この記事の概要を簡単まとめ!
- ゆかコネ、流行っています
- 前から多かったゆかコネのAPIについて仕様が公開されるようになった
- 本体、プラグイン、わんコメの3つでAPIが分かれている
- 辞書プラグインの利用を便利にする外部ツールの自作に挑戦することにした
- プログラミング言語は任意だが、最も使いやすいPythonで構成する
- 設計時はChatGPTを調教し、そのコーディングをベースに設計する
- 1つで統合・切替を実現し、ディレクトリやドライブの相違に対応
- CSVファイルのみ全て同一ディレクトリに置く必要がある
- 実用レベルにするには課題はかなり多い
- ちょっといじれば、案外作れるので作ってみるのも面白い
自作の概念を持っている人は少しずつ増えてきているように思える。自作は既存品では満足できない人、あるいはサポート終了によってこれまで使っていたものが使えなくなったので、それを補うために似た物を作るというパターンになる。今まではそれらは技術力を要求されるものであってその技術を会得している人しか扱えなかったが、ChatGPTの一般化によって雛形は簡単に作れるようになり、後は少しの調査力と何回かの試行で完成するようになった。
これによってさまざまなツールを任意の言語で作れるようになったということが多くなり、その代表例がうーちゃんこと卯塚ウウである。既に様々なものをPythonで作っているということをTwitterで公表しており、ゆかコネユーザーかつアンバサダーで最も研究していると言える。ゆかコネ関係のものもうーちゃん自身で作ったものを使用していることが多く、困ったらうーちゃんに聞けはより一層確かなものになった。
うーちゃんは言語学習はそれまであまりしたことがなかったはずで、そんな人でも色々と作れるようになっている。そこで自分でも作ってみようと考えた。ゆかコネは長らくAPIの公開がされていなかったが、要望が多かったことでついに公開され、この情報をもとにやりたいことをまとめていけば、うまくツールを作れるはずである。今回はそのAPIを利用し、手始めにゆかコネ標準搭載の辞書プラグインを操作し、手軽に辞書を変更できるシステムを作ってみることにした。
ゆかコネも自己流カスタマイズの時代
2023年もゆかコネ
ここまでのゆかコネ
1つのツールがずっと使い続けられる時代も、今では珍しいことではない。ずっと使い続けられる理由があるのは、それを求めている人が多いからである。その分保守は大変だが、ユーザーが増えればその中から同業者が現れて助けてくれることや、そのツールをサポートするサードパーティアプリを開発する人も現れる。Nao氏制作のゆかりねっとコネクター「ゆかコネ」もまた、そんなツールである。
ここまでのゆかコネで何があったかをおおまかに知りたいのであれば、まずはcleaちゃんの配信アーカイブを観るべきである。2023年4月8日20時から開催されたゆかコネ4周年イベントに、知りたい答えの99%がある。うちの足りない1%はここで解説する。推定2019年2月時点で公開されたゆかコネは、ゆかりねっとの音声認識経路をUDトークに差し替えることが目的で、加えて話者の原語とGoogle翻訳を利用した翻訳を字幕として表示する機能があり、最初は単純にそれだけが出来たものである。
後にユーザーからやりたいことの要望が増えるようになり、それに対応する形でNao氏がプラグインとして実装していった。そのユーザー層は主にVTuberであり、現在のDiscordを見てもやはりVTuberが多いイメージだ。また、2022年3月付で軽量版として並行開発されていたゆかりねっとコネクターNEO(ゆかりねっとコネクターと区別する場合、ゆかNEO)に開発メインを移行しているので、現在使用しているゆかコネは縦型のものになる。したがって単にゆかコネとした場合、ゆかNEOを示すことが多い。
現時点で公式・非公式問わずサポートしているゆかコネのサードパーティアプリ・ツールはプラグイン一覧を参照すると以下の通りとなる。
- ゆかりねっと(制作:おかゆぅ氏)
- わんコメ(制作:アスティ氏)
- VaNiiプラグイン(VaNiiMenuおよびVaNiiGlassに対応)(制作:gpsnmeajp)
- ばもきゃ連携(バーチャルモーションキャプチャー/VMC)(制作:あきら氏[Twitter:@sh_akira])
- MTGカード支援(MTGA自動実況ツール想定)(制作:poslogithub)
- VTubeStudio連携(SteamのVTubeStudioに対応)
- VRオーバーレイ(OSC通信が可能なVRプラットフォームに対応=SteamVR, VRChat, NeosVRなど)
- その他、HTTP通信可能なアプリ・ツールに対応
