 1229(2022年8月30日)になってようやく実装されたほどに遅かった。開始から8年目にして大事なことに気付いたが、既に遅かったようである。しかし実装されたところで、あまり変わらないようだが。

だから実装は無駄だったかといえばそうでもない。VRC公式の実装ということは、OSCをサポートしていて、それを利用して外部から操作できることになる。なのでゴミセキュリティソフトより役に立たないEACによってチート扱いとはならず、弾かれることがない。そして前々からVRC-OSCをサポートしていたゆかNEOは、これによってついに「VRCに翻訳を持ち込む」ことに成功した。VRCの仕様上、最初は翻訳のみだったが、それでも大きな一歩である。そしてBuild 1258(2022年11月3日)で母国語についても送信することができるようになっていて、これで字幕も送信可能になった。難聴向けの字幕としても機能させることができるようになるので、VRCもバリアフリーが進んできている。

ではこの機能が実装されることによるメリットは一体何なのかということだが、いくつものメリットが挙げられる。一般ユーザーレベルでは海外勢との交流の時に使うことができ、難聴VRプレイヤーとも可能な限りのリアルタイムでのコミュニケーションが可能になる。配信においてはリスナー向けの字幕+翻訳とは別に出せるので、同行者がいる場合には便利である。また、この機能はVRCで行われるイベントのスタッフ向けであるとも言えて、「誰が来るかわからない」「母国語以外に対応できる自信がない」「声が聞こえない人だったらどうしよう」という悩みを一気に解決してくれるものとなる。実際に使わなかったとしても、万が一のために用意しておけば安心して業務に従事できるはずだ。clea氏も、黒の騎士団のアルバイトの時には使用機会こそなかったが用意していた。よってゆかNEOを使っていて、VRCでも活動している人には既に「標準機能」である。

他のVR-SNSでもゆかNEOは持ち込めるようになってきている。しかし最もアクティブなVR-SNSであるVRChatは、その特性上ユーザーも多国籍だ。つまりVR内で最も翻訳を使用する可能性が高いものでもある。長らくVRC側の仕様に苦しめられてきたが、それももう終わり。これさえ使いこなせれば、もう海外勢だって怖くないはずだ。設定も簡単なので、早速使ってみよう。

 

以上、ゆかNEO on the VRs:VRChatに持ち込む字幕・翻訳編、であった。次は何の記事で会おうかな?

 

KIBEKIN at 10:46 Oct. 23th, 2022

 




 

特別追記1:翻訳2番~4番に対応

12月1日、Vket2022Winter開催を目の前にしてv2.0.27への更新が確認された。これに伴いVRC-OSCはv1.7となり、翻訳2番~4番もチャットボックスに送信可能になった。早速その内容を確認していく。

まず設定画面は、それまで翻訳番号は一切なかったのが、翻訳1番~4番のそれぞれにチェックボックスが追加された。これにより、ゆかNEO本体側の設定で任意の翻訳先の翻訳をVRCのチャットボックスに送れるようになった。このとき、翻訳エンジンがOFFになっている場合は送信されないのはこれまでと同様の動作となる。そしてもう1つ気になったのは、チャットボックスの最大入力可能文字数を超えた字幕・翻訳データを送信したときどう処理されるかということである。前回は翻訳が1つだけしか有効にならない関係でそもそも検証が難しいものであると判断していたが、今回は合計5言語を同時に表示できるので簡単にそれをオーバーできる状況を再現できる。そうしてオーバーした場合の結果も同時に掲載する。

VRC-OSC v1.7の更新内容とテスト
VRC-OSC v1.7の更新内容とそのテスト。送信する翻訳を個別に設定することができ、同時に母国語+翻訳4種を表示できていることが分かる。また、文字数制限を超えるとその時点でカットされることも分かった。

翻訳送信設定はチェックボックス式で、簡単にON/OFFを切り替えることができるものになっている。そのため、指定の翻訳番号の翻訳エンジンを任意のもので有効にしておけば、いつでもVRC内で設定した翻訳を送信することができる。また、VRC側の文字数をオーバーした場合、後ろの方の翻訳は強制的にカットされる仕組みになっていることも判明した。したがって、翻訳を2つ以上同時に使用する場合は喋るテンポが非常に重要になってくるものになる。といっても同時に複数言語のユーザーに遭遇することは非常に稀なことで、権限をPublicでイベント主催かスタッフであるとかいうものでもなければ、殆どの人は使わないであろう。

ただ、この機能強化により、VRCで活動するバーチャルスタッフの難易度を下げることができるようになる。特にclea氏はこれからもバーチャルスタッフの機会はより多くなるはずで、イベントによっては参加は「全世界対象」というものは必ず出てくるはずである。それも難なくこなせるようになるわけで、もしclea氏に続いてバーチャルスタッフを考えているのであれば、この機能を使いこなせるようになると怖くなくなるはずだ。

特別追記2:Target User Nameの本来の使い方

最初の解説の方では”Target User Name”についてはVRChatの自分のIDを入れると解説したが、これは間違っていることが分かった。Nao氏の説明では、話者名に関するフィルタとして使うものになっている。これを使うタイミングはコラボ字幕を使用する場合で、フィルタを使用しないと全員分の字幕が自分のVRCのチャットボックスに送信されてしまうためである。そのため、ゆかNEOで表示名を「無音烏」としているのなら、そこには「無音烏」と入力することでフィルタが適用され、自分の字幕と翻訳のみを送れるという仕組みになっているのである。

コラボ字幕は特にVketで使用することになるはずで、既にVket2022Winterは終了しているが、次回以降のVketやVRChatで行われるイベントを配信する場合において使う機会は多い。もしPublicでワールドを巡る場合には、この機能を使って配信とVRC内で同時に字幕と翻訳を送信すると、言語の壁はかなり越えやすくなるはずだ。

 

追記情報

2022年12月3日 ゆかNEO v2.0.27の更新によってVRC-OSC v1.7となり、送信する翻訳を1番~4番で任意選択可能(全て送信も可能)になったため、その解説と実験結果を追記

2022年12月25日 Nao氏からの説明で”Target User Name”の使い方が判明したため、末尾に解説の修正を追記


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RA管理人。名前は時にない。かつてこのサイトを管理していた前任者はどこかへ消えてしまった。


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