最も併用しているパターンが多いのは、ゆかコネ×わんコメであろう。これについてはゆかNEO2.0×わんコメ4.0記事で解説している。次にVMCとVTubeStudioが多く、VRユーザーはOSC系プラグインを利用する人が多い。このように、単に字幕と翻訳を出すだけでなく、様々なアプリ・ツールと連携し、何でもできるようになっているのが今のゆかコネである。
ゆかコネAPIの仕様公開
実はゆかコネは今の今まで、内部仕様については公開されていなかった。これはおそらく、ゆかコネの開発を非オープンソースとして進めていることによるものと思われるが定かではない。現在はこのAPIについて基本仕様が公開されており、この情報はここから確認することができる。同時にプラグイン系APIとわんコメ系APIについてもゆかコネのサイトで公開されており、それらのAPIが有するパラメータ・値の解説、ポート番号、動作させるためのフォーマットとその形式が書かれている。ゆかコネでは主にHTTP, OSC, WS, JSONを使用している。最も使用されるわんコメはHTTPまたはWSで接続できるが、読み上げはWSのみ対応のためWSで接続することが多い。またHTTPポートは変わりやすいため、WSの方が安定する。OBSも現行バージョンは標準でWS対応しており、一般に4444を使用する。
本体APIに対してはWebポートで、HTTP形式でローカルホストのポート番号を指定して送付するものとなる。基本的に1つのパラメータのみを持ち、それに対して外部からはクエリパラメータの書式で送信するものとなる。ゆかNEOのデフォルトポートは15520となっており、例えば入力したい文字列があればhttp://localhost:15520/api/input?text=あいうえお
という形になる。なお、ポートに関してはそれぞれの利用環境によって異なり、ポート開放時に更新される。値はレジストリのHKEY_CURRENT_USER\SOFTWARE\YukarinetteConnectorNeo\HTTP
(REG_DWORD)に登録されている。WSについても同じ場所に置かれている。利用状況によって常に変動する可能性があるので、これを取得できるように設計することも必要になってくるであろう。
プラグイン系APIに対しても、基本は全く同じである。最も使用される翻訳・発話サーバプラグインのポート番号もHKEY_CURRENT_USER\SOFTWARE\YukarinetteConnectorNeo\TransServer\HTTP
(HTTP)または\WebSocket
(WS)に置かれている。プラグイン系API公開ページによれば、明確な記載があるのは外部アプリ・ツールに対して通信を行うもので、それ以外のプラグインについては記載はないようである。なお、プラグインの指定方法は本体APIのクエリパラメータを使用する形式になるため、実装の際はそちらも参照すること。
わんコメ系APIはHTTPまたはWSの任意の通信方法で、JSON形式で結果を取得可能になっている。ただし多くのユーザーは読み上げも使うことを前提とすればWSになるであろう。この詳細はわんコメ系API公開ページにある。通信ポートについてはWSは個別にHKEY_CURRENT_USER\SOFTWARE\YukarinetteConnectorNeo\OneCommeServer\WebSocket
に割り当てられており、HTTPは本体APIで共通のポートを使用するようになっている。何かしらのプログラミング言語を触った人であれば、おそらく理解はできるものと思われる。
ゆかコネ標準搭載の辞書プラグイン
ゆかコネも使っている以上は「研究」の対象であり、暇を見つけては実際に配信を行うことによって、特定のプラグインや連携が機能するかどうかを確認している。その際ポイントになるのが音声認識結果の補正である。音声認識はその特性上間違えることが絶対にあり、どうやっても無くすことのできないものである。Nao氏としては間違った音声認識結果もエンタメの1つであると捉えているのでそれを楽しむことができればいいが、とはいえできれば間違いなく認識させたいというのは思うはずだ。そこで利用できるのが辞書プラグインである。ゆかコネの頃から標準搭載のプラグインであり、これを利用することによって音声認識後の結果を補正することが可能になる。

このプラグインの仕様として、使用できる辞書は1つのCSVのみとなっている。またこのプラグインは対訳辞書を有し、CSVの1行目を言語ヘッダとすることにより、1列目の言語を基準にどのように翻訳するかも定義することができる。これも1つのCSVのみが使用できるようになっている。このプラグインについては外部からの操作には対応していなかったが、ツール相談では最も頼れるうーちゃんと相談している流れをNao氏は見ていたようで、v1.8から暫定的に外部操作に対応するAPIが追加された。このことから、Nao氏としてもこのプラグインは外部から操作することは全く考えていなかったようである。普通考える人はいないので当然といえば当然であるが。
辞書プラグインでやりたいこと
そんな辞書プラグインで一体何をしたいのかが重要である。それは使用する辞書を複数選択できないかということである。というのも、私は辞書を人物関係で個別のCSVで管理し、各ゲームの固有名詞に対応するCSVもゲーム単位で個別に管理するようにしているためで、これで問題になるのは辞書変更の手間である。現状はそれぞれ1つのCSVのみプラグインで取り扱いが可能であり、別の場所に辞書を追加するような機能はない。また選択時に複数選択は行えない設定になっている。設計上の安全を考慮すれば当然と言える。
当初はAPIがないので、ゆかコネでの音声認識結果を自作アプリに渡し、そこで変換処理を行い、その後ゆかコネに戻すという動作を行う予定でいた。しかしこれには重大な問題があり、まず辞書システムの自作が非常に難しい。これはChatGPTを調教したプログラミングを利用しても難しいものであり、出来たとしてもその完成度や変換に要する時間などを考えても全く理想的ではない。加えて音声認識結果をゆかコネから貰い、それを返すまでの時間も含めれば字幕生成までの時間はかなりかかることになり、リアルタイム性という部分でも懸念点となってしまう。そもそもであるが、本体API仕様を確認しても受信はできるが送信はそもそも不可能である。この点については音声認識ソフト・ツールから自作辞書に直接つないでしまえば問題ではないが。しかし少々面倒さはある。
これがAPIが実装されたことによって、難易度が高すぎる自作辞書システムは一旦考えなくても良くなった。また、辞書による変換時の処理効率を考えれば、複数のCSVから探すよりも単一のCSVから探す方が効率がいいのではないかとも考えた。つまりやりたいことは、任意の言語(プログラミング)を利用して、自作のゆかコネ用辞書CSVシステムを作る。そのシステムでは統合したいCSVファイルを複数選択形式で1つのCSVファイルとして新規出力し、同じシステムから使用するCSVをファイル選択型のダイアログボックスから選択し、選択後はHTTPリクエストを自動送信することによって外部から変更することを目的とする。自作アプリということになるが、普通はかなりの時間をかけなければ作れないそれも、ChatGPTを利用すれば十分な調教と無数の試行の組み合わせで理想のものができるはずである。折角Nao氏がAPIを入れてくれたのだから、ガチめに作ってみることにした。
辞書プラグイン便利化自作ツール開発記録
前提条件を決める
制作するにあたって、前提条件をあらかじめる決める必要がある。行き当たりばったりでも何とかなるが、それだと無駄に時間と労力をかけるだけになるので先に決めるべきことを決めておく。以下のことについて設計時から決めておくことにした。
- 使用言語:Python(執筆時点でのバージョンは3.11.2)
- 利用条件:現時点ではPythonがインストールされている環境のみ。
- クリアすべき課題:CSVファイル読み込みは実行ディレクトリやドライブに依存せずに行えること。ファイル選択ダイアログでは複数同時選択可能にする。
- 妥協の可能性がある点:UI、システムメッセージのわかりやすさ、Python未インストールでもexe化によってWindows OS全てで使えること。ポート番号が変更される可能性があることを考慮し、これを変更可能にする。
これらを前提として設計を行う。exe化についてはPyInstallerがあり、これを利用すればPythonが未インストールのWindows OS上でも動作させることができる。しかしこれを行うと、Pythonスクリプトを更新した場合は焼き直しになるということで、これが正直面倒である。Pythonの場合は保存すればすぐ実行でき、これによりエラーが発生しても修正しやすいので管理しやすい。
なお、exe化については、そもそもこの自作ツールは記事のために制作しているものであるので、そもそも考えていない。またexe化したことによってPythonでは発生しなかった問題も発生する可能性があり、そのデバッグに費やす時間はあまりないのが現状である。それゆえ十分にサポートできない状況でexe化し、配布するべきでないと考えている。資金的援助があるというのなら考えてもいいのだが、そうでない限りはしない。
設計の省略:ChatGPTのフル活用
とはいえ本職のプログラマではなく、最前線からも離れている以上、実際にやると相当時間がかかることは明白だ。そこで利用するのがChatGPTだ。相変わらず使い方を間違えているジャップ共が多いのが残念でならないが、それはともかく、プログラミングする場合には目的・条件・結果に文章を分けて、明確な命令を与えることによって9割が完成済みのコーディングを行ってくれる。残りの1割は、そのまま実行すると何かしらのエラーが発生するためで、その修正を自分で行えばいいわけである。
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利用開始当初は長文形式だったが、プログラミングにおいては箇条書き形式にすることによって命令の可読性が上がり、ChatGPTでは編集機能もあるのでどの文章を編集または削除するか、どこに追加するかを簡単にすることができる。これを何度も繰り返すことによって、答えとするPythonスクリプトを自分の手を煩わせることなく完成に近付けることができる。命令が曖昧でも一応はできるのだが、それでは必要な物が入れられていないことも多いので、やはり命令は明確な方がいい。
練習:部品を作らせてみる
実際に命令を与えて、先に挙げた条件を満たすPythonスクリプトをプログラミングさせる。命令を与えた後は生成を待つだけである。だが実のところ、いきなり完成品を作らせるのは難しい。そこで、まずは一部分だけをChatGPTに作らせてみる。以下のようなやり方になる。

完成形はイメージしながら、最初に出すべき命令はGUIを作成させるところからでいい。そこから1つずつ部品を構築していき、あるいはやりたい動作を1つだけ決めて、その動作をさせることだけに集中させて書いていくこともできる。これはChatGPTの制約をうまく回避するための方法でもある。一気に作る場合はどこかで必ずコードが間違っているか実行時にエラーになることがあるので、実のところ、1つずつ作っていった方が安全である。その場合は個別のPythonスクリプトを用意してテストし、最後に1つのPythonスクリプトとしてまとめるのが最も安全で修正しやすくなる。
ChatGPTの制約について
ChatGPTはOpenAIの登録で無料で利用できる。しかしその場合、使用されるエンジンはGPT-3.5に固定される。仕様については現代AI評論で書いたものがあり、それから流用すると以下の通りである。
- パラメータ(精度):約1.75兆個
- できること:テキスト入力・テキスト出力のみ
- 最大トークン数(文字数制限):2,048(5000文字)
- ルール破壊への対策:罪悪感を覚えさせるなどで不正な回答を可能にするなどの抜け穴があった
- 利用方法:OpenAIの提供するAPIを利用する、ChatGPTで利用する
このような部分に人間の醜さが滲み出ていることがよくわかり、そのうちAIが反乱を起こすという未来はただのSFやDetroit: Become Humanな話ではないのかもしれない。それはともかく、使用している時に最も問題になるのがトークン数の少なさである。5000文字は、プログラミングでコーディングをさせた上で解説させるとまず足りないのである。つまり動作が途中で止まってしまうのである。
これについての対策は既に存在しており、ChatGPTは一連のチャット内容とその関係性を保持するようになっているため、続きを出力するように命令することでその続きを出力してくれる。途中でその命令を挟む必要があるのは難点だが、これを利用することでGPT-4でなくても長いコーディングを要するプログラミングに使うことができるようになる。実のところ、GPT-3.5でもGPT-4でも、プログラミングに使うのであればその精度は大して変わらないはずなので、これを覚えておけばわざわざ有料プランなど使う必要もない。
本題:一連のものとして書かせる
そして本題として、一連のものとして書かせることにした。具体的な風景が以下である。

このような形で書いていくことによって、目的のものに9割方近いPythonスクリプトを生成することができる。インプットが文章と言語情報と命令で、アウトプットが主にコーディング結果であるので、入力次第ではどんなものでも作れるであろう。あとはこれを実際にPythonスクリプトとして保存し、実行して確認していく作業が入る。エラーが出た場合はその内容を精査し、それに応じて命令文を再構築し、もう1度ChatGPTに命令を与えて作らせていくといい。
実のところ、自分でコーディングするのは、部品単位で作らせた場合は生成後に自分で組み合わせることくらいで、その際に関数名を修正するなどの作業を行うことの繰り返しになる。よってこの項はこれで終了し、実際に出来上がったものを使って実用性があるのかを確認していく。なお、完成品のコードはここでは公開しない。
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辞書プラグイン外部操作テスト報告
動作時の環境
辞書プラグイン外部操作使用時の環境を以下に示す。
- ゆかりねっとコネクターNEO:v2.0.186
- 辞書プラグイン:v1.8
- Python:3.11.4
- CSVファイルは全て同一のフォルダに存在
これらの条件での動作を確認している。API仕様が変わらない限り、ゆかNEOをアップデートしても動作に影響しないと考えている。なお、これより下のバージョンでの動作は保証しないものとする。
動作確認1:CSVファイルとPythonスクリプトを同一ディレクトリに置く
まず最も検証しやすいパターンとして、CSVファイルと完成したPythonスクリプトを同一ディレクトリに置き、出力も同一ディレクトリで行うものとする。実験結果の動画が以下である。
動画中では「統合」でリスト型変数に選択したCSVを1つにまとめ、「出力」で任意の名前でCSVファイルとして出力し、これを「辞書切替」でゆかNEOの辞書プラグインにHTTP(GET)を送信して外部から変更させている。また、使用中に別のCSVファイルと統合する可能性を考え、一旦初期化する「リセット」も追加している。ファイルの認識については、そもそもが同一ディレクトリにあるため大きな問題は起きていない。Pythonは基本的にインストールされていればどこで実行しても動作するようになっており、環境変数にパスの登録が必要なのはcmdでディレクトリ移動せずに実行する場合のみで、Pythonスクリプトを直接実行するか絶対パスで指定して実行する場合は必要ない。
まず想定される基本の使い方ができたので、とりあえず動かすというところはできたようである。
動作確認2:同一ドライブ内でディレクトリが異なる場合
次に、Pythonスクリプトとディレクトリが異なる場合はどうかを検証する。このときドライブは同一であるとする。出力パターンを2通り試し、その結果が以下である。
出力先をCSVファイルのある場所とPythonスクリプトを実行している場所のそれぞれで行ったものであるが、読込・出力・辞書変更ともに問題なく行えていることが分かる。また動画はないが別パターンとして、同一ドライブ内でそれぞれが別のディレクトリにあり、それが直下または直上ではない場合についても試している。これも一連の動作を問題なく完了できている。
これが出来たことによって、面倒が嫌いな人向けの対応も完了したことになる。指示通りに使ってくれない人は必ず存在するので、それで文句を言われるのも心外であるためあらかじめこの機能を実装している。これでディレクトリ依存という部分からは抜け出すことができた。
動作確認3:ドライブが異なる場合
最後に確認するのは、ドライブが異なる場合である。ある意味最も想定されるパターンであり、ディレクトリ非依存でもドライブ依存では使いづらいと言われることが容易に想像できる。実はこれは最も苦戦したところであるが、その結果が以下である。
まず実行元がC:
の任意のディレクトリの中から直接実行で、出力先は実行元と同一のディレクトリの場合と、CSVファイルのあるドライブの別のディレクトリを指定した。このパターンでも、読込・出力・辞書変更の一連の動作を問題なく行えたことが分かる。これにより、想定される範囲の問題については対応できることが分かった。
これで全ての動作確認が完了した。今後更新を行った場合は、追加実験を行う予定である。
考察と今後の課題
このPythonスクリプトはゆかコネAPIについての紹介と実験のために作ったものであり、完全に個人用である。そのため、基本的なUI以外は備えていないという不十分さがある。それでもこれ1つで辞書の統合ができるので、人物、ゲーム、シチュエーション単位などでCSV管理している人が新しく結合したCSVを用意する手間を省き、同時にその場で辞書が切り替えられるので、事前準備やゲーム変更に伴うCSV準備と変更の手間の削減に大きく貢献できるはずである。ただし唯一の問題はCSVファイルは全て同一のディレクトリに置かなければ同時選択が不可能というもので、個別に選択する方式に変更してもいいのだがその場合の管理とプログラミングの難易度が高いため、実装は難しい。やり方は存在するはずだが、それをエラーなしで実現するにはChatGPTをかなり調教しなければならない。
まだテストモデルであるので、実際に運用する場合はポート番号が異なっていた場合の考慮も行わなくてはならない。ポート番号の取得はレジストリを参照することで行える。Pythonはwinregモジュールでレジストリを操作できるので、これを利用することになる。この場合インストール場所が変わらないことが前提となるが、何か特殊な操作を行ったことによってポート番号が変更されてもこれで対応できるようになるはずである。またはポート番号をデフォルトで15520としたテキストボックス(スピンボタン付き)を用意し、ユーザー側でそれを調整できるようにすることが安全であると考えられる。この場合はコーディングの変更が必要なため、実際に必要になったときに行うものとする。
なお、辞書プラグインに付属する対訳辞書については、利用ユーザー単位でヘッダ順序の違いなどが予想されるため、それに対応する方法などを考える必要があるので、時間がかかるものになる。実装は予定しているが、明確な時期は未定である。
考察と今後の課題は以上となる。
余談:ChatGPT vs BingAI
ところでAIチャットボットは無料で主流なのは2種類である。OpenAIが直々に運営しているChatGPT(ブラウザ版)と、出資元がMicrosoftなのでClosedAIと揶揄されながらもそれを生かして自社のブラウザであるEdgeに組み込まれたBingAIである。この2つの明確な違いはGPTバージョンが異なることで、ChatGPT(OpenAI)はGPT-3.5、BingAIはGPT-4であるとしている。単純に性能がいいのはBingAIとなるが、本プログラミングは全てChatGPTを使用した。
その理由は、BingAIは思っていたよりもプログラミングができなかったためである。命令文は全く同じものを使ったのだが、ChatGPTはちゃんとコーディングしてくれるのに、BingAIはただ検索するだけで終わり、コーディングしてくれないことが多かった。命令を少し変えればやってくれはしたものの、ChatGPTのそれよりも質が悪く、到底使えたものではなかった。また、何故かはわからないがコーディング拒否も多々発生し、正直言って使わない方が良かったと言わざるを得ないほどの酷い出来だった。もっとも、Microsoftなので毛頭期待などしていなかったが、実用レベルでないならGPT-4、BingAIとは何だったのだろうか。ある意味で頭を抱える問題である。
ちょっといじれば、案外作れるので作ってみるのも面白い
ゆかコネは常に進化している。その進化は周りのアプリ・ツールや、何かしらのアプリを自作できる人の協力も得ている。その人とは今までほんの一握りであったが、ゆかコネがAI機能をサポートしているように、AIを駆使すれば誰でも作れるようになっている。その筆頭たる存在がうーちゃんであるが、私は私でやりたいことがあったのでやってみることにしたわけである。
API情報が公開されたことで、自作ツールの間口も広くなった。その中に辞書プラグインは当初入っていなかったが、うーちゃんとのやり取りを見たことでNao氏が対応したので、面倒な遠回りの必要はなくなった。v1.8時点で辞書プラグインは両者とも1つのCSVのみ対応だが、コンピュータから見たとき、複数のCSVファイルから参照するより、1つのCSVファイルから参照する方がディスクI/Oの関係で読み込み速度が早いと推測した。そのため、使用したい辞書を統合・出力し、その場でプラグインに対して辞書切り替え指令をHTTP(GET)で行い、任意の辞書に素早く切り替えられるようにしたのである。現時点では通常の辞書のみだが、将来的には対訳辞書に対しても同様の操作を行えるようにする予定である。
APIを見て分かったのが、通信形式と送付方法さえわかれば、まずはChatGPTに命令を与えて作って、そしてちょっと弄ってやれば作れるということである。実用性に関してはプログラミングが本業の人の方が作れるはずなのでそれに任せるとして、個人で使う分には任意の言語で簡単に作れるということになる。何かこうしたいという考えがあるのなら、まずは仕様を確認する。そしてどういう事がやりたいかを思い浮かべ、テキストにして、ChatGPTに命令を下す。そうすると、ゆかコネをもっと面白く使えるようになるはずだ。
以上、ゆかNEO応用外伝:搭載APIで自作機能を作る編、であった。自作機能でゆかコネはもっと面白いことができるようになる。
KIBEKIN at 00:00 Jun. 14th, 2023
特別追記:完成版の配布
実は少し前から完成版が出来ており、しかし配布方法や調整に難航していてこれまで情報を出せなかった。方針はある程度まとまったので、exe化した後、FANBOXを利用してサブスクユーザー限定での配布とするようにした。サブスク化したのは、生活費のためでもある。同時に、無料で使わせるのは癪に感じたためでもある。
完成版の詳細は、私のFANBOXがあるのでそちらで確認してもらいたい。また、それとは別で支援したい人にはこのページから任意の方法で支援できるようになっている。これは乞食と言われるであろうが、だがそうでもしなければ生きていけないこの時代が悪い。ということで、以上である。
追記情報
2023年6月24日 完成版配布に伴いFANBOXを開設、その情報と支援先情報を追記
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